オススメポイント

中国の著名な文学家である銭鐘書の夫人・楊絳が、家族3人の思い出を振り返るように綴った作品です。彼らは富も名声も求めません。しかし、彼らのように温かく、質素な生活をしていても、激動の時代、社会の圧力に耐えねばなりませんでした。そのような境遇にあっても、彼らは学に励み、平凡であることを諦めず、日々の生活を送っていきます。

作者・楊絳の書く文章はとても淡々としていますが、彼ら3人が経験する出会いと別れ、夫婦、家族愛が詰まった人生の物語に、思わず涙してしまいます。

1997年に最愛の娘・銭瑗を亡くし、翌98年に夫の銭鐘書と死に別れた楊絳は、その4年後、彼女が92歳の年に、彼らとの家族生活の記録を書き留め始めました。2部構成になった同書は、第1部に家族3人が助け合って生きていた最後の数年の思い出を、第2部には35年に夫と海を渡った英国留学から、夫を病床で看取るまでの63年間の歴史を書いています。

作者が、夫、娘と過ごした、思い出と愛の詰まった生活回想録です。

～上海ジャピオン２０１４年５月９日号