お好み焼きと歩む
関西人に根強く愛される庶民の味・お好み焼き。現在では、小麦粉に具材を混ぜて焼く「関西風」、小麦粉を薄く伸ばした生地にそばと野菜を挟んだ「広島風」の他にも、「ネギ焼き」、「もんじゃ焼き」など種類も多岐にわたる。
「昔は駄菓子屋の片隅にある鉄板や屋台で、水で溶いた小麦粉を焼いて、ソースを付けて売っていたんです。上海で見かける煎餅みたいなものです。1枚1銭なので、『一銭洋食』なんて呼ばれていました。具材はキャベツやらネギやら、有り合わせのものでしたね。豚肉は高級品でしたから」
そう話すのは、東京の「ぼてぢゅう」で30年以上、お好み焼きを焼いてきた藤田語郎さん。40数年前に創業した頃は、大坂では家庭の味でも、東京では、まだまだ珍しい時代。朝から夜まで家族連れ、サラリーマン、OLたちが列を作っていたという。創業当時の値段は1枚50円程度、一番高いもので100円強。庶民にとっては少々高級品だった。
「お好み焼きの具材は、創業当初からそんなに変わっていません。ただ、お好み焼きの美味しさを追求したり、お客さんとやり取りする中で生まれたものも多いですよ。今ではすっかり定着していますが、お好み焼きにマヨネーズをつける食べ方もその1つです」
昭和中期のマヨネーズがそれほど普及していない時代、この食べ方を考案したのは「ぼてぢゅう燦」だった。当時から現在に至るまで、同店のマヨネーズはアメリカからの輸入品。決め手は甘味と酸味のバランスだったいう。
上海に来て3年半、藤田さんのやるべきことは変わらない。小麦粉と具材を混ぜ、鉄板にのせる。そして、手際よくひっくり返す。回数は4回。店名の「ぼてぢゅう」も、テコで「ぼて」っとひっくり返し、「ぢゅう」と焼くところからきている。
「お好み焼きに半熟卵を乗せたら『火が通ってないじゃないか!』なんて言われたこともありましたけどね。そういう文化の違いは確かにありますよ。でも基本は、水で溶いた小麦粉に、手元にある材料、自分の好きな材料を加えて焼くだけ。シンプルなものです」
案外、中国で生まれた煎餅はお好み焼きに姿を変え、再び中国に戻ってきたのかも知れない。
ぼてぢゅう燦
水城南路37号万科広場2階
TEL:6208-4564
営業時間:平日11時~15時、17時~24時
土・日11時~23時半
座席数:39席
メニュー:お好み焼き 32元~
三種ミックス月見焼 68元
もちチーズ焼 60元
~上海ジャピオン5月26日発行号より