食道をゆく 第11回 麻婆豆腐

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マーボードウフ
麻婆豆腐
~四川省成都市~

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本場の麻婆豆腐は日本のものよりも花椒がよく効いており、ピリリと辛い

あばたもえくぼの美人妻
夫の死を乗り越えて

 四川料理の代表格とも言える「麻婆豆腐」。
ひき肉と豆腐を唐辛子や花椒と一緒に炒めたピリ辛の味が魅力のこの料理には、
ある感動的なエピソードが隠されていた――。
 時は19世紀、清朝10代皇帝・同治帝の治世、
今の四川省成都市に巧巧(チャオチャオ)という女性が住んでいた。
彼女の顔には痘痕(あばた)があったが愛嬌よく、
夫と2人で決して豊かではないが幸せに暮らしていた。
 しかし、ある日夫が事故で亡くなってしまい、
悲しみに打ちひしがれた巧巧は、貧しい暮らしを送ることに。
そんな彼女を見かねた生前巧巧の夫と一緒に働いていた男が、
同僚たちと毎日食材を持ち寄り、昼ご飯を作ってもらうようお願いしたのだ。
余った食材は彼女にあげ、さらに幾ばくかの調理費を渡した。
家の両隣が肉屋と豆腐屋だったため、巧巧はよく豆腐と肉を唐辛子と一緒に炒めたものを彼らに提供。
その美味しさが評判を呼び、ついに小さな食堂を開いたのだ。
商売は繁盛し、料理は「辣豆腐」という名で広まり、成都の名物料理となった。

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三国志ファンには見逃せない名所・諸葛孔明を祀る武候祠

 そして巧巧がこの世を去った時、人々は彼女の料理に敬意を込めて、
「山椒の痺れるような辛味」と痘痕(中国語で「麻子」)の2つの意味をもつ「麻」、
彼女に対する尊称「婆」(中国語で「妻」の意味)をとり、「麻婆豆腐」と名前をつけたのだった。
今でも四川の家庭料理として8元程で食べられている。
 麻婆豆腐発祥の地・成都には、三国志ゆかりの名所など見所も盛りだくさん。
巧巧の物語に思いを馳せつつ、花椒の効いた本場の麻婆豆腐を味わおう。

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【アクセス】
①上海浦東空港から成都まで飛行機で約3時間
②上海駅または上海南駅から空調普通快速に乗り、成都駅まで。約35時間、257元(硬座)~

~上海ジャピオン10月30日号より

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