何か熱中する趣味があると、人生はグッと豊かになる!
今週は少しマニアックな趣味に熱中する5人の男たちをご紹介
その熱中ぶりを通して、その趣味の世界を少し覗いてみよう!
右手で一閃!
この瞬間のために
百人一首競技かるた
池原威徳&山本岳
静寂の中、上の句(読み札)が響く。3文字ほど読んだところで、池原さんと山本さんの両者の手が同時に動き、札が部屋の隅まで吹き飛んだ。
「何でこんなに速く取れるの? とよく聞かれるのですが、それは『決まり字』を覚えているからなんです」と池原さんは説明する。百人一首には、冒頭からある一定の文字数まで読めば1枚に確定するという「決まり字」がある。多くて6文字、少ないもので1文字。競技者たちは、僅か数文字を耳で聞き、手を動かす。恐るべき早業の世界だ。
だが、勝負に必要なのはスピードだけではない。競技かるたでは、百人一首100枚の中から各自25枚ずつ手元に取り、その50枚で争う。手元の自札25枚は規定の横幅内に縦3段以内で自由に配置する。さらに配置後に、15分の暗記タイムが与えられる。
「配置も戦略です。いかに自分が覚えやすく、相手は覚えにくい配置にするかですよ」と山本さん。「だから僕らは、この札が来たらここに配置するというのを自分の中に持っているんです」と、池原さんが補足する。記憶力、集中力、戦略といった頭脳戦、加えて刹那の反射神経を試す競技。それを日本古来の伝統文化「百人一首」にぶつけるというのも、魅力のひとつだとふたりは話す。
池原さんが競技かるたを知ったのは中学の時。校内かるた大会に向けて覚えたのが第一歩だった。先輩の誘いで、かるた部に入部し本格的に熱中。他校への出稽古などを繰り返し、全国大会の常連になった。
①池原威徳/川崎重工諮詢(上海)有限公司副総経理。競技かるた6段。全国大会A級優勝1回、準優勝4回。
一方の山本さんは、小さい頃より父親と一緒に百人一首に親しんでいたが、競技かるたを始めたのは大学の時。だが、知ってから一気のめり込み、力をつけた。
そしてふたりは今や、共に競技かるた最上級のA級に属する強豪だ。同じ千葉県チームとして全国都道府県対抗戦に出場したこともある。また、大会で一度対戦したこともあり、その時は当時勢いのあった山本さんに軍配が上がった。
「上海では練習する機会がないけど、昨年かるた仲間が北京の学校で競技かるたの講習を開いたのをきっかけに、中国で競技かるたを広げようという動きもあるんです」と池原さん。ふたりが主役になって、上海に競技かるたを広める日も近いかもしれない。
②山本岳/競技かるた5段。全国大会A級準優勝の経験あり。
少年心と大人のこだわり
女性より蒸気機関車を
追いかけていたい
蒸気機関車写真撮影
×石井清史
「蒸気機関車って石炭を食べ、水を飲んで、えっちらおっちら走るでしょ。まるで生き物みたいですよね。それにね、蒸気機関車は日によって釜の調子が全然違う。電気機関車のように誰が運転しても同じように走るなんて事がないから、面白くってしょうがないですよね。機嫌が読めないところとか、ちょっと女性に似ていますよ」
蒸気機関車写真が趣味の石井さんは東京都江東区で育った。江東区と言えば、越中島貨物線や明治通りを走る都電など電車に囲まれた環境。物心ついた時には、もう「鉄ちゃん」だった。小学生の時には、去り行く現役最後の旅客蒸気機関車に対する寂しさとやるせなさを綴った作文を提出し、先生を感涙させたという。
社会に出て、旅行会社に就職し鉄道から一旦遠のく。しかしその間、自分で旅行パンフレットを作るようになり、今度はカメラの楽しさを覚えた。そして3年前、当時宝山区に残っていた蒸気機関車を見に行ったのをきっかけに、石井さんの鉄道熱は激しく再燃する。その情熱はカメラと合体し、蒸気機関車写真という形で開花した。
上海では個人的に撮影に行く他に、ファンに向けた蒸気機関車撮影ツアーも開催。08年3月には蒸気機関車が中国全土で使用停止になると言われている今、走る姿を求めて、時間を見つけては仲間と撮影に出かけている。
「蒸気機関車は、ディーゼル機関車や電気機関車と違って、表情があるでしょ。嬉しそうに煙を上げて見えたり、しんどそうに煙を上げて見えたり。この時代にまだ石炭を焚いて走る現役の姿が見られるなんて、中国にいて本当に幸せですよ」
石井清史/上海青浦国際旅行社経理。山東省鄒城の情報には特に自信あり。
彫ったらわかった
野鳥と地球の関係
バードカービング
×二戸哲
初めて作った作品を手に取って、二戸さんは話す。
「この鳥ね、横から見るといいんだけど。正面から見ると、ほら、目が少し離れすぎ。『これではエサを捕まえなれない。自然界で生き残れない』って先生に言われましたよ(笑)」。
バードカービングとは、木で作り彩色する鳥の彫刻のこと。極意は、とにかく本物そっくりに鳥を表現することだ。鳥自体だけでなく、その鳥が足を休めている木の種類、さらに夏毛冬毛や木の枯れ具合などで季節までをも忠実に再現する。
二戸さんとバードカービングの出会いは9年前。東京の青山で開催していた展示会をたまたま覗いたのがきっかけだ。子どもの頃から工作と自然が好きだった二戸さんは、これに興味を抱き、体験教室に申し込む。そして気つけば生徒になり、教室を離れ、海を越えた今でも熱心に制作を続けている。
「再現美も楽しみのひとつ。でもね、もっと鳥を知ると、今まで以上に楽しめますよ。例えば、この鳥の翼、嘴や足の型からして、こんな外敵がいるのかな。こんな外敵がいるということは、この動物も居て…って、その鳥の生息環境や自然との繋がりも何となく見えてきて。大きく言えば、地球とその鳥の関係を理解できるという感じですね」
休日は早朝から夜遅くまで、木くずにまみれて作品作りに没頭することもある。「木くずまみれも、『男の作業』って感じでいいんですよ」と言う二戸さんに対し、「片付けてくれさえすれば気にしません(笑)」と奥さん。現在は5月に新宿で開催される作品展に向けて制作中だ。
二戸哲/クリケットジャパン㈱上海代表処所長。国内外入賞経験多数あり。
憧れを縮小して
少年たちの手の中に
プラモデル
×寺尾知純
「ガンダムにしても戦艦にしても、自分のイメージを投影した『憧れを造る』のが魅力ですよね。設計書通りに作れば、一応は完成。でもそこからこだわりの世界が始まるんです」
そう話す寺尾さんの目の前には、塗装技術を駆使し、プラスチック製なのにまるで超合金のような重量感を再現したロボットが置かれている。
「これは車の塗料や塗装技術を応用したもの。こうして塗装を工夫したり、パーツを改造したり、楽しみは尽きないですよ」
父は建築家、母はフラワーアレンジメントの先生という物作り家庭に育った寺尾さん。子どもの頃、父と一緒にプラモデル屋に行き、「最後まで自分で完成させるなら買ってやる」と言われて買ったものを見事に完成させた時の喜びが、今に繋がっているという。
大学時代にはショールームの立体模型を作るバイトをし、その経験を活かして建設会社に就職した。仕事の合間を縫って、趣味のプラモデルを作り、大阪は日本橋のプラモデル屋のショーケースで販売。1体12万円で売れた作品もあった。
現在は、古北でプラモデル好きの人たちに向けた憩いの場所「もってぃずガレージ」を経営。プラモデルを販売すると同時に、塗装用品などを揃えた製作スペースを提供している。
「週末には親子連れのお客さんも多いんですが、やっぱり自分の親父と同じことを言っていますよ。『最後まで自分で完成させるなら買ってやる』って(笑)。でも、そう言われて買った子どもたちが夢中になって造っている姿を見ると、応援したくなりますよね」
寺尾知純/もってぃずガレージ経営。特に車系の模型製作が得意。
熱中生活の出発点!
①百人一首競技かるた
百人一首を買いたい!
Easybuy
www.ey100.com
TEL: 6669-4556(日本語専用ダイヤル)
オフィス用品や生活雑貨、学校用品を販売するHP。ちなみに百人一首かるたは119.90元
競技かるたを始めたい!
TEL:138-0163-4114
ikeponp26@gmail.com
「興味の持ったら、とりあえずご連絡を。百人一首の歌を知らない人でも大丈夫。初歩から指導します」(池原)
②蒸気機関車
中国の鉄道事情を知りたい!
中国鉄道倶楽部
railway.org.cn
中国大陸を翔ける鉄道を紹介する日本人鉄道ファンのHP。列車タイプから、旅行に役立つ利用ガイドまで
鉄道模型が欲しい!
百万城(BACHMANN)
襄陽北路 100号(×新楽路)
www.bachmannchina.com.cn
中国鉄道の模型を販売する模型ショップ。小さいモノで約50元~
蒸気機関車撮影したい!
Southern Breeze
TEL: 6143-2241
www.southern-breeze.com.cn
石井さん主催の3泊4日平頂山蒸気機関車撮影ツアー(上海発)などを催行
③バードカービング
彫刻工具を買いたい!
北京東路×浙江中路付近は工具や金属材料のお店が密集。輸入工具も扱っている
木材を買いたい!
オススメは「東陽木彫」で有名な浙江省東陽市の「華東木材市場」。ここでは原木の切売りしてもらえる
④プラモデル
プラモデルを買いたい!
もってぃずガレージ
栄華西道99弄1号金馬公寓402室(×水城南路)
TEL: 6219-9079
営業時間: 10時~18時
(定休日:水木曜日)
コンセプトは「模型製作のお手伝い」というプラモデル・模型専門店。中国では入手困難な工具と材料をできるかぎり揃え、簡単な作成法などの使い方をアドバイス。仕上げの代行も可。「来店の際は是非ご連絡を下さい」(寺尾)
上海動漫城
浙江中路396号(×南京東路)
プラモデルやフィギアなどの専門店がひしめくデパート
~上海ジャピオン2月22日発行号より