専門諸分野に特化
上海の図書館と聞いて、誰もが最初に思い浮かべるのは、やはりココだろう。1952年に建てられたのは、南京西路×陝西南路だった。
58年には、総合的な情報研究や文献を提供する「上海科学技術情報研究所」が成立。そして96年、正式に一般市民への開放が始まり、〝中国十大図書館〟の1つとなった。
専門書の分野に強く、またその膨大な書籍・情報を利用するための検索システムも発達。上海市民にとって、なくてはならない図書館となっている。
パスポートを忘れずに
さて、図書館を利用するに当たり、まずは登録をしよう。手続きは、入口から左斜め前方の「办证处」で行う。
そのすぐ手前のパソコンに個人情報を入力、出てきた登録用紙とパスポート原本を持って受付に渡せばすぐに「読者証」を発行してくれる。
パスポートを忘れると登録できないので注意したい。閲覧のみなら無料、貸出を希望する場合は、デポジットが必要となる。
参考書類の貸出には1000元、それ以外の一般書籍なら100元で、市内のほとんどの公共図書館で使用できる「一卡通」を作れる。いずれも有効期限はなし。
膨大な日本語電子書籍
次に読みたい本を探してみよう。「辦証処」の横を通り過ぎると、パソコンが並んだスペースがある。
デバイス横の機器に、先ほど作ったカードを挿し込み、検索。もちろん日本語にも対応し、日本語の一般書籍のほか、電子書籍も豊富だ。
スタイリッシュ図書館
お次はこちら、7号線「錦綉路」駅から徒歩5分の「浦東図書館」。
浦東文化公園内に、2010年10月オープンしたばかり、できたてホヤホヤピカピカの1館だ。
特徴はなんと言ってもその巨大さ。蔵書数200万冊、閲覧席3000席、総面積約6万平方㍍と、中国国内でも最大規模だ。
各階の天井の高さに1~6階までの吹き抜け、トップライトと3拍子揃い、図書館特有の圧迫感が全く感じられない。
楽しみ方は人それぞれ
上海図書館と異なり、閲覧は登録不要。貸出のため「一卡通」を作るなら、入り口からまっすぐ奥へ進めば「办证处」だ。
ここには日本語書籍は置いていないが、とにかく蔵書数が多く、絵本や雑誌、芸術書など、言語を超えた書籍のあらゆる楽しみ方ができそうだ。
さらに6階のオーディオ・スペースでは、国内外の映画や紀行物、テレビドラマにドキュメンタリーのDVDも。試聴コーナーも充実。
貸出期間は、書籍が1度に5冊までで28日間、DVDやCD類は5枚までで14日間。閲覧スペースが館内のあちこちに設けられ、席探しにも困らない。
図書館の中に庭園?
最後にぜひ紹介したいのが、図書館中央に設けられた「空中花園」。ガラス張りのキューブが2本の通路に支えられ中空に浮かぶ様は、言葉で表現すればただただシュールだ。
空中花園の開放は春・秋のみなので、今回は断念。次の楽しみができたと思うことにしよう。
古き良き市民図書館
3館目の「黄浦区明復図書館」は、旧名を「盧湾区図書館」といい、2011年の盧湾区・黄浦区の合併により改名した。
建物は老上海の趣たっぷりな石庫門建築で、右で紹介した浦東図書館とは全く異なり〝古き良き市民図書館〟といったイメージ。
建物は1929年に竣工、その2年後に「中国科学者明復図書館」の名で、中国初の公共科学技術図書館として運営をスタート。94年には国家第一級図書館に選ばれ、名実ともに上海市を代表する図書館の1つとなった。
数学者・胡明復を讃える
歴史情緒溢れる門構えや、篆書体で書かれた館名が趣き深い。建物前には館名の由来となった数学博士・胡明復の銅像が置かれ、1階には彼の資料が展示される。
2階は科学技術関連書籍、3階は文学作品、最上階の4階は閲覧スペースを設ける。
書庫にはぎっしりと書棚が並び、書籍で溢れ返る。書棚と書棚の間を歩けば、学生の頃によく通った市民図書館が思い出される。少々手狭ではあるが、古い本の臭いにホッとする、昔懐かしい図書館だ。
温かみを感じる空間
資料室の中心の柱には、書籍用の小型エレベーター「ダムウェーター」が設置されている。
職員用の聞くと、来館者用の設備ではないにも関わらず丁寧に答えてくれた。
建物も人も温かい印象を受ける図書館。訪れる人は学生が多く、落ち着いた空間で自習できると評判だ。
おとぎ話の世界へワープ
最後に紹介するのは、メルヘンチックな外観が印象的な静安区の児童図書館。
2011年にできたばかりでまだ新しく、ヨーロッパ風の建築が可愛らしい。
近くを蘇州河が流れ、緑豊かな気持ちの良い歩道が続く。天気の良い日なら、ついでに付近を散策してみることをオススメする。
遊べるスペースもある
館内に足を踏み入れると、明るくポップな色が目に飛び込んでくる。1階は小さい子ども向けのスペースで、中国語や英語の、幼児向けの絵本が3000冊ほど置かれている。中央は開けており、子どもサイズの机と椅子が置かれ、保護者が子どもに絵本を読み聞かせている様子に気分もホンワカ。奥にはプラモデルや図書館周辺の立体模型なども展示する。
子どもが友達と一緒に絵本や展示物を見ている間、保護者同士で交流を図っているようだった。
貸し出しは16歳まで
階段を上がると、2階には小・中学生向けの書棚&閲覧スペースがある。
ただし、同館を含む児童図書館の貸出カードを作るのには年齢の制限があり、1歳~16歳限定。また、6歳以下の場合は保護者の同行が必要となる。
蔵書数は書籍が約2万冊、新聞や雑誌が200部ほど。国内外の小説に加え、思想、歴史、地理といった専門分野に関しても、比較的易しい内容のものをそろえている。
子どもの頃から本を読む習慣を身に付けるのにオススメの場所だ。
~上海ジャピオン2015年2月6日発行号