この夏、不思議のステージへ①

この夏、不思議のステージへ



130万人を動員した日本公演の熱狂から3年
世界を席巻するシルク・ドゥ・ソレイユの「キダム」が上海に上陸!
公演をイチ早く体験した編集部が、その驚愕のステージをリポートする!!


不思議の国への誘い

新聞漬けのパパに、ラジオに夢中のママ。孤独な少女ゾーイはある夜、頭の無い男〝キダム〟に出会う。その帽子を拾った途端、ゾーイの前に3人のクラウン(道化)が出現。彼らはゾーイを、幻想と驚きに満ちた不思議の国へと誘う――。

こうして幕を開けるのが、初演以来、世界で600万人を魅了した舞台「QUIDAM(以下、キダム)」だ。世界の芸術賞を総なめにしている芸術集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の中国初上陸作である。開幕前夜となる6月27日、プレス用初舞台に潜入した編集部が、その一部始終をリポートする。

 

 舞台は、浦東の上海科技館そばに出現したビッグトップと呼ばれる巨大テント内にある。見上げると、天井にはキラキラ輝く5本のレールが! 聞けば、これはテレフェリックと呼ばれる空中演出装置で、重力を無視したキダムのパフォーマンスを生み出す核だそうだ。
 そして幕開け。まず、その音楽に胸を震わされる。映画的と評されるオリジナル楽曲の良さはもちろん、舞台奥のアーティスト達による、ヴァイオリン、ギター、ドラムなどの楽器と男女混声ボーカルによる生演奏が、一瞬で会場の空気を変える。
 その後、少女ゾーイ(と観客)の前に繰り広げられる、奇妙なショーの数々。それは、サーカスでもあり、ミュージカルでもあり、時には客を舞台に招いてのパントマイムでもあった。見事な技が決まるたびに拍手と感嘆の叫びが会場を包む。その隙間で、クラウンが笑いを誘う。では次ページから、その詳細をご紹介していこう。

驚愕のパフォーマンスに息を呑む



キダムのパフォーマンスに動物は登場しない。すべては人体の修練でのみ実現したアクロバットだ。そのずば抜けた身体技能を持つ団員たちは、世界中から集められている。同じ団員で公演を行うシルク・ドゥ・ソレイユの慣例に従い、上海公演を行う団員は、日本、ドバイ、韓国など近年の公演を経たベテランが多く、最高のクオリティが期待できる。では、どんな技が披露されるのか、一部を見ていこう。

【ジャーマン・ホイール】

最初に登場するのがこれ。直径2㍍の車輪を、内側からCory Paul Sylvester(アメリカ)が、多様なスピンを加え自在に回転させる。舞台の端まで来てぴたりと止まる、絶妙な動きに目が離せない。

【ディアボロ(空竹)】

続いて、ハイライトのひとつが早くも登場。4人の中国人少女が、小さな円筒コマを、手にしたヒモで回転させながら生き物のように操る。中国ゴマとも呼ばれる古い遊戯が起源だが、4人の息がぴたりと合った超絶技巧はまさに芸術。日本公演時、問い合わせが殺到したという印象的なテーマ曲も、鳥肌がたつほどパフォーマンスを盛り上げる。上海公演では、観客が最も注目する演目でもあるだろう。1995年パリ「フェスティバル・ド・シルク・ドゥ・ディメイン」の金賞獲得。

【エアリアル・コントーション】


舞台中、最も優美で官能的なパフォーマンス。
天井から下がる真紅の布を体に絡めたAnna Venizelos(アメリカ)が、観客の上でしなやかに舞う。
布だけで空中に浮かびながら、華麗に、はかなげに身をしならせる彼女を前に、会場には張り詰めた空気が漂う。

【スキッピング・ロープ】

縄跳びという誰もが親しんだ遊びが、キダムでは奇跡の連続と呼べるほどの驚愕の技に進化する。ソロ、デュオによるハイレベル技、縄跳び中での縄跳びなどアクロバティックな複合技、そして壮観なのはクラウンたちも交えた総勢20人によるジャンプ。キダム唯一の日本人団員・田口師永氏の演技にも注目したい。

【エアリアル・フープ】

天井から吊り下げられた輪につかまり、カナダ、アメリカ、ロシアの3人のパフォーマーがステージ上を浮遊。重力を感じさせず、時に妖しげに漂い、時に信じがたい速度で回転する姿はまるで妖精。現実を忘れさせる魅力がある。

【バンキン】

人間にこれほどの動きができるのか。クライマックスで披露されるこのバンキンを観れば、誰もがそんな感動を覚えるだろう。ロシアの15人チームが肉体のみで行う極限の組み体操。人が人を飛ばし、持ち上げ、支える。技が決まるたび、さらなる高難度の技が始まる流れは圧巻。現代アクロバットの最高峰がここにある。1999年「国際モンテカルロ・サーカスフェス」ゴールデンクラウン賞獲得

~上海ジャピオン7月6日発行号より

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