日曜日はぶらり文廟へ

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市街地で唯一の大型古本市

8・10号線「老西門」駅から東南に向かって8分ほど歩くと目に入る、「上海文廟」と書かれた道路入口の大きな門。そこが文廟路、西の起点だ。文廟路という名前の由来でもある「文廟(ぶんびょう)」は、道の中心辺りに位置する。ここでは毎週日曜日の7時半~16時に、今や市街地では唯一ともいえる古本市を開催している。

入場チケットは1人1元で、入り口に立つ看守にチケットを渡し中へ。入ると広々としたスペースがあり、ズラリと並んだ長机には、おじさん・おばさんが思い思いに古本を並べて商い中。出店数は30軒程度で、店主は隣の人や常連客とおしゃべりをしたり茶を飲んだりと、のんびりとした雰囲気が漂う。店主の1人に話を聞いてみると、出店だけを生業にしている人はおらず、古本販売は趣味のようなものだと言う。

レトロな絵柄の「小人書」

いよいよ商品の物色を開始。まず目についたのは、「連環画」や「小人書」と呼ばれる1940~50年代に流行った小さな中国版コミックス。上下巻セットで売られているものが多く、2冊セットの平均価格は20元程度。保存状態がよいものほど高値が付き、同じ商品でも装丁によって倍の値段になることもあるんだとか。

主なラインナップは中国の故事や世界の童話、革命劇など。店のおじさんは、取材班が日本人だとわかるとすかさず『鑑真』や『西遊記』をオススメしてくれた。本は丁寧にビニール掛けされていて中を確かめることはできないが、裏を見ると50年代に発行、値段は1角5毛とある。それも今や、1冊100元となかなかのプライスに。価格は店舗によって異なるので、じっくり吟味して交渉してみよう。

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全国各地にある文廟とは?

古本市を一通り覗いた後は、奥に続く「文廟」を見て回ろう。奥に入るためには入場券が必要で、大人は1人10元。なおこの券があれば、古本市のチケットは不要だ。入場時間は古本市と異なり、9時~17時なので気を付けよう。

「孔子廟」や「夫子廟」、「先師廟」とも呼ばれるこの廟は、中国春秋時代の思想家であり、儒教の創始者である孔子を祀っている霊廟で、中国各地に点在する。元々は学校として建てられ、元代には県に1つ孔子廟が置かれたそう。孔子を祀るとともに、県の最高学府として、科挙試験を目指す秀才を育成する目的があったとされる。有名なのは北京市と曲阜市の「孔廟」、南京市の「夫子廟」、吉林市の「文廟」の〝中国四大文廟〟。また、日本の東京都や長崎市、東南アジアの各国にも設けられている。

 孔子を訪ねて学業成就

上海文廟の起源は南宋時代に遡り、現存する廟は1855年に再建されたものだ。古本市の奥に位置する大成殿前には、孔子像が立っている。中には観光客や学業成就を祈る人などが多く見られ、内部の壁は全国の文廟でも、ここにしかないという論語全文が刻まれた石碑がぐるりと囲む。なお、1枚3元で短冊を販売しており、願い事を書いて吊るすことができるんだそう。

大成殿右側から奥に進むと、昔の蔵書を陳列する「尊経閣」や、アメリカ国籍の華僑が寄付したとされる茶器・陶磁器類の展示館が広がり、見どころが盛りだくさん。またそれぞれの施設を繋ぐ回廊には、孝行に関する子ども向けの訓示が掲示されており、「両親の話を聞きましょう」などかわいいイラストを眺めているだけでも楽しい。内部は人が少なく驚くほど静かで、市街地にいることを忘れてしまうぐらい、ゆったりとした時間が流れる。

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大人から子どもまでが夢中

最後に文廟界隈にある店舗を覗いていこう。現在、文廟路を席巻しているのは、アニメキャラクターのフィギュアショップやカプセルトイショップ、プラモデルの店などだ。店内に一歩足を踏み入れれば、グッズがところ狭しと並ぶディープな空間が広がる。一方、子どもが好きそうなおもちゃや文房具、アクセサリーを扱う店も点在。大人がフィギュアを物色している反対側では、子どもがおもちゃに夢中という、不思議な光景が見られる。数年前まではアンティークショップや中日のアイドルグッズ店もあったらしいが、今は姿を消してしまった。

その代わりに(?)進出してきたのが、軽食類を扱う「小吃店」。先の「上海文廟」という大きな門のすぐ下には、「豆浆(豆乳)」や「油条(揚げパン)」など上海の朝食メニューが並ぶ「小桃園」がオープンしたほか、ドリンクスタンドやスナック店が軒を連ねる。

 今では珍しい古本屋が健在

移ろいゆく街並みの中で、時代に取り残されたように残っているのが「旧書店(古本屋)」だ。中華路沿いにある「上海旧書店」は、間口は狭いが奥行きのある造り。乱雑に積まれた古本には、洋書から辞書、雑誌まで様々なジャンルを揃える。薄暗い店内で流れるラジオを聞きながらじっくりと背表紙を眺めていると、まるで一昔前にタイムスリップしたかのよう…。また文廟路から一本北に位置する夢花路にも、本が地面に平積みされている古本屋を見つけた。入口で気持ちよさそうに眠る店主を起こすのが忍びなく入ることは控えたが、どんどん数が少なくなっているという古本屋、姿を消してしまわぬうちに一度訪れてみてはいかが?

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~上海ジャピオン2017年10月13日発行号

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