路地裏の散歩道から
華山路と江蘇路に挟まれた住宅街の路地裏に、ひっそり佇む1軒のカフェ「昨天今天明天」。ネットでの噂によると、オーナーは元フライトアテンダントとのこと。なるほど、英語名の「タイム・パッセージ(=時間旅行者)」はそこから来ているのだろうか。
店内は暗く絞ったダウンライトの下、左手奥にライブスペース、右手は大きな窓に面して低いテーブル席が並んでいる。不定期でジャズを中心とした演奏が行われ、ゆるいカフェ空間を盛り上げている。
ダッチ・アートのケーキ
深夜営業でライブも行うとくれば、カフェ&バーの様相を呈するかと思われるが、この店は昼からのお酒も夜のケーキも大人気。特に自家製のパウンドケーキ「モンドリアン・ケーキ(蒙徳里安蛋糕)」(40元)は、そのユニークな外見に惹かれ、マストオーダーの一品となっている。19世紀末のオランダの画家、ピエト・モンドリアンの特徴的な作風である、直線で分割した枠に赤・青・黄の三原色を配し、ともするとステンドグラスをはめ込んだ窓のよう。また「ローズマリー・チキン」(78元)、「グリルソーセージとマッシュポテト」(80元)など、コーヒーにもビールにも合うダイニングメニューも豊富だ。
ちなみに、中国にはこの店と同名の有名な「小品(コント)」がある。…が、きっと何の関係もないと思われる。このカフェはただ、昨日も今日も明日も、近隣に住む人々の生活の一部として、同じ場所にあり続けるだろう。
【INFO】
住所 華山路1038弄曹家堰路173号華山路1038弄183号
電話 6240-2588
営業時間 11時~翌2時(土日は10時~)
お気に入りの席を
〝上海の銀座〟と呼ばれる淮海中路と、人気の観光スポット「田子坊」を結ぶ思南路。その中程にある「古董花園」は、店名の通りアンティーク感満点だ。
外壁は赤茶色の洋風レンガ造り、道に面して奥へ伸びる庭には緑に囲まれたテラス席も。店内は至るところ、アンティーク家具や食器、看板、雑貨がぎっしり並ぶ。1階には主に3~4人以上用のゆったり席、2階は1~2人向けにこぢんまりとしたシートがある。常連客は必ずと言っていいほど、お気に入りの席を決めてある様子だが、どこに座っても落ち着ける。さらにはフリーWi―Fi完備と、設備もばっちり。
本物のアンティーク
メニューブック最初のページに登場するのは、箇条書きの「カフェ利用指南」。「最低1人要1ドリンクオーダー」、「カードゲームや将棋は不可」…読み飛ばしてはいけないのが「食器やインテリアを破損した場合、速やかに賠償すること」の項目だ。これさえ肝に銘じておけば、非常に気持ちのいいサービスが受けられる。
一番人気は「アフタヌーンティーセット」(88元)。ドリンクはコーヒーに柚子茶、抹茶入り玄米茶、紅茶から、ケーキはティラミスにチーズケーキ、チョコレートケーキから1つずつ選べる。また1日を通して、サンドイッチやパスタ、ワンタンなどのフードも提供。ワンタンには自家製クッキーがついてくるのがうれしい。レジ横では、レトロなポスターも販売。店のアンティーク感ごと、お持ち帰りしてしまおう。
【INFO】
住所 思南路44号甲
電話 5382-1055
営業時間 11時~23時半(土日・祝日は~24時半、火曜定休)
老舗喫茶の風格漂う
かつてフランス人が多く住んだ衡山路エリアの古いアパートの1階にあり、市内のカフェの中で老舗店の1つに数えられる。その重厚な内装から、イマドキのカフェというよりも、音楽ならブルースが似合いそうな、どっしりとしたヨーロッパの〝喫茶〟を髣髴とさせる。早朝にはトーストorフレンチトーストに焼き方が選べる卵料理、ベーコンorソーセージ、サラダ、ジュースor牛乳とコーヒーor紅茶と、スタンダードだが盛りだくさんの「モーニングセット」(55元)を目当てに、近隣に住む欧米人で賑わう。朝食を出す店が少なかった頃から営業しているため、長いことこの店に通うファンもいるのだとか。
夜もしっかり満腹に
11時~15時までは、スープorサラダに前菜、メインとドリンクの「ランチセット」(88元)、午後にはコーヒーor紅茶を無限にお代わりできる「アフタヌーンティーセット」(58、65元)を用意。そして夜、1日を通して提供しているのだが、ポテトやチキンウィングなどのスナックはもちろん、スープに前菜にサンドイッチ、バーガー、パスタまで揃え、しっかり食事をした、という満足感を与えてくれる。
涼しい夜風に吹かれながら、ここではコーヒーや紅茶ではなく、クラムチャウダーで温まるのもいい。インテリアから食器、料理の味まで、今流行の〝オシャレカフェ〟がむしろ苦手な人にオススメの一店だ。
【INFO】
住所 衡山路525号
電話 6433-5564
営業時間 7時半~翌2時
老舗店から欧風バーまで
車通りが少なく、近隣住民が昼も夜も行き交う進賢路は、ローカルの生活道路として活躍する。東は茂名南路、西は陝西南路と短くはあるが、老舗の上海料理店から欧米人に人気のバーまでぎっしりと店が立ち並び、さながら上海の縮図のような通りだ。
この通りにあるほかの多くの店がそうであるように、「シチズンズ・カフェ&バー」も、老洋房を改装した1店。内装フローリングは白木、椅子は焦げ茶の木製に赤いビロード張り、壁は白とスタンダードでシックにまとめている。
アルコールを楽しむ
この店では、昼からアルコールを求める客も多いそうで、アペリティフにリキュール、食後酒、ウィスキー、それからもちろんビールと種類豊富に用意。中でもビールは「青島ゴールド」(38元)、「ステラ・アルトワ」(48元)、「ヒューガルデン」(48元)、「デュベル」(58元)などビール好きを唸らせる品揃えだ。
そして眠れない夜を持て余して訪れる人は、4種の「ホットチョコレート」(48元)で迎え撃つ。肌寒い夜には、これにラムを2~3滴垂らして飲むのがオススメ。小腹が空いているなら、ドリンクはいっそビールに切り替えて「トースト・バゲットの豚肉とフォアグラパテ添え」(37元)や「トリュフのフレンチ・フライ」(48元)を合わせて。デザートメニューからは「バナナクレープのヌテラ&アイスクリーム添え」(48元)がイチオシ。
窓際の席でもテラスでも、洋風の建物や行き交う人を望みながら、静かな夜を過ごせる店だ。
【INFO】
住所 進賢路222号
電話 6258-1620
営業時間 11時~24時半
ボヘミアン・カフェ
雑貨店やベーカリー、アートシアターにデザインオフィス、ヘアサロン…などなどオシャレな店が軒を連ねる安福路。華山路にぶつかる一角、広いテラス席を設けた半オープンスタイルの「マリエンバート・カフェ」には、役者やデザイナー、アーティストなど、どこにも属していないような雰囲気を持つ〝ボヘミアン〟な人々が日々集う。
天井には古い英字新聞が貼られ、道路に面した天井までの窓は、冬以外開け放ってある。テーブルのレイアウトは、一見するとバラバラとランダムに置いたようだが、スタッフの動きを見ると、すべての席を見渡しつつサービスを行き届かせるための配置だとわかる。
映画のような出会いに
ラップトップ片手にやってくる客の多くは、この店で考え事をしたいか、仕事の打ち合わせが目的のようだ。昼時には「ソーダ」(25元~)に「パニーニ」(35、38元)、午後なら「コーヒー」(20元~)、夕方からは豊富に揃えた「ベルギービール」をオーダーしている。コーヒーは2杯目から半額というから、どっしり腰を据えて過ごしたい時にもってこいだ。
「マリエンバート」といえば、1960年代のフランス映画『去年、マリエンバートで』が思い出される。一風変わった男女の出会いを描いた作品だが、このカフェなら映画のように不思議な出会いが待っているかも。
【INFO】
住所 武康路55号
電話 5404-2909
営業時間 10時~翌1時
~上海ジャピオン2014年10月17日号