まだまだ少ないAED
上海で日系クリニックや最新設備の整った大学病院などに掛かっていると、日本との差は感じない。また市では最近、5G技術を用いて、専門医がリモートで診療しつつ搬送できる救急車が活躍。また、微信からAEDの設置場所が検索できるなど、ITを活用した医療体制は日本よりも整っている。
しかし、救急医療、特に私たちに関わる一次救命となると異なる点がある。それは、AEDの普及状況だ。日本は世界有数のAED保有国で、10万人当たり約400台の設置状況だが、上海では約10・8台と言われている。この差が問題となるのは、AEDは1秒でも早く使用する必要があるからだ。グラフの通り、心肺停止時にAEDを使用した電気ショックが生存退院率に大きく影響を与える。次のページでは、いざという時にAEDを使えるよう、その構造を説明しよう。
音声ガイドで簡単
AEDとは、自動体外式除細動器のことで、心室細動と呼ばれる、心臓が痙攣し身体に血液を送れない状態になった時に、自動で心電図の解析を行い、必要がある場合には電気ショックを与えて除細動を行う機器だ。AEDは一般市民が使用できるように、音声で操作方法を案内してくれ、簡単に使うことができる。この日本光電製のAEDは、フタを開けるだけで電源が入り、音声ガイドが始まる。そのガイドに従って、あらかじめ本体に接続されている電極パッドを、右鎖骨下と左側胸部に心臓を挟むイメージで貼る。すると、自動的に心電図の解析が始まるので、音声に従って身体から離れる。その後電気ショックが必要だとAED判断した場合には、自動で電気ショックに必要な充電が開始され、準備が整うとショックボタンを押すようにアナウンスがあるという流れだ。
人が倒れたらどうする!?
目の前で人が倒れたら、1秒でも早く心肺蘇生を開始し、合わせて、AEDを使用することが重要だ。その時に何か行動できるよう「救命処置講習会」に参加して、日頃から訓練を積み、勇気と技術を身に付けておくと安心。今回は、ボランティアグループ「TASUKE―助け―」の講習会に参加してきたので、その様子とともに、一次救命処置の流れを紹介しよう。
まず、目の前で人が倒れたら、車が行き交う場所でないかなどの安全の確認を行う。次に肩を叩いて意識を確認し、助けを呼ぶとともに、120番への通報とAEDを持ってきてもらうように依頼する。その後、10秒以内で呼吸の確認、わからない場合と呼吸がない場合には、すぐに胸骨圧迫を開始する。AEDが到着したあとの流れは、前ページの通りで、救急隊に引き継ぐまで心肺蘇生を継続する。
~上海ジャピオン2021年12月17日号