中国映画の世界を覗いてみよう!!

まずは、実際の映画撮影現場の様子を見る前に、日本と中国、そして上海と映画との関わりを探ってみよう。今回、撮影現場を見せてもらった、映画『感情生活』のプロデューサー・李瑩さんが中国映画の裏側について話してくれた。


日本と中国の違いは?
撮影前はブタで儀式を

 同じ映画撮影でも、その国々によって習慣は異なるものだ。
 「以前、日本のスタッフと共同で撮影したことがありますが、日本側は、スケジュールが決まると、それにきちっと合わせて撮影を進めていってビックリしました。
中国だと、スケジュールを決めても、結構変わりますので…」と話すのは李さん。
 他にも中国と日本の違いは、撮影段階以前にもあるという。
それは、「中国国家放送・映画・テレビ総局(中国国家広播電影電視総局)」による脚本審査だ。
シナリオが風紀を乱すものなどと認定された場合、脚本を書き換えるか、該当箇所を削除することで許可が下りる。
ホラー映画ならば、幽霊なども人の仕業であることを示す必要があるとされる。
 また、中国では撮影前に祭壇などを設けて天に祈りを捧げ、映画の成功と安全を祈る儀式が行われる。
ブタの丸焼きが用意されるなど、日本の神道的な儀式とは雰囲気を異にする。


映画の歴史は上海から
魯迅も愛したターザン

 上海と映画の関わりは深く、中国映画の歴史は、上海から始まったと言ってよい。
 「上海は、中国で映画が最初に上映された都市なんですよ」と李さんも話す。
話によると1896年にフランス映画の『西洋影戯』が、上海北部の閘北地区にあった徐園の茶館で上映されたそうだ。
あの小説家の魯迅もハリウッド映画が大好きで、上海に住み始めてから、キングコングやターザンなどをよく見たといわれる。
 一方、中国映画の撮影は、1905年に北京での『定軍山』が最初とされ、上海と北京との「消費と創作」との関係は今も続いているといえる。
つまり、北京には多くの映画関係者が住み、映画のスタッフは、北京で組織されることが多い。
一方で、上海では、毎年6月に、300作品以上が上演され、30万人以上の観客を動員する、中国唯一の国際映画祭「上海国際映画祭」が開かれるなど、映画を享受するという面が強い。
 また、上海での撮影に関しては、アン・リー監督の『ラスト、コーション(色・戒)』のように租界時代をテーマにした作品が、映画村の「上海影視楽園」で撮影されることが多いという。
 では、続いて、実際の撮影現場の様子を見ていこう!


撮影待つのも仕事のうち
エキストラは辛いよ?

 今回潜入したのは、現代の若者の恋愛模様を描いた映画『感情生活』の撮影現場だ。
当日午後は北京の某大学キャンパスでのオープン撮影で、学生たちの野次馬もチラホラ見られた。
 この日の撮影は正午過ぎにスタート。
最初に撮影されるのは、主人公の男が彼女を大学まで自転車で送り届けるシーンとのこと。
まだ時間になってないのか、40分ほど待っても撮影が始まらない。
スタッフは、のんびり煙草をふかし、現場のプロデューサーに至っては「待つのも仕事のうちよ」と言う。
周りを見ると、エキストラと思われる6人の女の子が、思い思いに座り込んでいた。
 しばらくすると彼女らが呼ばれ、助監督と見られる人による演技指導が始まった。
女の子たちは、校舎への入り方などを具体的に指導されている。

化粧台に座りし大物俳優
泰然自若で存在感あり

 何度もリハーサルを繰り返す女の子たちの歩く先を見ていると、化粧台があるのを発見。メイクさんが忙しく手を動かしている。
誰がいるのか気になり近づくと、そこにいたのは、何と〝夏雨〟! 
デビュー作『太陽の少年(陽光燦爛的日子)』で、ベネチア国際映画祭主演男優賞を受賞したあの夏雨だ。
大物俳優の化粧は室内でひっそりとやるものだと思っていたので、ビックリ。泰然自若として、瞑想しているかのような夏雨の姿に圧倒された。
 主役の夏雨の化粧が終わると、主演女優の姚星?も現れ、撮影がついにスタートした。
なるほど、撮影は夏雨の化粧待ちだったのか!?


緊張感溢れる撮影開始
さすがの夏雨もNG!?

 俳優、エキストラ、ライティングなど全ての配置が終わり、撮影開始。
カチンコが用意され、「安静点! (静かに)」という言葉が現場監督の口から発せられる。
緊張感高まる中、監督の「開始! (アクション)」の声が響く。
午後最初の撮影で、みな緊張していたのか、撮影は失敗。
夏雨も倒した自転車を起こすのに手間取るなど、緊張感が見えた。
ただ、夏雨独特のシニカルな笑い方は顕在で、彼の演技に見入り、しばし取材を忘れて、一中国映画ファンに戻っていた。
 映画では、同じシーンでも、全体の画や主人公のアップ画など、様々なカットがある。
そのため、このシーンだけでも、カメラの位置をかえて、10カット以上撮影されたのだった。


助監督がエキストラ指名
ついに夢の映画デビュー!?

 次のカットの準備を眺めていると、突然、助監督が「エキストラ体験をさせてあげる」といって自分を呼び出した。
校舎入口で女優さんの横を通り過ぎる学生役に抜擢されたのだ。
 中国で銀幕デビューかと喜んでいると、「ヒゲ剃ってね」と助監督が一言。
存在感あり余るヒゲは、学生らしくないらしい。
銀幕デビューのためならと、涙を揮って半年以上蓄えたヒゲを剃る。さらに、用意された若者っぽい(?)青いジャージを着込み準備万端に。
エキストラにも手を抜かない姿勢には感服した。
 他のエキストラと一緒に校舎の中で待機し、順番に出て行く。
自分が出たときにちょうど、女優さんが箱を落とした。
手助けしたい気持ちグッと抑えて、可憐な女の子を横目で見つつ歩いていった。
「過! (OK)」という監督の声が聞こえ、ホッと一安心。
ただ、歩いただけなのに、「プロやな!」と助監督に声を掛けてもらい、何だか自分もイッパシの役者気分になった。
ただ、後ほど助監督から「今回は顔映ってないから」と伝えられガックリ。
ヒゲを剃ったのは何だったんだ…。
 この後、何カットか撮影して、本日の撮影は終了。
怒号の飛び交う舞台裏を想像していただけに、淡々と進む撮影には目から鱗だった。
脱兎のごとき素早い撤収作業に唖然としつつ、自分も遅れないようにその場を離れ、上海への帰路に着いた。

映画『感情生活』の俳優さん、スタッフさんの声!


 女優の仕事の楽しみは、普段の自分とは違った自分になれることですね。
これまで、映画『綻放』で目の不自由な方の役、時代劇『庚子風雲』でお姫様役など、色々やりました。
 残念ながらまだ、上海に映画撮影に行ったことはありません。
ただ、江南地区での撮影なら、目の不自由な方の役を演じることで、浙江省に行って、浙江省身体障害者芸術団のメンバーと一緒に1カ月以上生活したことがあります。
 個人的には、都市を舞台にした映画で演じるのが好きなので、今回、大学生を演じるこの映画『感情生活』を楽しみにしています。
 今回、恋人役の夏雨さんにビンタをするシーンがあるんですが、1回でOKにしようとして、思いっきり叩いたんです。
そうしたら、頭に響いたようで、夏雨さんはクラっとなって、演技が続けられず、NGに。
監督さんからは軽く叩いてと言われて、夏雨さんからは「絶対に復讐してやる」って冗談っぽく言われました(笑)。
 女優は、毎日の生活が仕事のようなものですから、普段から英語やダンスなどの勉強をして自分を磨いています。
でも、時には愛車のポルシェに乗ったり、ロッククライミングをしたりして、できるだけ毎日楽しく過ごしていきたいですね。


 日本では大道具と小道具と、道具担当の名称は2つあるみたいですが、中国では「道具」と言えば、小道具を指します。
ライターのような小物から大きな机、食べ物まで、撮影に必要なものを全てそろえるのが仕事です。
脚本をまず読んで、シナリオに出てくるありとあらゆる道具にペンでチェックを入れて、撮影前に揃えます。
 あと、この仕事で一番楽しいのは、撮影で色々な場所に行けることです。
華南の方にも撮影で幾度となく行きましたよ。
最近では、テレビドラマ『真心英雄』の撮影で浙江省の映画テーマパーク・横店影視城に行きました。
 上海にも撮影で行きたいですね。


 「劇務」の仕事は、基本的に表で活躍する俳優さんたちと、裏方の監督さんや美術さん、メイクさんたちとの間を取り持つ仕事です。
〝人・物・事〟の全てを管理する管理人といったところですね。まあ、格好よく言えばですけど…。
もちろん食事も管理するので、ロケ弁の準備も僕らがするんですよ。
結構徹夜も多いので、夜寝て、朝、誰かに起こされるのではなく、寝られるだけ寝られたらといつも思います。
 中国では、「劇務」からこつこつと始め、監督にまで上り詰めた人が少なくないので、僕もまずは経験を積んで、学校で映画の勉強を改めてしようと思っています。

~上海ジャピオン3月27日号より

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