最大の年間行事「春節」
旧暦の1月1日(今年は2月10日)は、
「春節chun1jie2(旧正月)」。
中国国内だけでなく、
シンガポールなど中華圏に住む人々にとって、
この日は最大の年間行事だ。
現代の日本では、正月といえど
仕事を休めなかったり、
また家族そろって過ごすのをあまり重視しないことも
まま見られるが、中国での考え方はまったく異なる。
春節が近づくと、人々はこぞって故郷へ戻り、
一族そろって正月を迎える。
そのため、交通は〝春運〟と呼ばれる
一大ラッシュ状態となり、
都市部では人手不足に悩む企業・店舗が激増。
家族という血のつながりを何よりも大切にする、
中華民族らしい風習だ。
料理で縁起をかつぐ
さて、家族が集まったところで何をするのかと言うと、
これが食事に次ぐ食事である。
とりわけ大晦日には、みんなで円卓を囲み
「年夜飯nian2ye4fan4」
と呼ばれる正月料理を食べる。
これは日本のおせち同様、
縁起をかつぐ品々で構成される。
例えば、魚は「年年有余
nian2nian2you3yu2
(年ごとに余裕が生まれる)」、
油菜(チンゲンサイ)や生菜(レタス)は
「有財you3cai2(財産がある)」に
「生財sheng1cai2(財産を産む)」など、
縁起のよい語句と字音が同じものを選ぶ。
そのほかにも、猪手(豚足)は
「摟銭耙子lou1qian2ba4zi
(お金をつかみ取る)」や、
意のままに伸びるもやしを
「万事如意wan4shi4ru2yi4
(万事望み通り運ぶように)」など、
音でなく外見から縁起をかついだものも。
今年の春節は手作りで
そしてこれこそ欠かせないという料理が、餃子だ。
餃子はいまや、お正月料理の代表格的存在だが、
清代まで使われていた貨幣
「銀錠(ぎんじょう)」に形が似ていることと、
「交子jiao1zi3(子宝に恵まれる)」
とかけたものという、Wご利益料理なのである。
中国東北地方では、お正月に必ず食べる料理で、
ちなみに、南部では
「年年高nian2nian2gao1
(年ごとに高くなる)」とかけ、
年糕(餅)を食べる。
中国で「餃子」と言うと、まず水餃子を指す。
日本で定番のスタイルである焼き餃子は
「鍋貼guo1tie1」と呼ばれ、
これは本来、食べ残した水餃子を、
翌朝焼いて食べることから生まれたと言われている。
最近では、中国台湾などでこの鍋貼が大ヒットし、
専門店も続々オープン、一気に一般的な料理となった。
しかし、そこで焼かれているのは、
けして残り物ではないのでご安心を。
餃子なくしては春節を過ごせない、
そんな国に暮らす私たち。
今年はぜひ中国伝統文化に倣って、
手作り餃子にトライしてみよう。
外国人向けスクール
今回、手作り餃子を教えてくれるのは、
「Chinese Cooking Workshop
(CCW)」という、
外国人向けの料理教室(写真①)。
中国料理店の元調理人や、現役シェフを講師に据え、
本格的な中華料理を教えている。
同校の特徴は、レッスンの1~2時間前に、
市場で新鮮な素材を仕入れてくること。
その仕入れに同行することもでき、
より家庭での実践を促してくれるのだ。
講師を務めるのは、5ツ星ホテル、
ザ・リッツ・カールトンで修行を積み、
昨年から同校で教えている、
マイク・ホアン先生(写真②)。
微笑みを絶やさず、一流の腕を持つと、
生徒からの評判も高い。
餃子は皮が命
今回手作り餃子に挑戦するのは、
上海歴5年の石川智美さん・
麗(うらら)ちゃん・煌(きらら)ちゃん親子…と、
味見係のお父さん。
初めての体験に、少々緊張気味のうららちゃん、
ワクワクが抑えられないきららちゃんは、
優しそうなマイク先生と対面し、
ほっとリラックスする。
エプロンを着け、手を洗ったら、
レッツ・クッキング!
まずは皮作りから。
お玉1杯半の小麦粉を取って、
小麦粉の山の中心と、そこから1㌢外側に
指で溝をつくる(写真③)。
こうすることで、外側の溝が堤防の役割を果たし、
水を注いでも漏れ出さないのだという。
丸くのばし、少しずつ水を加えて練っていく。
「皮から作るの、初めて!」。
うららちゃんが早速興奮の声を上げ、
「冷凍餃子の問題があってから、
家で手作りする人がすごく増えたんだよ」
と話す先生。
生地の練り具合は、
赤ちゃんの肌と同じくらいの感触・やわらかさに。
「うぐぐぐ…」。
カウンターが高いせいで、
力を入れにくいきららちゃんは、
先生の手を借りてやっと生地をこねる(写真④)。
そして、ついに生地が完成!
…が、子どもたちはカウンターも手も、
粉でベタベタに。
手に付いた粉を、スクレーパーで
こそげ取ってはまとめているのを見て、
「う、それはちょっと食べたくないなぁ…」
とつぶやくお父さん。
練り上げた生地を今度は細長くまとめ、
12等分にする(写真⑤)。
ラップで乾燥を防ぎながら、
1つずつ平たく伸ばしてはまたラップをかける。
乾燥は餃子の大敵。
ふわふわでモチモチにするには、
小マメにラップをかけることを怠ってはいけない。
先生とお母さんは、手慣れた手つきで、
美しい正円の皮を次々と作っていくが、
子どもたち2人には、これがなかなか至難の業。
「見てごらん、お母さんの上手だねぇ~」
と言うお父さんは、お母さんの笑顔を
ゲットすると同時に、
娘たちには睨まれてしまうのであった。
思い思いの包み方で
皮ができたら、お次は餡。
豚ひき肉と白菜に、ネギ、ショウガ、塩胡椒を加え、
そこに紹興酒と醤油、
ゴマ油を足して味を整える(写真⑥)。
「ネギきら~い」とぼやくきららちゃんに、お母さんが
「うちで作る餃子、いつもネギいっぱいよ」
と伝えると
「えっ! あんなおいしいのに、
ネギ入ってるの!? じゃあいっぱい入れる~♪」。
きららちゃんのくるくる変わる表情を見て、
先生の顔にも笑みがこぼれる。
先ほど作った皮に、今度は餡を包んでいく。
包み方は、基本、慶祝、南部バージョンの3種類。
基本はただ半分に折って、隙間なく閉じていくだけ。
東北地方の餃子は大体このタイプだ。
そして、「春節の餃子なら、こうして両端を折り返すんだよ」
と先生が慶祝バージョンを披露。
折り返す時に手を重ねて握るため、
その動作が「恭喜、恭喜gong1xi3」など、
新年の挨拶にぴったりであることによるという。
ちなみに、日本のスタイルは、水餃子には向かないとのこと。
お湯の中で広がってしまい、
餡が漏れやすいのだそうだ。
オリジナルの包み方
黙々と包んでいく3人(写真⑦)。
と、「見て! オリジナルの包み方!」と
うららちゃんが、ころんとかわいい餃子を
見せてくれた(写真⑧)。
先ほどの慶祝餃子の両端を、
反対向きにも折り返してみたそうだ。
先生が「発明したんだから、名前つけていいんだよ~」
と言うと、「袋みたいな形だから…袋餃子にする♪」
とゴキゲンなうららちゃん。
手作り餃子で一家団欒
包み終えた餃子を手に、
子どもたちは「自分で茹でる!」と駆け出す。
うららちゃんには先生が、
きららちゃんにはお母さんが付き添って、
いよいよ最終段階へ。
沸騰したら水を加える、を2回繰り返し、
ついに手作り餃子が完成(写真⑨)!
黒酢や醤油、辣醤をお好みで小皿に入れ…
というところで、お父さんも合流する。
「うららの作ったの、どれ?
きららのは?
おいしいな~さすがだな~♪」と、
娘たちにデレデレのお父さん。
ふわふわ、モチモチの餃子を囲み、
「今年の春節にも、みんなでまた作ろうね」
とのお母さんの言葉も耳に入らず、
一心不乱に餃子を頬張る子どもたちだった
(写真⑩)。
【info】
店名 Chinese Cooking Workshop
住所 東平路2号甲108-109室
電話 138-1774-3031(日本語可)
営業時間 10時~21時
URL www.chinesecookingworkshop.com
予算 グループレッスン1回150元/2時間、
プライベートレッスン1回500元/2時間(3人まで可)
~上海ジャピオン2013年2月8日号