日本で大ブームとなった調味料「食べるラー油」。
そのラー油の本場である中国で、食べるラー油と言えば、
女性の顔写真の付いた「老干媽」だ。
写真の人物は、その創業者・陶華碧。
貴州省で1947年に生まれた彼女は、
89年に冷麺と凉粉(中華風ところてん)を売る屋台を開き、
そこで、凉粉専用の調味料として
「辣椒醤(唐辛子ソース)」を作り始めた。
凉粉は飛ぶように売れたが、
辣椒醤がなくなると全く売れなくなったという。
辣椒醤の人気に気付いた彼女は、
周囲の勧めもあって、辣椒醤の生産工場を開設する。
屋台に通ってくる学生が、親しみを込めて、
彼女を陶華碧〝干媽(お母さん)〟
と呼んで慕っていたこともあり、
ブランド名は「老干媽」とした。
味覚と嗅覚を研ぎ澄ませておくため、
お茶やソフトドリンクを飲まないという
彼女の作る唐辛子ソースやラー油は、
今や中国だけでなく、日本や欧米各国でも販売されている。
①香辣脆油辣椒
ゴマの香ばしい香りが食欲をそそる、
中国版食べるラー油。食べ始めは甘味を感じるが、
その後、強烈な辛さが襲いかかる。
刺激の欲しい人は、色んな料理に入れて試してみよう。
②精製牛肉末 豆?油辣椒
油で揚げた細切り牛肉入りラー油。
辛さは前述の「香辣脆油辣椒」より控えめとなっている。
牛肉がラー油の味わいを深め、
白ご飯との相性はバツグンで、
何度もおかわりしたくなること必至だ。
③香辣醤
甜麺醤と豆板醤が入った、少々塩辛い調味料。
火鍋のタレ作りや青菜を炒める際に、
隠し味として使いたい。
また、暑さのため食欲のない時には、
冷やしておいたスティック野菜につけて、
バリバリ食べるのも◎。
中華料理の、香り付けと味付けに欠かせない調味料の数々を、
この世に送り出すスパイスブランド「王守義」。
どのパッケージにも、
その創業者である王守義の顔写真が付いている。
彼は、北宋時代から続く薬局「興隆堂」の継承者で、
祖父より伝えられた、秘伝の調味料の処方が、
貧しかった彼の人生を変えた。その調味料とは、
1101年に興隆堂が作り上げたもので、
当時、北宋の都・東京(現河南省開封)にその名は轟き、
皇室御用達にまでなったという。
彼は、その調味料の処方を基に、
さらに中国伝統の調味理論と、
食事療法を取り入れ改良し、
1950年、新たな調味料を考案した。
これが、香辛料の「王守義十三香」だ。
身体を温めるものや身体の内部の余分な湿気を
取り除くものなど、
様々な特性の漢方薬剤をバランス良くブレンドして
作り上げる調味料の数々は、
健康的な生活を送る上で、
中国人の必須のスパイスとなっている。
①十三香
名前は「十三香」だが、
使われている原料は13種類に留まらない。
胡椒や丁香(クローブ)、花椒(中国サンショウ)、
桂皮(シナモン)、大茴(八角)など、
20種類以上の天然漢方薬剤を加工精製し作られている。
どんな料理に入れても、
本格的な中華料理に仕上がる〝魔法の粉〟と言え、
餃子の餡の隠し味として使われることも多い。
②麻辣鮮
十三香では刺激が足りないという人は、コチラを。
舌がヒリヒリする感覚が持続する。
③孜然粉
「孜然」はカレーなどに使われるクミンのことで、
シシケバブなど、羊肉料理のにおい消しとして有名。
また、ザーサイやピクルスなどの漬物、
焼き魚に用いるのもアリ。
四川省や重慶周辺の特産品として知られる
「ザーサイ(?菜)」。
宋の時代に?州(現重慶市?陵区)で作られ始め、
1930年頃から、
当時の四川省?陵県特産品として
本格的に流通するようになったという。
この、お粥のベストパートナーたる薬味・ザーサイを、
顔写真付きで販売する「漢超」というメーカーがある。
調べてみると、
同メーカーは97年に四川省で創立された、
非常に新しい会社であることが判明。
写真の人物に関しては、
会社名から〝漢超〟という名前であることは想像に難くない。
しかし、会社の公式サイトに確たる記載はなく、
電話も通じないので、
実際にそうなのかは不明である。
ただネット上では、
会社のある眉山市東坡区の
食品商会副会長・劉漢超が率いる会社が、
「漢超食品」であるという記述も見られるため、
写真の人物は、劉漢超であろうと推測できる。
①下飯菜
商品名の「下飯菜」とは、食欲をそそる料理のこと。
その名の通り、ご飯が進む少し塩辛い味付けかと思いきや、
ちょっと甘めで、ご飯よりお酒が進む感じだ。
ゴマ油をふんだんに使用しており、
ゴマを大量に食べているような感覚がある。
全体的に薄味に仕上がっている。
②娃娃菜
ミニ白菜(娃娃菜)の漬物。
塩気が強く、ピリ辛度合いも高いため、
前述の「下飯菜」より、さらに食欲をそそる。
しっかりした味付けで、
麺料理の具として加えるのも悪くない。
③牛肉香菇
牛肉の旨味と唐辛子の効いたザーサイがベストマッチ。
シイタケには、
ピーナツやゴマの味がしっかり染み込んで、
さらにあと引く辛さもあり、ビールとの相性もバツグン。
北京人に「臭豆腐と言えば?」と質問すると、
ほぼ全員が、答えるであろうブランドがある。
それは「王致和」。
調味料のパッケージには、
辮髪(べんぱつ)姿の男性が描かれ、
清の時代から続くという老舗ブランドであることが伺える。
この絵の男性は王致和で、
何を隠そう、臭豆腐を発明した人物とされる。
安徽省に生まれた彼は、
康熙帝の時代(1669年)、
官僚登用試験「科挙」に失敗し、
実家の豆腐屋で幼い頃学んだ豆腐作りの商売を北京で始めた。
これが、同ブランドの誕生の瞬間だった。
後に目玉商品となる臭豆腐は、
夏に売れ残った豆腐を長持ちさせるため、
賽の目に切って陰干しした後乾かし、
それを塩辛い汁に漬けておいた豆腐が発酵したものだ。
清末には、
西太后もその臭豆腐をしばしば味わったという。
その後、同店は、
〝中国のチーズ〟とも称される発酵食品
「腐乳」や醤油、料理酒なども開発。
中でも腐乳は、北京市場の9割を席巻するに至る。
①臭豆腐
蓋を開ける前から、
その名前に違わぬ悪臭を放つ。
塩辛い上に、納豆の何百倍もの臭気が口に残るので、
人によっては
罰ゲームを受けているような感覚に陥るはずだ。
お粥と一緒に食べると、マイルドになり食べやすい。
②大塊腐乳
沖縄名物「豆腐よう」に似ているが、
豆腐ようより塩辛い。
焼酎のお供に、楊枝の先にちょっとつけて食べたり、
火鍋のタレに加えて楽しむのがオススメ。
③紅辣腐乳
前述の「大塊腐乳」より、
辛目に仕上げてあり、香りも良い。
肉類を始め、クセの強い素材に合うので、
上海名物としてお馴染みの
中国版豚の角煮「紅焼肉」の隠し調味料として加えると、
肉の旨味がより引き立つ。
?~上海ジャピオン05月25日号