第10位 鶏蛋餅
自宅近くでも売っているんですが、今回は人民広場で買ってみました。
ええ、そうです、やはりベスト10として振り返るからには、
ひと通り食べ直さなくてはと思いましてね。
帰国が延びたので気持ちを切り替えようと、趣味の朝ごはんめぐりを再開したんですよ。
これは言ってしまえば、卵クレープですね。
具材は、押し豆腐に茎ワカメ、ビーフン、パクチーなど。
全部入れるかどうか聞かれたので、苦手なパクチーは少なめにしてもらいました。
パクチーって、中華料理に必ずといっていいほど入っていますよね。
私は、中国に住んだからには、「郷に入っては郷に従え」で、
これが苦手ではイカン、と思ってしまうんです。
だから少量でも、完全に排除しないようにしています。
いつかきっと、好きになれる。いつかきっと、帰国できる。そう信じて…。
第9位 煎餅
薄くのばしたパリパリのおせんべいを、卵クレープで巻いたものです。
かつてこれを食べた時、私は父の話をしました。
煎餅(せんべい)好きで、歯が弱った父にこれを食べさせたいと。
そんな父が、今度上海にやってくることになったんですよ。
「煎餅」を食べに…ではなく、まだしばらく中国に住むことになった息子の顔を見に、です。
早速、初日の朝はこれを食べさせようと思います。
喜んでくれるでしょうかね。
第8位 上海魯肉飯団
「魯肉飯」といえば、中国台湾の名物料理です。
醤油味のひき肉が乗った、丼メシですね。
しかしおにぎりというものは、形はいびつでも、日本人の心にすーっと入ってきますね。
この味が浸みこんだ「肉松(肉でんぶ)」も、アワの入ったご飯にピッタリです。
第7位 南瓜餅
久しぶりに食べました。カボチャ入りのお焼きのようなものです。
もともと甘いものには目がない私、そこに秋の食材を組み合わせたともなると、
なかば発作的に財布を開いてしまいます。
この、甘いんだか甘くないんだかわからない程度の甘さ。
ほんのりというには、あまりにもほのかすぎる甘さ。
これこそ、主張しない味、というのでしょうか。
つまり、帰国できない今の私に、これを食べておとなしく運命を受け入れろと、
そういうことなんですね、社長。
第6位 金包銀
金で銀を包む、という名ですが、モチモチしたデンプン質の皮でシイタケやひき肉の具を包んだものです。
これも味がよく浸みていて、唾液腺が刺激されます。
買う時に、「要不要辣?」もしくは、「辣的、不辣的?」と聞かれます。
辛いのと辛くないのがあるんですね。
寒くなってきたので少しでも温まろうと、今回は辛い方にしてみました。
ひと口かじると、ピリッとしてその後にジワ~ッときます。
熱いのをハフハフと頬張るのがまた、楽しいですね。
そういえばこれを食べた時は、息子の塾費用の捻出にアップアップしていたんだっけ。
その後、塾の成果あってか、机に向かう姿を見ることが多くなりました。
その分、私との会話も減ってしまったんですがね…。
第5位 鮮肉月餅
ジューシーな肉汁たっぷりの、挽き肉餡が入った月餅です。
皮もホロホロと崩れやすく、この餡にピッタリ。
中秋節が近づくと、列をなし月餅を求める人をそこらじゅうで見かけますね。
しかしここは、平常時でも行列のできるお店なんです。
5つの窯で、それぞれ30~40個は焼いているでしょうが、
購入する側も30個、50個とくれば、とても追いつきません。
そんな店ですが、これ以上寒くなる前に、と私も並んでみました。
行列ってあれですね、あと2人くらいになると気が急いていけませんね。
お店の人は、行列なんていつものことと言わんばかりに平常心を保ち、
これといって急ぐ様子も見せず、売りさばいています。
その姿にまた、イライラしちゃったり…。
結局、1時間待ちで10個買いました♪
第4位 三鮮豆皮
小吃街で有名な、豫園近くの四牌楼路にあります。
この通りは、本当に活気があって、歩いているだけで元気をもらえるような気がしますね。
いろいろな小吃に気を取られながらも、私のお目当てはこれ、「三鮮豆皮」です。
う~ん、薄い醤油味のもち米おこわに「豆皮(湯葉)」をのせて、こんがりと焼き上げる…
お焦げのコクがたまりません。
豆皮は湖北省武漢の名物、と同僚に聞いていたのですが、
武漢出張の際には特に変わった料理を見つけられませんでした。
上海同様、「麻辣湯」などの具材としてなら、見かけましたが。
第3位 土耳其肉夾饃
「肉夾饃」には鶏のひき肉を挟んだ中華風の味付けのものと、
ケバブを挟んだ、トルコ風のものがありますが、私が好きなのは後者です。
トルコはイスラム教の国ですが、中に挟むのを牛と豚から選ぶことができたので、
これを売っている人はイスラム教徒ではないとわかりました。
ということは、これは果たしてトルコ風と呼んでいいものなのか…。
まあそれはさておき、パンはギュッと密度が高くしっかりしていて、
肉汁を逃すことなく包みこんでいます。
第2位 板栗餅
月餅のようにホロホロと脆い皮で、栗の餡を包んだ「板栗餅」。
実は、季節限定品だったんです。
その店の商品は後に紫イモのパイ「紫薯酥」に代わり、
今年は春からずっと緑豆餡の「緑豆酥」。
妻から「何食べたい?」と尋ねられるたび、「板栗餅」と言いたいのを抑える日々です。
などと言っていても仕方ありません、ほかの店を探しました。
しかし、そのどれもが疑わしく感じられ、手が出せなかったのですが、
このベスト10を機会にトライしたんです。
すると…何ということでしょう!あの板栗餅、そのものです!
皮は少々脂っぽい気もしますが、餡には大満足。
ああ、これで私も生きていける、そう思った朝でした。
第1位 蛋餅
文句なしの堂々第1位です。
鉄板に卵を落とした上にクレープを乗せて焼き、タレをかけただけのシンプルなこの一品。
こう見えて私、小心者な一面がありまして、
これを1位に据えたいと思ったんですが、周りの意見も参考までに聞いてみたんですね。
そうしたらみなさん、「ああ、これはうまいよね」と、口をそろえておっしゃるじゃありませんか。
社長も「キミはうまいものを嗅ぎつけるね。そういうの、〝嘴が長い〟って言うんだよ」ですって。
何度か自宅に持ち帰ったんですが、
反抗期の息子が翌朝「父さん、昨日のあれ、また買ってきてよ」なんて言うんです。
中国台湾ドラマ狂いの妻なんて、「本場の〝蛋餅〟食べに行くわよ」と、私を旅行に誘ってくれたんですよ!
うちの家庭内に潜む不和の波が、蛋餅によって全て解決された、
と言っても過言ではありません。
もう「蛋餅」なんて呼べません、買う時には「蛋餅老師」と呼ぶことにします。
~上海ジャピオン2012年11月23日号