民族訪ねて三千里~第33回

娘に姿を変えた犬 詩的な歌を交わす
プイ族は貴州省黔南県を中心に暮らす、
大規模な民族集団である。
複雑に入り組む山の斜面に
数十戸ずつの集落を形成し、
集落の間には水田が広がる。
高床式の杭上家屋か平屋に住み、
高床式の家は瓦葺きに床下を豚小屋にする。
客を迎える時や冠婚葬祭、
新築祝いには、「ウンラオ(酒歌)」を歌う。
酒を酌み交わし、
豆や漬物の「塩酸」を並べたテーブルを囲んで、
故事や祝い、哀悼など様々な内容が歌われるという。

1. プイ族の青年。
男性が民族衣装を纏うのは、
現在では祭事などの時のみだという
2. プイ族の家屋に立つ女性。
女性は民族衣装の帽子から靴まで、
繊細な刺繍を施す
3. 山の斜面に点在する集落

プイ族に伝わる昔話に、次のようなものがある。
「天涯孤独の青年・昆侖は、麦畑を耕して生活していた。
ある日、昆侖が畑で麦を食べていた
白馬を捕らえたところ、
白馬は昆侖を連れ海の中へ入って行った。
海の底の大きな屋敷に白馬の飼い主がいて、
麦の代金として財宝を渡そうとしたが昆侖は断り、
代わりに1匹の犬をもらった。
昆侖は犬を可愛がり、
以前のように畑を耕して生活した。
ある日昆侖が畑から帰ると、
家はきちんと整い、食事の用意がされていた。
翌日も、また翌日も食事は用意され、
不思議に思った昆侖がある日
出かけたふりをして家に戻ると、
犬は皮を脱いで美しく聡明な娘に姿を変え、
食事の支度をしていた。
昆侖が犬の皮を焼いてしまうと、
娘は元に戻ることができず、
昆侖の妻として幸せに暮らすのだった」。
プイ族の男女は、竹筒で糸電話を作り、
40~50㍍も離れて気持ちを伝え合う。
一種の歌垣だが、プイ族独特の恋愛形式として情緒深い。
この地を訪れたなら、谷を越え歌を交わす姿を探してみたい。

~上海ジャピオン03月16日号

 

最新号のデジタル版はこちらから




PAGE TOP