眠らない街、銅川路水産市場
上海随一の海鮮集積地
銅川路市場を利用する
日本で魚市場といえば、関係者以外は中々入りづらいもの。
しかしここ上海には、一般の人も、いや一般の人こそ楽しめる、魚市場の使い方がある。
それが、「自分で吟味し、選んで、購入し、レストランに持ち込んで調理してもらい食す」というスタイルだ。
今回紹介するのは、市北西部にある上海随一の海鮮集積地「銅川路水産市場」。
24時間365日、休みなく稼動しており、いつ何時行っても、
乾物から鮮魚まで上海で売られるほとんどの海鮮を、ここで手に入れることができる。
そして多くの地元民がここを訪れ、卸店で海鮮を購入し近隣のレストランに持ち込んで調理してもらい、
食事を楽しんでいるのだ。
人気の理由は、価格と鮮度。
ホタテ1つが5元~、サーモンの刺身は約500㌘(30~40切れ)約30元、スッポン1匹約20元~。
また、活きたままの販売も多く、その鮮度はお墨付き。市場ならではの種類の多さもまた魅力だ。
食通を自負するなら、一度は使ってみたい海鮮市場。頼るは己の選眼力のみ。
いざ、市場へ!
呼び込みの声に連れられて
まずは数軒じっくり吟味
2号線「江蘇路」駅でタクシーに乗り込み、北上すること約15分。
蘭溪路に差し掛かる頃、海鮮を扱う店が、ポツポツと増え始め、
銅川路との交差点に着く頃には両側ともに海鮮の卸売り店、もしくは海鮮レストランの並びに変わった。
タクシーを降りれば、出迎えるのは呼び込みの声。
「想吃大閘蟹嘛!(上海蟹食べに来たのかい!)」。
目的は蟹ではないが、様子見にまず店頭の生簀を覗いた。
「言ってくれ。何でも出すぜ」
生簀でピチピチ鮮度抜群
会話が弾むネタの宝庫
覗いたのは、銅川路と蘭溪路の交差点に店舗を構える「十全海鮮水産行」。
福建省出身という若い青年の店だ。
「何がいい? レストランで食べるの?」矢継ぎ早に飛んでくる声に生返事をし、店頭の生簀を見渡す。
そこには、大小のシャコ、蟹、タニシ、カキにミル貝と、その数約20種類。
切り身のサーモンを除けば、ほぼ全て生きている。
「でかい!」、「気持ち悪い」、「活きがいい!」。
どんな面子で行っても、会話に困ることはきっとない。
人の顔よりもでかいロブスター、極太のミミズのような「ユムシ」、ひゅんひゅん飛び回るシャコ。
店員もサービス精神旺盛で、出し惜しみなくどんどん見せてくれる。
写真を撮りたいといえばロブスターを取り出しポーズまで。
店によっては撮影にお金を要求する店もあるので、注意が必要だ。
あらかた見終えた後、今日の目当ての品があるか、聞いてみる。
それが「龍頭魚」と「墨魚仔(イカの白子)」。
上海っ子オススメの2つだ。
店員にあるかと聞いて見れば「有!(あるよ)」と、歯切れのよい返事。
「他には? 言ってくれ! 何でも出すぜ!」と頼もしい回答に、早速用意してもらう。
なお、購入は、数単位ではなく量単位。「1斤」は500㌘、「半斤」は半分の250㌘だ。
購入したのは、「龍頭魚」を約900㌘(30元)、
「墨魚仔(イカの白子)」5つ(60元)、「蝦蛄(シャコ)」250㌘。
と、お金を払う前に、必須の値引き交渉。
「最便宜能?多少??(一番安くていくらにしてくれる?)」。
「これが限界!」との駆け引きを経て購入。
1カ所で全て買う方が値引きしてもらいやすいが、他の店も見てみるため、少量の購入に留めた。
一歩歩けば呼び止められ
蛇・タコ・スッポン…
奥に行くほどディープ!?
「蟹か! ホタテか!」一歩歩けば呼び込みに当たる。
そう形容してよいほど、どの店も客引きに熱心だ。
次に入った一軒は、広いだけあり種類も多い。
宇宙人のような顔をしたタコ、おどろおどろしい青い斑点のついた名も知らぬ魚…。
生き物好きなら、練り歩くだけで楽しめる。
ここではさらに、ホタテ5つ35元、刺身OKのサーモン約500㌘30元を購入した。
ほかに面白いものはないかと、銅川路の中心部に向かって歩く。
似た店のオンパレードだが、途中には日本語パッケージの冷凍すり身なども見かけた。
さらに奥に進むと、魚の生首やすっぽんが。
すっぽんは、なんと1匹あたり約20元~!
養殖ものだが、その試しやすい価格に、購入に踏み切る。
5年もので約40元。
こうして海鮮を手に、予約しておいた海鮮レストランへ向かった。
調理代金は10元/斤
調理方法は「オススメ」で
利用したのは、銅川路中央付近にある「新九龍塘」。
地元民から味の評価が高く、日本人の利用も比較的多い一軒だ。
入口は銅川路北側の、卸売り店の中。
階段で2階へ上り、フロントで予約を確認。
個室は最低消費400元なので、人数が多ければ是非利用したい。
同店では、海鮮は持ち込みのみ。
最初に持ち込んだ海鮮を店員に渡し、計量室で立会いながら計量してもらう。
調理料金は特別な調理法でない限り10元/斤だ。
調理法もこの時に伝えるのだが、中国語が苦手な場合は、思い切って店に任せよう。
「最推薦的(ズイトゥイジエンダ)」と伝えればOKだ。
前菜を選んでつまんでいると、料理が続々と運ばれてきた。
ウワサ通りの新・感覚!
次々と登場する料理
「お任せ」料理に驚き
入店が17時と早めの時間帯だったためか、料理は着席後10分ほどで出始めた。
まずは、シャコの塩胡椒炒め「蝦蛄椒塩」。
素揚げのシャコは香ばしい。
しかし、選んだものが小ぶりだったため、殻剥きに苦戦。
剥かずに食べれば口内にチクチク刺さり痛い。
しかし、自ら選んだ以上誰を責めることもできないのだ。
その時、彗星のごとくサーモンの刺身「三文魚生吃」が登場。
その瞬間、量の多さにテーブルで歓声が湧いた。
1斤でおよそ30~40切れほどもある。
5人で食べるには十分だ。
ホタテのニンニクソース「扇貝蒜茸」には、熱々のニンニクがたっぷりかかり、
ジュウジュウ音を立てているが、既に箸が追いつかない。
次々に箸を伸ばしていると、店員が大きな碗と共にやってきた。
龍頭魚のスープ「龍頭魚焼湯」だ。
話によれば、箸で掴めないほど柔らかく、その食感は溶けるようだとか。
いざ、レンゲで掬い、口に運ぶ。
するっと口に滑り込む感覚は、正にウワサ通り。
そして、いわゆる中華風茶碗蒸しとして出てきたのは、お任せ調理にしたイカの白子の「墨魚胆?胆」。
ゴロゴロ入ったイカの白子は、歯ごたえのあるホタテといった食感。
出汁が利き、あっという間に空になった。
シメは、スッポンスープ「甲魚焼湯」で。
スッポンの顔が覗いたりもしているが、それもご愛嬌。
出汁を活かしたあっさり味に、大きな碗を飲み干すほどの人気を博す。
最後、お会計。
ビール3本、お茶、冷菜4つを加えても、219元。
海鮮購入費200元少々を合わせても、5人で1人頭約80元。
選ぶ楽しみ、見る楽しみ、味わう楽しみ。
その全てがこの料金に収まっていた。
~上海ジャピオン12月11日号より