肉松大研究

日本人は苦手な味? 肉松

ローカルのパン屋やスーパーでよく見掛ける、茶色いフワフワの物体。これは「肉松(rou4 song1)」といって、豚肉や鶏肉を醤油や砂糖で炒めて水分を飛ばし、細かいフレーク状にした保存食だ。この調理法を使った料理は日本では「田麩(でんぶ)」と呼ばれ、鯛などの白身魚を使い、ピンク色に着色した「桜でんぶ」が有名。
中国では栄養満点な食品として、老人から幼児までに愛されるこの肉松。ところが、日本人は肉松を「甘ったるすぎる」、「ちょっと変な味」と思う人が多い。かく言う取材班も昔、肉松入りサンドイッチをかじった時に「う…」と思って以来、肉松を遠ざけていたうちの1人。味覚が近い中国人と日本人なのに、なぜこうも肉松に対する好みが分かれるのか?改めて検証してみよう。

そのまま食べるとおいしい!
まずは実物がないと始まらないということで、スーパーに走り肉松を購入。豚肉、鶏肉、幼児用と種類豊富な中で、今回は豚肉と鶏肉を買ってみた。
豚肉の肉松は濃い茶色で、開封すると、ポークジャーキーのような独特の甘辛い匂いがする。モフモフと柔らかい粉末をおそるおそる口に運ぶと…ん?おいしい!確かに甘いが、しつこい感じがしない。甘めの味付けのビーフジャーキーや、台湾ソーセージが好きな人は合いそうな味だ。一方の鶏肉の肉松は匂いが弱く、食感はフワフワというより、パリパリといった感じ。甘さは豚肉より強めと感じた。
実はそのまま食べるとおいしかった肉松。ではなぜ、前回はマズいと思ったのか…?その理由を次ページで考えてみよう。

街で見掛ける肉松料理は独特

日本では口にする機会の少ない肉松。中国で肉松を初めて食べた時、それはどんな料理だっただろうか?
中国で肉松を使った料理のレパートリーは、日本人からするとやや独特。特に肉松を〝スイーツ〟としてトッピングしたケーキやクッキーは、味以前に、頭が混乱してしまうかも。またパンの上や、サンドイッチの具で肉松と初めて出会った人も多いだろう。パン類の場合、肉松を使うと濃厚すぎる味付けになってしまう。
さらに肉松は「咸蛋黄」といったクセのある具材と一緒に調理されることもしばしば。ピータン系の発酵臭を放つ「咸蛋黄」と、豚肉特有の匂いがある肉松は、かなりチャレンジングな味わいだ。
もちろん、中国ではどれもとても人気のある料理で、これが好き! という人もいるだろうが、初めての肉松は、もっとシンプルに味わうことをオススメしたい。

炭水化物とベストマッチ

肉松をおいしくいただくには、味付けのない白米、饅頭、玉子などと一緒に食べ、肉松そのものの味を堪能するのがベスト。

白米には、ふりかけ感覚で肉松をサラサラと掛けていただく。白米の自然な甘さと、肉松の甘さがマッチ。肉松のショリショリ、パリパリとした食感がアクセントとなって、食が進むこと間違いなしだ。また同じく肉松の本場、中国台湾では、肉松を粥と一緒に食べたり、おにぎりの具として食べたりするのが定番。中国台湾の名物おにぎり「魯肉飯団」は、肉松のほかに甘い豚の角煮、シイタケなど中国らしい具がたっぷり詰まっている。

一方の玉子料理では、溶いた玉子に肉松を加えて焼くと、甘くスタミナがある玉子料理のできあがり。肉松のフワフワ感を楽しみたい人は、肉松を薄焼き玉子で巻いて食べても美味。

肉松は国境を越えて

 最後は、ネットで見付けた珍しい(?)肉松トッピングを試してみよう。

まずはヨーグルト…乳製品に肉松をまぶしたドリンクは、かのチンギス・ハーンが愛した健康食品だという。しかし、ヨーグルトの酸味の中に、時々ジョリッとくる肉松の臭み…栄養満点だろうが、これは決定的に合わないと感じた。

次に、パスタやサンドイッチなど洋食との組み合わせ。これが意外に合う!トマトやチーズ、バターなどがうまく肉松の甘みと臭みを中和し、肉松が料理にコクを与えている。炭水化物であれば、どの国の料理ともいけちゃうのだろうか?奥深きや肉松の味…次は赤飯やお好み焼きなどの日本料理にもトッピングしてみたい。

 

~上海ジャピオン2020年3月6日発行号

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