~チベット・ラサ~
ロマンチックな旅?
うちでは、妻と旅する機会ってのはあんまりなくってね。
なのにあいつ、今回の夏休みに限って、
夫婦でロマンチックな旅がしたいとか言いやがった。
ロマンスカーで箱根とか言い出す前に、
思わず叫んじまったよ「チベットに行きたい!」。
…ま、若い頃、チベットで僧になりたいと思ってたからさ。
特に大学受験の時。
ロマンは天空の城にあり
ってなわけで、
やってきました上海駅。
オレは飛行機でパーっと行きたかったんだけど
あいつときたら、「密室で2日も一緒に過ごしたら、
きっと2人の絆も深まるわよ♪」だとさ。
しかし、車内は清潔で、
酸素濃度が低地と同じ80%をキープという配慮っぷりには頭が下がる。
高山病が一番の心配の種だったからなぁ。
ゴトゴト揺られるうちに、おお見えてきた、
これが世界の屋根か! 夏は雨や曇りが多いと聞いていたけど、
今日のこの晴れ渡る空に高くそびえる崑崙山脈、
広がる青蔵草原…これぞロマンだ。
いつしか列車は標高5072㍍にあるという
「タングラ駅」に差し掛かる。
なんだ、列車の旅もなかなかいいものだな。
五体投地で巡礼気分
快適な列車の旅を終え、ラサに到着すると、
すっかり夜は更けていた。
翌朝からさっそく市内観光に繰り出す。
あそこに見えるのは…ポタラ宮ではないか!
「まぁ、天空の城ね」。
ふむ…、いいこと言うじゃないか。
午後には世界遺産のジョカン寺へ。
各地から五体投地で巡礼にやってくる人々に混じって試みるも、
2回でダウン。普段運動不足の身体に、
急激な五体投地はリスクが高かったのか。
そんなオレに妻はやさしく手を差し伸べ、
その後のバコール街でもはしゃいでショッピングに狂っていた。
やはり女は強しだ。
3日目は山頂を走る車から、
美しいナムツォ湖を一望する。2人とも、
あまりの絶景に言葉もない。そして、
帰路は飛行機。「また、列車で旅したいわね♪」という妻に
「…うん」と返すので精いっぱいなオレだった。