東海に浮かぶ小さな島々
上海市では、川・海遊びといった水のレジャーがあまりない…それなら一歩市外へ足を延ばしてみよう! 市の南東に浮かぶ浙江省の舟山諸島には、「漁家楽」と呼ばれる漁村体験イベントが目白押し。「漁家楽」とは、海釣りや近辺の自然を満喫したり、海鮮料理を堪能したり、民宿に泊まったりして、漁村の生活を味わえるというもので、まさにこれからの季節にピッタリのレジャーだ。
今回取材で訪れるのは、東海に浮かぶ400以上の大小様々な島で構成された、最近上海で人気のスポット舟山諸島の1つ「嵊泗(sheng4si4)島」。上海市から直行便が通っており、バスとフェリーを乗り継ぎ3時間ほどで着く。
上海から3時間で到着
チケットは外国人の場合、4号線「南浦大橋」駅近くの長距離バスセンター「上海南浦大橋長途旅遊客運站」の窓口で直接買う必要がある。出発前日から購入が可能で、バスとフェリーの複合チケットで片道101元。7時半、8時40分、9時半、12時半発の4便を運行。現金のみに対応し、パスポートの提示をしなければいけないのでお忘れなく。
バスで1時間半ほど南下し、浙江省小洋山の「沈家湾客運碼頭」に着いたら、フェリーターミナルに入場し、チケットに記載された船便の入場ゲートからフェリーに乗り継ぐ。指定席に座って船に揺られること1時間。やっと、目的地「嵊泗島」の「李柱山客運大楼」に到着だ。では島に着いたところで、次ページから漁家楽の体験内容を紹介していこう。
島の交通手段に難あり
「嵊泗島」では、中国人向け団体ツアーが組まれているが、もちろん個人でこの島に行くことも可能。島の魅力は数多くあるものの、上海市での便利な生活に慣れ切っている我々にとって、離島での移動は本当に不便に感じる。
レンタサイクルや地下鉄がないため、フェリーターミナル「大柱山客運大楼」から宿までは、宿のオーナーが手配した車で送迎してもらうか、バス・タクシーで移動することになる。しかしバスは、1時間に1本しか運行していなかったり、宿泊先付近まで通っていなかったりすることが少なくない。またタクシーは、メーターを倒さない(そもそもメーターが付いていない)ので、運賃は運転手の言い値になり、上海市より割高感が否めないのが現状だ。
漁船に乗って置き網漁体験
この島での「漁家楽」では、実際に漁船に乗り置き網漁を体験できる「出海捕魚」にトライ。料金は体験場所や参加人数によって異なるが、1隻に2人乗船で400元、4人で500元…と、乗船人数が多いほど1人当たりの値段が安くなる。民宿のオーナーに申し込んでもらい、ほかの宿泊客と相乗りするのも◎。
救命ベストを身に着け、約10人が座れる漁船に乗り込む。5分ほど沖に向かって走り、漁師が海に網を投げていく。さらに待つこと10分、網を引き揚げとたくさんの魚介が網から出てきた。カニやエビなどの定番ものから、カサゴの一種「虎頭魚」という舟山特産の魚まで様々なものが入っていた。漁師によると、近年は漁業体験による乱獲で、大きな魚が獲れにくくなっているんだとか。確かに、獲れた魚はどれも小さい…。1時間で漁港に戻り、漁獲量に応じて十数元ほど払うと、魚をゲットできる。
海鮮尽くしの食事に舌鼓
獲った魚は、民宿に持ち帰って昼食にしてもらおう。1皿20元の調理代で、煮物や炒め物などの見事な海鮮料理に様変わり。カニやエビは蒸して、上海ガニと同じ要領で身を少しずつ取り出しながら食べていく。虎頭魚は固い骨が多く食べづらいが、淡泊な白身が濃厚醤油ダレによく合い白米が進む。
食事は民宿のほかに、リゾートマンションやビーチ周辺を中心に飲食店でも取れる。今回取材班が夜に訪れた串焼き店では、1人7~8本+焼き貝で100元と安くはなく、味付けが濃くタレの味しかしない…。魚介を存分に味わえるものの、バラエティの少なさと割高感は惜しい。
海、山、岬で大自然を満喫
次は観光に移ろう。冒頭でも述べたが、移動手段が基本的にタクシーになるため、交通費がかさむのが悩みの種だ…。
「大柱山客運大楼」がある島北西部には市街地があるが、そのほかは緑か車の通りがほとんどない道路が続くのみ。島の観光エリアは大きく分けてビーチ、山、岬。夏になれば海水浴が行われるビーチもあり、初夏の今は散歩をするのにピッタリだ。「大悲山」は島のほぼ中央に位置する最も標高が高い観光スポットで、島をほぼ360度グルッと見渡せる。
そのほか、島の北東に位置する岬「六井潭」では崖に沿って歩き進めるという、スリリングなひと時を過ごせるほか、天気がよければオレンジ色に染まる大海原を拝めるかもしれない。
船1時間で離島にもトライ
今回の取材は1泊だったため、ほかの島に足を運べなかったが、時間に余裕のある人は「枸杞島」や「嵊山島」にも行ってみてほしい。これらの島は「嵊泗島」からフェリーに乗って1時間で行ける。特に「嵊山島」には〝神秘の廃村〟と呼ばれる「後頭湾村」があり、緑が村を覆い尽くし、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』に出てきそうな風景が広がっていると言う。
民宿派?マンション派?
市に戻るフェリーは、朝は早くて8時20分、夜は遅くて18時の通常7便で、臨時でさらに3便が追加される場合もある。上海市までの往復で6時間掛かるため、最低1泊するのがオススメ。
宿は民宿とリゾートマンションの2タイプで、取材班が泊まったのは、民宿のオーナーが所有するリゾートマンションの一室。家族3~4人が利用するのにピッタリの広さで、誰にも邪魔されずにベランダから海を一望できる。天気のいい日は日の出や夕日を拝め、贅沢なひと時を過ごせること間違いなし。寝室にはクイーンベッドが1つあるほか、リビングにソファベッドになるソファ席、4人掛けテーブル、テレビなどが付く。なおキッチン・冷蔵庫はないので要注意。
食事は民宿or付近の飲食店
リゾートマンション内には飲食店や売店があり、徒歩5分圏内にも、前ページで紹介したような飲食店が点在。さらに今回のように、民宿オーナー経由でマンションに宿泊する場合、民宿で1人100~150元で食事をオーダーできる。民宿へは徒歩5~10分ほどで行ける場合が多いので、ほかの宿泊客と肩を並べて団らんするのも◎。2~3人の友人やカップルで行く場合であれば、民宿に泊まった方がお得。どの部屋もベランダから海を眺望できる。
「漁家楽」は、まだ運営者の裁量による部分が多い印象で苦労することが多かった。しかし、一味違った景色や海鮮を楽しみたいのであれば、ぜひ一度試してほしい。
~上海ジャピオン2018年5月25日発行号