必勝!! HSK


実施後17年間で初となる大幅なシステム変更
受験者が増えつづける「HSK」が、いま新たな注目を浴びている
高得点を取得するコツから、最新試験システムの詳細までをリポートする


ことし4月、中国語認定試験「HSK」の新試験方式が、初めて実施された。ことしは従来式との選択が可能だが、今後は新方式に統一される見通しだ。
 また、試験の申し込みも、インターネット方式へ移行しつつある。これはネットバンク口座の開設が必須で、従来に比べ手続きは複雑化している。
 1990年からスタートしたHSKが、17年目にして初めて大掛かりな制度変更を行う背景には、昨今の受験数の世界的な急増があると言われる。では、この変更で何が変わるのか。長年HSKを指導してきた、復旦大学の助教授が、匿名で話をしてくれた。


新方式は難解?
口語と作文が追加

「先に実施された新方式の特徴は、コミュニケーション能力を重視した試験内容です」
 従来は「文法」「リスニング」「読解」「総合」の4科目だったが、新方式では「リスニング」の比率が大きく増加、他の科目は減っている。そして新たに「口語」「作文」が追加された。
 「新方式を受験した生徒は、特に口語が難しいと言っていますね。口語は、質問を聴いて、その答えをテープに吹き込む方式。質問は『どんな運動が好き?』といったもので、最後には特に難しい質問が出ます」
 新方式のもうひとつの大きな変更点は、評価方法だ。従来は11級のクラスに分けていたが、新方式では初級、中級、高級の3種のみで、それぞれ「合格」「優秀」にランク付けされる。HSK公式サイトによれば、「中級合格」は従来の5・6級に、「中級優秀」は7級に相当するとされている。
 「ただ、こうした新方式はまだ試験的なもの。新しいHSKの出題方式や成績判定基準は、試行錯誤の段階なんです。今後、新方式がどんな形に落ち着くのか、まだ分かりません」
 来年からは、新方式に完全移行するという公式発表もあったが、実際にどうなるかは、まだ不透明のようだ。
 「ただ、従来式のHSKも、内容はどんどん実生活に即したものになっている、という変化はありますね」
 いずれにしても、HSKが実用性を高めるのは確か。その重要性は今後も増すはずだ。

 攻略の鍵はここにある


HSKは実用的?
「中国語は、タクシーに乗れる程度でいいから、HSKは必要ない」と話す日本人は多い。では、HSKに実用的な意味はあるのだろうか。
 ひとつの答えは、HSKの学習をする中で、基礎から中国語を学べること。この「基礎から」がポイントだ。前述のように、日常会話だけの単語を覚えていると、始めは語彙が増えて面白いが、すぐ行き詰まる。機械的な暗記では、記憶に負担がかかるからだ。
 しかしHSKの学習をすると、自然に発音、文法などの基礎が身に付く。この基礎を応用すれば、効率的に単語も覚えることができる。つまり中国語の習得が目的なら、HSKはその近道となる、非常に実用的な手段なのだ。

弱点はリスニングと文法

「HSK受験には、通常の学習だけでなく、HSKへの対策が必要」。どの学校でも口をそろえて言う言葉だ。そこで語学学校ELCの教師主任・呉昊?先生に、日本人が特に苦手とする科目「リスニング」と「文法」に効果的な対策を聞いた。
〝語気〟で判断できる

「リスニングでは、まず『語気』(言葉の調子や口ぶり)に気を配って下さい。話し手が喜んでいるのか、怒っているのか。同意か、否定か。教材やラジオを聴くときも、中国人と話すときも、どんな語気がどんなニュアンスを示すのかに注意する癖をつけると効果的ですよ」
 HSKは選択問題なので、内容が理解できなくても、語気から答えが分かることが多い。
 「次に大切なのが『反語』。引っかけ問題として頻出するので、騙されないように(笑)」
 反語とは、「我怎?能不去??」(=どうして行かないでいられる=必ず行くよ、の意)などの、否定語の入った疑問文。リスニング問題の定番だ。
 「最後に、試験中にメモをとることも重要。特に、人名、時間、場所、数字、そして肯定か否定かに気を付けてメモをとって下さいね」
日本語との違いは語順
「文法で重要なのは、『近意詞(意味の近い単語)』『時制』『語順』の三つです」
 近意詞とは、例えば「規則」「規矩」など意味の近い単語のこと。特定場面で、近意詞のうちどの単語を使うべきかという問題は、HSKではお決まりだ。また時制と語順は、中国語の文法の大きな特徴。
 「近意詞は、専門の参考書を使うと効率よく覚えられます。時制は、『了』『?』『着』の3つに注意して判断して下さい。難関なのが語順。中国語では、主語・述語・目的語などの単語の順序が日本語と違うので、文法を学習する時は意識して覚えましょう」


呉昊?
ELC教師主任
 対外漢語修士。主に日本人留学生を受け入れているELCで3年教えており、HSKに関しても専門。
ELC(Easy Language Center)
東体育会路390号
上海外国語大学賢達学院行政楼8階
TEL: 5127-8253
URL: www.ez-language.net/

「え、9級持ってるの!?」
夫の転勤で上海へ来たのが2000年。その翌年から、HSKが実施されるたび、ほぼ毎回受験している野口さんは現在9級になる。上海生活と共にあるHSKへの想いを聞いた。

――受験するきっかけは?

野口 初めは、せっかくだし受けようかなと。リスニングなんか全く聴けなくて……でも5級に受かっちゃったんです。それから欲が出てきて(笑)

――受けて良かったことは?

野口 9級と言うと反応がすごく大きくて。仕事を探しても、それだけで会ってもらえたり。「え、9級持ってるの!?」と言われたらやっぱり嬉しいです。

――ズバリ高得点のコツは?

野口 最終的に思ったのは、問題集を解くより、中国語を一杯聴いて、中国のことを沢山知っておくのが大事だなあと。

――中国についての興味は?

野口 実は京劇が大好きなんです! 舞台の言葉を読むためと思えば、勉強も苦痛じゃないから不思議ですね(笑)。

中国語が上達する秘訣集
HSK以前に、中国語に悪戦苦闘している人も多いだろう。そこで編集部は、HSK取得者20人にアンケートし、上達の秘訣を聞いた。多かったのが、とにかく耳から入る方法だ。
▼「耳を鍛えるには、とにかく毎日聴く。ポータブルプレイヤーで、NHKワールドニュースの中国語版を毎日聴いていました」(24歳女性・7級)
▼「ラジオを聴き、聴き取れない単語をピンインでメモして後で調べる。繰り返せば単語力がつきます」(24歳男性・9級)
▼「自宅では、聞いていなくても、常に教材テープを流しておく」(26歳男性・6級)
▼「テープを聴くだけでなく、問題文と解答を声に出して読む」(24歳女性・7級)
 趣味などと関連づけて、日常的に習慣づける方法も多い。
▼「習ったことを、外で使いまくる。日本人同士でも中国語を使うこと」(28歳男性・5級)
▼「中国語で日記をつける」(27歳女性・6級)
▼「中国語の歌を覚え、その意味を調べる」(28歳男性・6級)
▼「字幕音声とも中国語でDVDを観る。よく出る単語をどんどん調べる」(31歳男性・7級)
 ほかに定番の意見として、中国人の恋人をつくるというものもある。最後に、真面目な学習方法へのアドバイス。
▼「単語を覚える際、例文も一緒に覚える。どんな文脈で使うかイメージできれば上達が早い」(24歳男性・6級)
▼「問題集を解くとき、自分が間違えた問題に印をつけておき、試験直前その問題だけをやり直す」(32歳女性・7級)


野口千広さん
華東師範大学、交通大学、上海戯劇学院など、様々な場所で中国語を学び、今は独学。京劇は、毎週のように行くほど好き。

 受験までの手続き


ことしからインターネットでの申し込み方式がスタート。従来のように会場での直接申し込みも一部で行われているが、ネット申し込みの方が早く始まり、受験人数制限もあるため、ネット方式の方が無難のようだ。次回のHSKは、高級は10月14日、初中級が11月25日。高級の申し込みはすでに始まっている(9月20日まで)。

①ネットバンク口座を開設
用意する物:
パスポート、通帳、銀行カード
手順:
 普通口座を開設してあれば、窓口でネットバンク(電子銀行)の申請をして、ネットバンク用カードを受け取れる。その後、ネット上でパスワード設定などを行って完了。申し込みに使える銀行は、中国工商銀行、中国招商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、北京銀行、民生銀行、広東発展銀行、華夏銀行、興業銀行の9行。

※参考サイト:
www.ez-language.net/pdf/hsk-bank.pdf(中国工商銀行でのネットバンク申請を詳しく解説している)

※ネットでの申し込み時には、他人のネットバンク口座を利用することもできるので、友人同士で口座をひとつ作り、HSK用に共有する方法もある。
②公式サイトで申し込み
用意する物:
ネットバンク口座、本人の照明用デジタル写真(100KB以下のJPEG、縦横比4対3)
手順:
1)アカウント作成
 公式サイトwww.hsk.org.cn/→网上?名→注册で、全項目に記入。ユーザー名はアルファベットか数字で入力するが、すでに存在する名称と重複しないよう、数字などを加えるのがベター。記入漏れ(中文姓名は空欄でも可)やユーザー名の重複があると作成に失敗する。
2)ログイン
 网上?名→登?でログインし、その画面で「??」をクリックして照明写真をアップロード。縦横比が4対3でないと、写真が変形して、受験時に本人照明ができない場合がある。
3)試験申し込みと支払い
 申し込み期間中なら、ログイン後に試験に申し込める。まず試験の種類、日時、会場を選択して予約。上海の試験会場は、復旦大学、交通大学、華東師範大学、上海外国語大学、財経大学など。その後24時間以内に、受験料を支払う。予約画面の「网上交?」をクリックし、銀行を選択、金額・カード番号・パスワードを入力する。受験料は、初中級で250元、高級で400元。支払い後、予約番号(??号)を控えておく。

※トラブルを防ぐため、支払いの前後で、口座の残高を確認しておこう。
③受験票の受け取り

用意する物:
予約番号、パスポート
手順:
 試験会場まで受け取りに行く。受け渡しは、申し込み締め切りから約2週間後(公式サイトで発表される)。
④受験
用意する物:
受験票、パスポート、2B鉛筆
手順:
 試験はボールペン不可。鉛筆は数本用意しておこう。遅刻は、5分未満なら入室可。5分以上なら2科目目から受験する。2科目開始以降は受験不可。なお、手を上げて教師に言えば、試験中にトイレ退出できる。ただし、同時にふたり以上は退出不可。

※ビザなどの手続きでパスポートが手元にない場合、申請中を照明する書類とパスポートのコピーがあれば代用できる。
⑤成績証明書の受け取り

用意する物:
受験票、パスポート
手順:
 成績は、受験の約1カ月後に、公式サイト上で確認できる。成績証明書の受け取りは受験の約2カ月後で、試験会場まで受け取りに行く。会場によっては、別料金を払えば証明書の国外郵送もしてくれる(要確認)。

取材協力:
ELCマネージャー
今道剛

【注意!】
以上の手続きは、予告なしに変更されることがあります。詳細は公式サイトwww.hsk.org.cn/で確認してください。

 攻略のパートナー


HSK対策の問題集は様々あるが、メジャーなものを紹介する。なお、テープは別売り。


『HSK速成強化教程(初、中等)』39元
北京語言大学出版社


『HSK模似試題集(初、中等)』35元
北京語言大学出版社


『HSK真題及分析』
(模擬試験ではなく、実際に実施された過去問題)
25元
北京語言大学出版社


学習用テーププレイヤー
様々な種類があるが、価格は100~200元ほど。メーカーは「智能達」がメジャー。

HSKトリビア集

●最新の話題から出題されることが多いので、中国の新聞やニュースをチェックしておくと有利になる。
●問題は、北京語言大学が制作するので、参考書は北京語言大学出版社のものを選ぶのが無難。過去には、同出版社の教科書の文章がほぼそのまま出題されたこともある。
●解答用紙は、カンニング防止のため、上から下に書くタイプと、左から右に書くタイプの2種類が配られる。
●成績は、相対評価となっており、問題に割り当てられた点数は、受験者の平均得点に応じて若干調整される。

~上海ジャピオン9月7日発行号より

最新号のデジタル版はこちらから




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