花鳥市場に潜入


驚きと懐かしさが混在
ペット探しはここへ!?

 慣れない海外での暮らしだからこそ、お部屋に〝小さな癒し〟が欲しい――。
そんな方に、ぜひ足を運んでほしいのが、市内数カ所にある花鳥市場だ。
今回紹介するのは、その中でも市中心部にある「上海万商花鳥魚虫交易市場」。
市場内には、その名の通り、草花や鳥や魚や虫はもちろん、猫やウサギなどのペットを扱う店までもが、所狭しとひしめき合っている。そして、そこにいる人も様々。
ペットやエサを求める人、コオロギの相撲を楽しむオジサン、アンティークな鳥かごを求める欧米人、加えて観光客の姿も少なくない。
さらに、商売人の声、鳥や虫の鳴き声が加わるので、まさに〝ごちゃまぜ状態〟の雑多な世界が広がる。
 今年1月には、全体をリニューアルし、以前よりは日本人にも足を運びやすい雰囲気に変わったとの話を聞く。
そこで市場を覗き、鳥や魚などカテゴリーごとに、その商品ラインナップや雰囲気をレポートする。


九官鳥が「?好!」
カラフルな鳥がお出迎え

 市場内には、店先に鳥かごをぶら下げた小鳥店が点在する。
かごの中では、萌黄色のメジロや、南国風の色使いのインコがさえずり、愛くるしい動きで客の目を楽しませていた。
 中には、九官鳥をぶら下げている店もある。
中国の九官鳥なら中国語をしゃべるのかと、足を止めると、普通の鳴き声からは想像しがたい野太い声で「?好」とご挨拶。
さらに粘り強い観察を続けると、「晩上好」や「不是?!」という言葉も飛び出したほか、「説不定(はっきり言えない)」という言葉も言っているような――。
店のおじさんが普段使う言葉を、声色までも覚えてしまったのだと思うと面白い。
 小鳥店の店内は、25㌢四方ほどの四角い鳥かごに入った小鳥が、行儀よく並んでいるところが多い。
鳥の価格は種類によりかなり幅があり、安いインコなら30元~、高いものになると、鳥かごとセットで1000元を超える。
 鳥かごも、シンプルな小さなものから、高さ1㍍を越えるもの、丸かごのアンティークなものなど様々あり、安い物で15元~。小鳥用の小さな陶器の水差しもあり、1つ1元~。
なお、小鳥店には鳥のエサ用に、目を背けたくなる〝蠢く幼虫〟が販売されていることもあるので、苦手な人は注意しよう。
 なお、市場全体に共通することとして、価格を張り出している店と、言い値の店がある。
特に言い値の場合は値引き交渉を忘れずに!


愛される昆虫たち
その楽しみ方とは?

 市場を歩くと、「蟋蟀」や「??」という看板とともに、ケースに入った虫が、大量に売られている。
これはそれぞれ「コオロギ」と「キリギリス」だ。
 特にコオロギは、中国では秋になると、「闘蟋」と呼ばれるコオロギのオス同士の相撲を楽しむ伝統習慣があることから、夏から秋にかけて市場の主役に躍り出る。
年配の男性の間では「闘蟋」のファンは多く、彼らは強い戦士を生み出すために、市場で強いオスを買うのだとか。
また〝上級者〟になると、自分の所有する強いオスの子どもを残すために、市場でメスを買って帰り、自宅でそれをかけ合わせて楽しむのだという。
これはもはや〝コオロギブリーダー〟の領域。当然こうした店を覗いている人は、中国人の男性が多かった。
 コオロギは、ほとんど標本箱のようなケースに入って売られており、価格は3匹10元など。
また、『闘蟋60番勝負』(上下セット15元)と題されたDVDも販売されていたり、その映像を店先で放映していたりと、その人気ぶりが伺える。
 一方、コオロギよりも一回り大きな緑色のボディの虫が、キリギリスだ。
こちらは部屋に置き、音色を楽しむのだという。
今はてっぺんが網状になった円柱状のプラスチックのケースで売られているのが主流だが、昔ながらの編みこんだ竹かごに入って売られているものもちらほらあった。
こちらの価格は1匹10元~20元程度。
 販売店のスタッフにキリギリスの飼い方を聞くと、「えだ豆1粒の1/4またはご飯粒1粒を、1日1回あげればOK。
1日くらい忘れても大丈夫だし、面倒くさがり屋が育てるペットだよ」と笑っていた。
寿命は平均3カ月程度という。
市場内には、木製のアンティークなキリギリス専用容器も売られ、風物詩として親しまれていることがわかる。
 虫が苦手でない人は、1匹買って帰り、部屋に音色を響かせてもらうのもいいかも。


金魚に熱帯魚にカメ
部屋で水中王国を建国!

 市場内の魚ショップの中でも目を引くのが、南東の角っこに構える金魚専門店だ。
店先には、赤く小さな金魚たちが、縁日の金魚すくいのように販売(2匹1元など)されており、ふと懐かしい気分になる。
店内には約20の水槽が備わり、お馴染みの「デメキン」や、腹がぷっくり膨らんだ「流金」、頭部に見事なコブを持つ「ランチュウ」など、色々な種類の金魚を鑑賞できる。これらは少し値段が張り、直径10㌢弱の大きな「流金」で1匹35元ほど。
 このほか市場には、熱帯魚を売る店は多く、好きな人ならキレイに飾り付けられた水槽を見て廻るだけでも楽しめるだろう。
よく売られているのは、直径2㌢ほどでブルーに輝く「ネオンテトラ」や上下に長く伸びたヒレが特徴の「エンゼルフィッシュ」、古代魚の代表的存在「シルバーアロワナ」など。
シルバーアロワナの価格は、15㌢ほどの子どもで1匹70元前後。
それをじっと見つめていると、「ほしいの? これは大きくなったら高く売れるよ」と店員さん。
なるほど、育てる以外にそういう目的で買っていく人もいるのかもしれない。
 なお水槽はシンプルな金魚鉢なら約5元、45㌢四方ほどの小さいものならモーターとセットで200元程度だった。
またここには水草や敷石、水質調整剤、さらには「橋」や「五重塔」など水槽内を飾る置物まで一通りあるので、熱帯魚とともに一式揃えて、部屋の片隅に自分好みの水中王国を作るのも面白そうだ。
 またカメも、手の平サイズの可愛らしい小さなミドリガメから、ワニガメのような大きくごっついカメまで大小様々なカメが幅広く売られている。
小さいものなら1匹3元ほどで購入できるが、どれもいずれ大きくなるとのこと。
20種類近くのカメを鉢に入れ、ずらりと並べて販売するカメ専門店も存在していた。


猫やウサギが約20元?
『トトロ』のモデルも

 鳥・虫・魚に比べると、店舗数は少ないが、猫やウサギを扱う店も存在する。
高級な猫は、キリッとした瞳で大きなケージに入って店内に置かれ、価格は1匹1000元を越えるものも。
逆に雑種の安い猫は、どこか不安そうな顔つきで小さなケージに入って、店先にちょこんと置かれている。
そんな猫をかまって遊んでいると、店員さんから驚きの一言。「その猫20元だから、買って帰って遊びなよ」。
そんなに安いの? ウサギも同様で、ある店で価格を聞いたら、安いもは、なんと18元。
なんだか投げ売りされているようで、可愛そうになり、〝ここから救い出す〟意味で、買って帰りたい気持ちが芽生えてしまう。
 また市場内には、チンチラの専門店まであった。
チンチラは、『トトロ』や『ピカチュウ』のモデルになったとも言われている動物。
ウサギをもっと毛深くし、まんまる太らせたような容姿で体長は約20㌢で、与えられた餌を手で持って齧る姿が愛らしい。
ただし、価格もそれなりで、安くとも800元前後はするようだ。このほか、ペットフードやリード、ペット用おもちゃが販売されていた。
こうした動物たちは、帰国の際に手続きが大変という面はあるが、必ずや海外生活に癒しを与えてくれることだろう。


花より盆栽が中心
〝発財樹〟がお金を呼ぶ?

 ここまで動物ばかり紹介してきたが、「花」鳥魚虫交易市場だけあり、植物も当然売られている。
と言っても花は少なく、鉢に入った盆栽や観葉植物が多い。
特に室内で手間がかからず、育てやすいサボテンはあちこちで見かけた。小さいものなら1鉢10元以下もある。
 サボテン以外で、よく見かけるのは「パキラ」。
中国では〝発財樹〟と呼ばれ縁起物なのだとか。店で植物を眺めていた際に何軒かで、「発財樹もあるよ」と言われたので、購入していく人も多いのだろう。
価格は20元前後からと高くはないので、自分の部屋や会社に1つ置くのもいいかも。このほか、ひょうたん型の食虫植物など珍しい植物を置いている店や造花の専門店も並んでいた。
 市場は、ゆっくり見て廻っても2時間程度。
この〝ごちゃまぜ状態〟の中から、自分に合った同居人を探しだし、上海生活をより充実させよう。

~上海ジャピオン4月3日号より

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