春節は上海博物館へ!②

景徳鎮の皿


美しい青が示す 女の邪悪な意志

 「もっと色が鮮やかなものが、私は欲しいの」
 万貴妃は度々、成化帝にそうねだった。わかったよ、もっと鮮やかなものを作らせよう――。
 明代の成化帝は、自分の妃である万貴妃に頭が上がらなかったと言われている。彼女が20歳も年上だったことに加え、嫉妬深くわがままで、他の妃たちが懐妊すると、それをどうにかして堕胎させるほどの人物だったからだ。
 そんな万貴妃の好みによって、景徳鎮で作られる陶磁器も変わっていく。この皿の青さも、こうして生み出された。美しいものを生み出す背景が、いつも美しいとは限らない。

写真:景徳鎮 穿孔?孔雀緑釉青花蓮魚紋盤(景徳鎮の皿)明成化(1465年~1487年)・陳器成氏寄贈
マラカイトグリーンと深い藍色が、見事な対比を成す。

【中国古代陶磁器館】
青銅器館と並び、本博物館中、特に充実した展示館である。
8000年にも及ぶ陶磁器の歴史の全貌が分かる。
特に景徳鎮の名器が充実している。

篆刻家・何震による名作印章


石に刻まれた文字から 
強固なる自信が溢れる


 最高の栄誉を勝ち取ったあなたに、最高の篆刻(てんこく)家である私が、印章を作って差し上げよう――。
 この印章の作者・何震(かしん)がそう言ったかどうかは想像するしかないが、この印章が、1595年に明朝の宮廷の試験で最高の成功を収めたある作家のために作られたことは事実である。
 下面に彫られた文字が、その作家の力量を称える内容である一方で、側面には何震の篆刻家としての自信とエネルギーを感じさせる鋭く明確な文字が刻まれている。印章を貰った作家とともに、何震もまた得意の絶頂にあったのだろうと思わせる。

写真:笑談間気吐霓虹(篆刻家・何震による名作印章) 
万歴31年(1604年)・何震作
赤が、印の下面の文字、黒が印の側面に刻まれた文字。

【中国歴代印璽館】
西周代から清代に及ぶ500余の印が展示されている。
それぞれが芸術品であると同時に歴史の証言者でもある。
書体、大きさ、デザインも多種多様。

10の展示館とカフェで過ごす1日


 上海博物館は、北京の故宮博物館と並ぶ中国有数の大規模な博物館だ。1952年に開館したが、1996年に人民広場に場所を移して、現在に至る。
 総床面積は3万8000平米に及び、1階から4階までに広がる展示場の中には、青銅器、陶磁器、書法、絵画、彫刻、印章、玉器、家具、貨幣、少数民族工芸の10の主な展示館がある。中でも、青銅器、陶磁器、書画のコレクションは他に類を見ない充実ぶりで知られている。
 空間は広く静かな雰囲気に包まれているため、ゆっくりと一つひとつの展示物を見ることができる。また、予備知識なしで行っても十分に理解できるように解説なども充実している。特に、外国人用に、日本語をはじめ各言語の解説機が用意されているのがうれしい(有料)。解説機を手に館内を回り、各展示館や主な展示物の前でそれぞれの解説を聞けば、さらに理解と興味が深まることは間違いない。
同館職員の孫峰さんによれば、年間の来館者は約100万人。そのうち外国人が20%を占め、その3分の1ほどが日本人だという。

 「日本人のお客さんには、特に書画と陶磁器を見てもらいたいです。王義之や傳山の書や、定窯(白磁)など、日本でもよく知られた作品を見つけることができます」
 各階でそういった名品をじっくり鑑賞し、途中、ゆったりとしたカフェでコーヒーブレイクも取れる。また、ミュージアムショップの品揃えも充実しているのでお土産探しも楽しめる。
 館内には、時も空間も超えた広大な中国が広がっている。春節休みの一日、この上海博物館で、悠久の歴史に思いを馳せてはいかがだろう。

【館内案内】
1階 中国古代青銅器館、中国古代彫刻館
2階 中国古代陶磁器館
3階 中国歴代絵画館、中国歴代書法館、中国歴代印璽館
4階 中国古代玉器館、中国歴代貨幣館、中国少数民族工芸館、中国明清家具館
(2階にカフェ、1階にミュージアムショップあり)

【TEL】6372-3500
【住所】人民大道201号(地下鉄人民広場駅そば)
【開館】9時~17時(入館は16時まで)
【料金】一般20元、学生5元、日本語解説機付60元(デポジットが必要)
【URL】上海博物館

~上海ジャピオン2月16日発行号より

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