上海道路名の由来を探る

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省・都市名由来ルール

上海市内のさまざまな道路名は好き勝手に付けられているわけではなく、命名には一定のルールが存在する。

市内の道路名は、徐匯区や黄浦区など管轄区ごとに設けられている「建設和管理委員会」によって管理、決定がなされており、各委員会が道路名を決める際は、南北に走る道路の名前には中国の各省の名前を、東西に走る道路の名前には、中国の各市・鎮(鎮は町に相当する行政区分)の名前を付けるべしという〝南北路は省名、東西路は市名〟ルールに基づいている。

上海市内のほぼすべての道路でこのルールが適用されており、例えば黄浦区内で見ると、南北に走る道に「河南路」や「西蔵路」、「広西路」など国内の省名に基づいた名を、東西に走る道路に「北京路」や「南京路」など市名を付けている。また、長い道路の場合「●●北、中、南路」や「●●東、中、西路」、あるいは数字で「●●一、二、三路」と、1本の道を一定の長さで区切ることもある。

また、黄浦区から長寧区まで複数の区に環状に跨って走る「延安路」や「中山路」は、それぞれ陜西省と広東省にある市の名前から取ったもので、本来東西の道に当てはまる名だが、この2本は市の幹線道路に指定されており、区管轄外のため、南北東西ルールとは命名方法が異なる。

 

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各区にある独自ルール

これまで市内すべての区に共通するルールを見てきたが、次は長寧区や黄浦区など、市内16の各管轄区特有の命名ルールを探ってみよう。

先ほど、市内の道路名は国内の省・市、鎮などの名前から付けられるのが一般的と紹介したが、国内に22ある省のうち、どこの省の市名を付けるのか、区によってある程度住み分けがされている。例えば長寧区の道路は貴州省の市名が多く、「婁山関路」や「水城路」などがそれに当たる。ほかに浦東新区は山東省の市名から「崂山路」や「潍坊路」など、徐匯区は広西省の市名から「東安路」や「零陵路」などと命名。普陀区は陜西省に拠って「石泉路」や「漢陽路」を、閔行区は雲南省から「剣川路」や「東川路」、楊浦区は黒竜江・吉林・遼寧各省などの市名から「哈爾浜路」や「大連路」と言う名を冠している。

ただし命名の際に市や鎮名を参照する省は、区によって完全に分類されているわけではない。また、都市開発などによって道路を新たに建設した時には、嘉定区の「嘉前路」や「嘉好路」など区の名前から1文字と縁起のよい意味の1文字を組み合わせて、その区の発展を祈願した命名や、「魯班路」といった歴史上の人物、魯班の名を冠する命名など、さまざまなルールで名前が決定される。

次からは市内各区の命名オリジナルルールについて見ていこう。

 

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長寧区

金銀の名を冠した古北新区

日本人が数多く住んでいる古北・虹橋エリアがある長寧区。東は「江蘇路」駅や「交通大学」駅から、西は虹橋空港あたりまでをカバーする。

まず区の名前だが、これは区内を走る「長寧路」に由来し、「長寧」は四川省の「長寧県」が基になっている。つまり前ページで触れた〝東西市名由来〟に則って命名された道路名が、そのまま区の名前として採用されているのだ。

さて、古北エリアで注目すべき道路名は「伊犂路」駅より南の地帯を走る「黄金城道」や「紅宝石路」などだ。同エリアは、1980年代以降の後開発地域〝古北新区〟として、道路整備が進められた。経済発展を願って「瑪瑙(メノウ)」という鉱物など、金銀鉱石にちなんだ名前が付けられた。

 

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黄浦区

家名由来の道路名が点在

「外灘」や「豫園」、「上海博物館」など多くの観光地が集中する黄浦区。この区が長江から市内へと流れる黄浦江に面していることから名付けられた。

このエリア内を走る道路は、〝董家〟渡路や〝陸家〟浜路など家名に由来する。〝渡〟は「渡し場、渡船場」を指し、〝浜〟は「東西を流れる水路」を指す。「老西門」駅近くには「曹家街」、また「陸家浜」駅付近は「黄家闕路」が走る。さらに「豫園」という個人庭園や「老西門」駅、「小南門」駅という名前から、この一帯にかつて複数の資産家一家が居を構えていたことがわかる。また、前ページで紹介した「北京路」や「南京路」のほか、「天津路」や「九江路」など、全国の直轄市や各省の市名が数多く道路名として付けられているのが特徴。

 

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浦東新区

新道路が続々と整備

浦東新区という区名は、その名の通り「浦(黄浦江)の東に位置する新しい区」という意味。現在の浦東新区は、90年代に入り元南市区、黄浦区や楊浦区の一部地域が再編され誕生した。「陸家嘴」という家名にちなんだ地名があるのも、同エリアが元々黄浦区に属しており、同区の命名方法に基づくからだ。

浦東新区は今もなお都市開発が盛んで、新たに道路が整備され、その度に命名規則が設けられている。例えば金橋出口開発区では、「金蔵路」など南北に走る道路には「金」を使い、「桂橋路」のように東西には「橋」を使った名前を付けている。ほかにも国際貿易の重点区「外高橋保税区」では、国家とその首都名を組み合わせた「英倫路(英・ロンドン)」や「加楓路(加・オタワ)」などが存在する。

 

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徐匯区

開発で道路&道路名も変化

繁華街徐家匯が位置する徐匯区。この区名は、前述の家名命名規則と同様徐家に由来する。しかしこの徐家、おそらく1度は名前を聞いたことがあるだろう、明代末期の数学者、徐光啓のことを指す。彼の末裔がこのエリアに根を下ろし、自分たちの居住区を「徐家厍(厍は村落の意)」と呼んでいた。当時そこは「肇善浜」と「李樅涇(涇は川の名の意)」の合流地点であったことから「徐家匯(匯は集合地点の意)」となり、そこから「徐匯区」と付けられた。

同区は発展が著しく、都市開発に伴い道路整備が繰り返されてきた。それに合わせ名前も変更され「華山路」や「衡山路」など、国内の山の名前にちなんだものから、「天钥橋路」や「大木橋路」など、かつて同エリアに架かっていた橋に由来するものまでさまざまである。

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~上海ジャピオン2016年09月23日号

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