中国版ポロロッカとは?
中秋節は大逆流シーズン 日本人観光客も多数
日本ではまず見ることのできない川の逆流現象は、
浙江省海寧市・塩官にある
「銭塘江(チエンタンジアン)」
という名の川の河口で見られる。
上海からは上海南駅から乗る鈍行でも
片道1時間半+バス60分ほど。
十分日帰りで楽しめる。
上海から塩官までは直線で100km強
塩官地区では毎月旧暦1日~5日または
16日~20日の間に、中国版ポロロッカが発生。
そして、
1年のうちで最も大きな逆流が発生するのが、
旧暦8月の中秋節の頃なのだ。
これに合わせ、
今年は9月10日(土)~18日(日)まで、
「2011中国国際銭江観潮節」と題した
「逆流祭り」が開催される。
この期間は毎年中国各地の旅行者のほか、
日本人観光客も多数訪れるという。
テレビのニュースにも取り上げられるほど有名で、
中国版ポロロッカはこの町にとって、
町のシンボルとでも言うべき財産なのだ。
その証拠に、
中国で上から2番目のレベルとされる観光地
「国家AAAA級旅遊景区」に指定されている。
ちなみに、
最高クラスの「国家AAAAA級旅遊景区」には、
万里の長城や故宮博物院などが認定されている。
9月の「逆流祭り」のチラシ
逆流はなぜ起きる? 月餅食べて逆流観賞
だが、そもそもどうして
銭塘江では逆流が発生するのだろうか。
実は銭塘江の河口はらっぱ状に大きく開いており、
海流の影響を受けやすい地形になっている。
そして河口付近には、
点在する諸島群が海流を複雑にしている。
すると潮の満ち引きの関係で、
毎月決められた日にだけ逆流現象が発生するのである。
1年のうちでもっとも大きな大逆流が起きる中秋節は、
日本の十五夜にあたり、
中国では月餅を食べるならわしがある。
塩官では、
月餅を食べながら逆流を楽しむ
というのが昔からの風物詩。
ぜひ月餅持参で現場に挑みたい。
中国語ができれば、
左記サイトなども参考になるだろう。
というわけで、取材班は中秋節を待ちきれず、
月餅片手に塩官へ向かうのだった。
逆流現場へレッツゴー
まずは時刻を確認 早目の出発が安心
はやる気持ちを抑え、
取材班はまず逆流の起こる日時を確認。
「塩官観潮景区遊客服務中心」(0573-8761-7200)
では、逆流発生日と到達時刻を教えてくれるのだ。
到達時刻の30分前には現場となる
「塩官観潮勝地公園」に着くようにと
アドバイスをもらい、取材班は8月某日、
逆流時間に待ち合わせて
上海南駅から海寧駅へ向かった。
逆流到達時刻の3時間前、
できれば4時間前には上海を出発できると安心だ。
出発して1時間半近く経ち、海寧駅に到着。
時間に余裕があれば駅前のバスターミナルから
バスで「塩官」まで行けるのだが、
待ち時間なども含めると1時間ぐらいかかる。
取材班は列車の遅れで時間がなかったため、
駅前でタクシーを拾うことに。
「塩官観潮勝地公園」と言うと
運転手はすぐに理解し車を走らせた。
タクシーでの所要時間は30分ほどで、
料金は70元前後。
3~4人のグループで行くなら、
タクシーもオススメだ。
遊歩道に観客多数 即席の売店も出現
公園に到着すると、門をくぐって河口を目指す。
川と言っても川幅が猛烈に広く、
対岸はほぼ霞んでいる。
日本人が見ると、湖か海を眺めているような感覚だ。
川岸には護岸工事が施され、
川沿いに遊歩道が続いている。
遊歩道には、すでに多数の中国人観光客の姿。
目算で数百人はいるだろう。
場所によっては川べりの柵の前に
ぎっしりと人が集まっていた。
「観潮台」のわきでは小さな売店もあり、
ソフトドリンクやスナック菓子などを販売している。
売店のおばさんに声をかけると、
「逆流が見られるのは、地球上でたった2カ所だけ。
塩官はそのうちの1つなのよ」と得意そうに言う。
ネットで調べると必ずしもそうではないようだが、
中国版ポロロッカが
塩官市民たちの誇りであることは間違いなさそうだ。
「波が来た」 逆流は一瞬
この日の逆流到着予定時刻は、14時。
遊歩道にひしめく観光客たちは、
今か今かと下流の方へ目を向けている。
だが、相変わらず川面はベタなぎ状態だ。
13時45分頃、
下流の方から「ゴー!」という重低音が聞こえて来た。
「潮来了(波が来た)!」
とどこからともなく叫び声。
思わず下流に目をやったが、
あまり変化は見られない。
と思いきや、目をこらすと遠くの方で
水面が白く泡立っているようだ。
そこからが早かった。
2~3分もしないうちに重低音が轟音に変わり、
ザザーッという激しい水音を立てながら、
高さ1㍍ほどの波が川面を上流に向かって走っていく。
取材班も観光客と一緒に
「おおー!」という歓声を上げ、
写真撮影タイムに突入。
が、波は瞬く間に目の前を通り過ぎて行った。
自転車ほどのスピードで、
波を確認できたのは10秒足らずだったが、
今まで見たことのない奇妙な光景に思わず呆然。
正気に戻り、
去って行く波を追いかけ走り出したい
衝動に駆られたが、人ごみで動けず、
悔しい思いをする取材班だった。
とはいえ、群衆とともに歓声を上げ、
手を叩いて逆流鑑賞を存分に楽しんだ。
波が通り過ぎると観光客たちはすぐに帰っていき、
売店も店じまい。
でも、すぐに帰るのはもったいない。
公園の遊歩道沿いには、
いくつかの観光スポットがある。
実は、中国現代史の巨星とも言うべき歴史的人物も、
かつてこの地で逆流鑑賞を楽しんだ。
そんな彼らを記念して作られた
漢詩の石碑やあずまやのほか、
明の時代に建てられた「占鰲塔」という五重塔など、
歴史好きにはたまらないスポットが点在しているのだ。
この日の逆流も見事だったが、
中秋節にはさらに大きな逆流が見られる。
再びここへやってくると心に誓い、
取材班は逆流現場を後にしたのだった。
~上海ジャピオン9月02日号