家族みんなで囲む食卓
新暦の正月が過ぎても、まだまだ活気づいたままの中国。それもそのはず、中国のお正月「春節」はこれからが本番!
春節を彩るのは、やはり食事。日本では、おせち料理といえば元旦に食べるもので(北海道を除く)、大晦日は年越しそばなわけだが、中国のおせち料理ともいうべき「年夜飯」は大晦日の夜、家族みんなで食卓を囲むのである。ちなみに「年夜飯」はほかに、囲炉、団年飯、団円飯とも呼ばれ、いずれも〝家族団欒の食事〟を意味するものだ。
縁起の良い語呂合わせ
具体的に食べるものと言えば、土地によって差異がある。しかしどの地方でも、必ずといっていいほど出されるのは「餃子」と「魚料理」。この2つを含め、年夜飯には日本人が「喜ぶ」にかけた昆布巻きや「めでたい」につながる鯛の料理を作るように、語呂にちなんだ由来がある。つまり、同音異義の食材や料理名でもって、新年にふさわしいとするのだ。では、代表的なものをいくつか紹介しよう。
料理で縁起を担ぐ
まず1つめが、餃子。これは清代まで使用されていた貨幣・銀錠(ぎんじょう)に形が似ていることと、発音が「交子(子宝に恵まれる)」に近いことから、金運・子宝を祈願したものだ。また魚料理は、魚の発音が中国語で「余」と同じであることから「年年有余(年々、ゆとりが出てくる)」につながるとされる。この言葉が書かれたポスターに、魚を抱いた子どもも一緒に描かれるのはこのためである。
そのほか、餅を表す中国語「年糕」も、発音が「年高」と同様で、「年年高」(年々高くなる)に通じることから、縁起が良いとされる。
中国の成語あれこれ
さらに、年夜飯に関わる縁起のいい「成語(熟語、ことわざ)」を3つほど。「五福臨門」は、政治史・政教を記した中国最古の歴史書「書経」に記される五福「長寿」、「富貴(財力)」、「康寧(健康で平穏)」、「好徳(善人で上品な人格)」、「善終(天命を以て終わる)」の5つの幸福が家に集まることを指す。また「三陽開泰」は太陽のうち1つが冬至に、2つめは旧暦12月、そして3つめが春節にやってきて、泰平をもたらすとの意。3つめの太陽が来ることで世の中が春を迎え、万物の生気に満ち溢れる。さらに「陽」は縁起のいい動物「羊」とも同音なので、ダブルでゲン担ぎ。
最後の「鴻運当頭」は「鴻」が「紅」と同音で、「紅運」、つまり大きな幸運が「当頭」=目前に迫る、ということになる。
静かな日本の正月と、真っ赤に彩られた街で盛大に祝う中国の春節。習慣にこそ違いはあれど、良い1年を過ごしたいという思いは同じ。今年の春節は上海で、中国風に過ごしてみてはいかが?
本来は四川料理だが、最もメジャーな魚料理と言っても過言ではないのが「水煮魚」。淡水魚が苦手な人は、ライギョや鯉が臭みが少ないのでオススメだ。
<作り方>
①魚はきれいに洗い、スライスする。
②塩と片栗粉、料理酒を混ぜ、魚を投入。しばらく浸しておく。
③鍋に10ccの油を引き、加熱。中火にして豆板醤、ショウガ、ニンニク、半量のサンショウを入れ、油に香りを付ける。
④水を適量入れ、魚と野菜も投入して強火にし、沸騰したら弱火に切り替え、魚以外のものを引き上げる。
⑤魚だけを入れた状態で再度強火にし、沸騰。魚肉が白味がかってきたら(約60秒)火を消し、④で引き上げた材料と残りのサンショウ、鷹の爪を入れる。
⑥鍋に残りの油を注ぎ入れ、いったん強火で煮てから火を消してできあがり♪
この「五福臨門」は、5種の材料を使う、皮を5色に色づけた餃子、また5つの味が感じられるなど、「5」を意識していればOKらしい。今回はその中でもシンプルで、お手軽なスープを紹介。材料は3種なので、調味料を合わせて5つの味とする…のかもしれない。
<作り方>
①挽き肉は脂身の少ないもの、油豆腐は均等なサイズ・形のものを用意する。
②挽き肉に塩コショウ、醤油で下味をつける。
③油豆腐に菜箸やナイフで穴を開け、挽き肉を詰める。
④鍋に750ccの水を入れ、火にかける。沸騰したらとんこつスープの素を入れる。
⑤スープの素が溶けたら、③の肉詰め油豆腐を鍋に投入。弱火で5~8分ほど煮る。
⑥続いて春雨を入れ、柔らかくなったら完成。
前頁で記したように「陽(yang2)」は「羊」と同音なので、羊を使った料理になる。材料からして、羊のダシがしっかり効いていそう。
<作り方>
①白菜は葉の部分だけを使う。ひと口大にちぎっておく。
②ダイコンをいちょう切りにし、ネギはみじん切り、ショウガは細切りに。
③羊肉は表面の脂を落とし、クルミ大のブロックに切る。
④鍋に水を入れて火にかけ、沸騰したら羊肉をくぐらせておく。
⑤中華鍋(フライパンでも可)に油を引いてネギとショウガを炒め、羊も合わせて約2分。
⑥ダイコンを入れ、ざっくりとかき混ぜながら水を足していく。
⑦沸騰したら火を弱めて約30分煮込み、白菜を入れてさらに5分。
⑧塩コショウで味を調え、最後にネギを散らす。
「鴻」は、同音の「紅」に置き換わり…ということで、トウガラシをこれでもか! と使った真っ赤な料理。剁椒はトウガラシに酒や塩を加えたもので、辛いものが好きな人は何につけてもうまい、と言う。
<作り方>
①金針菜とどんこをお湯で戻しておく。
②魚は購入時、お店で内蔵を抜いて処理しておいてもらう。自宅で再度洗って内側の黒い皮を取り除き、頭を落として身を開く。
③魚の頭に料理酒と蒸魚鼓油を均等に塗り、15分ほど置く。
④皿の上に金針菜とスライスしたショウガ、どんこを敷き、魚の頭を乗せる。
⑤剁椒と白酒を合わせてかき混ぜ、魚の頭の上に均等に乗せる。
⑥皿ごと水を張った鍋で10分蒸す。
⑦蒸し上がったら蒸魚鼓油をかけm、小ネギと熱した油大さじ1をかけて完成。
少しずつ上昇していく、を意味する「歩歩高昇」。スペアリブは関節で切った肉なので「春〝節〟」に欠かせない素材とされている。また調味料が少しずつ増えていくことから、成語にも掛けているとわかる。
<作り方>
①肉はよく洗い、いったん熱湯に浸して血抜きをした後、布巾に上げて水気を切っておく。
②中華鍋を熱し、ニンニクを炒める。
③スペアリブを鍋に入れ、表面がこんがりきつね色になるまで炒める。
④酒、米酢、砂糖、醤油、出汁を混ぜ、鍋に投入。とろ火で30分ほど煮詰める。
⑤肉が焦げ付かないよう注意しながら、水気がなくなるぎりぎりまで煮詰める。
⑥水気がすっかり飛んだらできあがり。好みで調味料に片栗粉を加えたり、米酢をリンゴ酢に変えてもOK。
家族団欒や再会を意味する「団団圓圓」という言葉。家族が一堂に会する年夜飯にぴったりのネーミングだ。漢民族では、フナと魚のすり身を使ったメニューが伝統のようだが、現在は〝丸いもの〟で代用することも多い。今回は最後の一品ということもあり、デザートでアレンジしてみよう。
<作り方>
①カボチャの皮を取り去り、ほっくり茹でておく。
②白玉粉を水で溶き、3つに分ける。1つは白いまま、1つは紫芋粉を混ぜ、もう1つにカボチャを混ぜ込む。
③沸騰したお湯で白玉を茹でる。
④器に酒酿を入れ、白玉を浮かべる。
⑤お好みでクコの実や干したキンモクセイの花をトッピングすると華やかに。また白玉の中に黒ゴマ餡を入れるとおいしい。