名門大学の海運博物館
上海交通大学は、理工系に強い伝統を持ち、
中国内の大学ランキングでは、
毎回ほぼ5位以内をキープしている名門校だ。
設立は1896年、中国人によって建立された、最古の大学である。
キャンパス内には、1918年に建てられた「老図書館」など、
歴史ある、優美な建築物が建ち並ぶ。
そんな同校の博物館は、
大学と海運会社「東方海外貨櫃航運公司」を興し、
大成功を収めた菫浩雲氏の寄付によって建立された。
建物は2階建てで、1階は中国の海運の歴史、
2階は菫浩雲氏に関する資料が展示される。
海を股にかける英雄たち
館内は、船を繋ぎ止めておくための杭「ボラード」を
さりげなく装飾に使うなど、遊び心がありつつも、上品な作りだ。
1階の展示スペースでは、紀元前3世紀頃、秦の始皇帝の命令を受け、
不老不死の薬を求めて出航し、日本に上陸したという伝説を持つ徐福や、
欧州の大航海時代に約70年も先じ、
東南アジアからアフリカまで、約30カ国も訪れた、
中国の英雄・鄭和に関する資料などが並び、来館者を海のロマンへと誘う。
各時代の船を精巧に再現した模型も数多くあるため、
模型ファンも楽しめるだろう。
2階は、菫浩雲氏の所有していた船の資料や、直筆の手紙などを展示し、
彼の成功への軌跡を辿る。
目を引くのが、氏の執務室と船の舳先を再現したスペースだ。
彼の執務室には、偉大な航海家にあやかりたいと、
鄭和が率いた「宝船」の模型が飾られていたという。
キャンパス散歩がてら訪れ、海に夢を託した男たちに思いを馳せよう。
【info】
上海交通大学徐匯校区
住所:華山路1954号(×広元西路)
TEL:6293-2403
TEL:6293-2363
開館時間:火~日、13時半~17時
地上は展示、地下は体験
中国で最も歴史の長い体育単科大学である上海体育学院。
武術を始め、各種スポーツのエキスパートたちを育成する学校である。
そのキャンパス内には、知る人ぞ知る、
同校ならではの品々を集めた「武術博物館」がある。
同館は、1階を展示フロアとし、中国の伝統的武器のほか、
武術の発展に関連した資料が順を追って展示されている。
地下には「科学から見る武術」をテーマに、
体験型アトラクションの数々を設置する。
無料とは思えないほどの充実した施設なのだ。
ブルース・リーと対決
館内に入ると、槍や大剣、鎌にこん棒など、
ズラリと並んだ中国伝統の武器が出迎える。
その横には、それを実際に使う様子をビデオで放映。
演武の美しさに思わずウットリとなることだろう。
また、像や絵画、解説パネル、蝋人形など、
多種多様な資料が年代順に展示されているため、
時代とともに発展してきた武術の歴史を楽しく学べる。
地下は、お待ちかねの体験ゾーンだ。
イチオシは、ブルース・リーとバーチャル対決できる、体感型ゲーム。
巨大モニター上に登場するブルース・リー相手に、
攻撃をかわしつつ、殴ったり蹴ったりすると、気分はもう映画俳優。
最高のシーンを生み出そう。
そのほか、防音室に入って、どこの方向から音がするかを
判断する聴力測定ゲームや、
発光する個所をすばやくタッチする瞬発力測定ゲーム、
拳法の型が並ぶ壁など、様々な趣向を凝らし、
来場者を飽きさせない。
一通り体験した後には、武術家の卵気分で、
すぐにでも修業を始めたくなっていること間違いなしだ。
【info】
上海体育学院
住所:長海路399号(×恒仁路)
電話:5125-3386
開館時間: 火・水・土、9時~16時
中国初の中医薬博物館
中医薬部や鍼灸部など、中医学に関する各専門学部を設け、
医学界に数多くの中医学専門家を輩出している、
上海中医薬大学。
海外との交流も積極的に行い、日本にも付属校を持つ。
毎年数百人の外国人学生が、実習などのため、
短期留学するという。
同校の博物館は、中国初の中医学博物館だ。
投資総額2400万元をかけたという、3階建ての施設に、
石器時代から近代に至るまで、
中医学5000年の歴史を辿る
資料約1万4000点が収められている。
中医薬文化の普及のため、一般公開を行っているが、
在学生が授業で利用もする、充実した資料が並ぶ。
骨で作った鍼にラッコ標本
館内には、日本語のイヤホンガイドを常備。
専門的な言葉が多く、
日本人にとってわかりづらい中医学の世界を、
簡潔に説明してくれる。
2階では、動物の骨で作られた鍼や、
鍼の打ち方を練習するための人形『明堂銅人』、
清代の手術器具に、禁煙に関する中医薬の処方箋など、
中医学の歴史に関する資料を展示する。
3階では、中医薬の原料の標本を陳列。
薬草のほか、ラッコやアナグマ、トラの手に鉱物など、
ありとあらゆるものを薬に用いることがわかる。
また、博物館の外には、人の顔を見ただけで、
病気をピタリと当てたという「医聖」張仲景や、
麻酔薬を考案し、外科手術で名を馳せた
『三国志』にも登場する華佗の像がそびえ立つ。
ぜひ、来館前に歴史を勉強していこう。
そのほか、売店ではイヌやネコなどの動物ツボ模型を販売する。
マニアックなアイテム好きは、
観覧のあとに立ち寄ることを忘れずに。
入場料は15元。
【info】
上海中医薬大学
住所: 浦東新区蔡倫路1200号(×金科路)
TEL:5132-2712
開館時間:火~日、9時~16時
故宮博物院の所蔵品
1950年代、上海の初等・中等教育教員育成のため
建立された上海師範大学。
同校の博物館では、北京の故宮博物院から
寄贈された所蔵品を多数展示する。
館内は、先史時代の土器から、唐代や清代など、
各時代に焼かれた陶磁器が並ぶ展示室と、
仏画や書を集めた展示室の2室に分かれている。
書画のエリアでは、古典『西遊記』の登場人物、
三蔵法師のモデルとなった玄奘三蔵が編纂したお経
『大般若波羅蜜多経』などを展示。
また、景徳鎮の壷や唐三彩の人形なども数多く展示されており、
世界に名高い中国陶器文化を堪能できる。
【info】
上海師範大学徐匯校区
住所:桂林路100号文苑楼4階(×沿河路)
TEL:6432-4672
開館時間:月~土、8時半~11時、13時半~16時半
喧騒を離れ佇む博物館
「北の北京大学、南の復旦大学」と称される、
伝統校・復旦大学。
観光客も多く訪れる、活気のある学校だ。
しかし、同校の博物館となると、在校生でも存在を知る人は少ない。
広大なキャンパスの西端の閑静な一角に、博物館はひっそりと佇む。
常設の展示は、中国のゲーム会社
「上海盛大網絡発展有限公司」が寄贈した、青銅器11点。
春秋戦国時代の楽器「曹侯乙甬鐘」や
西周時代の「三足銅鼎」などの品々が、
個別のガラスケースに収められている。
世間の喧騒に疲れたらここを訪れ、
古代を追走するのはいかがだろう。
【info】
復旦大学邯鄲校区
住所:邯鄲路200号(×国権路)
TEL:5566-4493
開館時間:火~日、9時~11時、13時半~16時
印刷術の発展を追う
包装デザインや書籍編集など、
出版・印刷関連技術を学ぶ大学の付属博物館。
展示物は、発祥から現代まで、中国の印刷技術発展を順に追う。
3000年以上前の殷朝で使われていた、
甲骨文字が刻まれた動物の骨や竹簡、
克明に発刊日が記載されている、
中国最古の印刷物『金剛般若波羅蜜教』など、
歴史のロマンを感じさせるものばかり。
注目は、元朝の王禎が発明した、回転型木活字印刷機だ。
中国発祥とされる印刷技術の発展を体感しよう。
【info】
上海出版印刷高等専科学校西校区
住所:水豊路100号(×舒蘭路)
TEL:6567-0228
開館時間:火・金、9時~11時半、14時~16時
ド迫力のクジラ標本
海洋大学は、100年以上の歴史を持つ、中国初の水産大学。
漁業養殖学などの研究に力を入れる同校の博物館は、
マッコウクジラの標本で有名である。
この標本は、浜に打ち上げられたクジラを
8日かけて処理を施し、作られた。
体長18・4㍍と巨大なため、2階建ての施設の中央に、
剥製標本と骨格標本が隣り合って展示されている。
その周りには、ウミガメや貝類の標本、
海洋生物の解説パネルなどの展示物が並ぶ。
実物大のクジラを見る、またとない機会だ。
【info】
上海海洋大学軍工路校区
住所:軍工路334号(×周家嘴路)
TEL:6571-0081
開館時間: 8時半~11時半、13時半~16時半
~上海ジャピオン2013年5月17日号