冷たいすい~つが食べたい!

冷たいすい~つが食べたい!


暑くて仕方ないこの季節も、見方を変えれば魅力が倍増
今だからこそ美味い! そんな冷たいスイーツを
デザート食べ歩きマニアのフリーライター岡林かおりがご案内


【MILANO】

食べ歩きの日々
また食べたいものを

私は日本にいた頃から、夏場は冷蔵庫にアイスやシャーベットを欠かさなかった。火照った体を一気に冷却してくれるその快感。それが忘れられないのだ。
 そう、冷たいスイーツは、暑ければ暑いほどその美味しさを増す。そう考えている私にとって、過酷な上海の夏は決して嫌なものではない。
 いまや梅雨も明け、本格的な夏の到来も間近。毎日どこかで登場している最新スイーツをターゲットに、私はここ数週間精力的に食べ歩きを展開している。
今回は、ここ最近食したものの中から、「また食べたい!」と思えたお気に入りのスイーツを紹介しようと思う。

意外な組み合わせ
チョコ&唐辛子

昨年あたりから、イタリアで意外な組み合わせのアイスクリームが流行っているという。中でも特にポピュラーなのがチョコレートのアイスと唐辛子を組み合わせた「チョコレート・チリ」だ。
 浦東にあるイタリアンレストラン「MILANO」に足を運んだとき、私は偶然にもそのアイスを発見した。それも、イタリア人シェフ自身が作る、新鮮な手作りアイスと聞けば、頼まない理由はない。
 しかし、ここで正直に言っておく。最初のひと口目は、予想よりも唐辛子の味はしないと思っていたほうがいいだろう。むしろ「本当に唐辛子入ってるの?」と拍子抜けするかもしれない。しかし、これはトリックだ。拍子抜けしている間に、チクチクとした特有の刺激が一気に喉元を襲う。
 「あ、なんか来たかも」なんてのん気に構えていると、喉の奥はあっという間に逃れられない刺激に占領される。
 水を頼りながら少しずつ食すか、それとも勢いに任せて一気に完食を目指すか。さぁどう食べる?

【MILANO】
TEL 3877-0885
住所 浦東新区梅花路(×芳甸路)
営業 11時半~21時半

夏スイーツの王様!カキ氷

【小城故事】
方程式は成り立つか
好き+好き=大好き?

1+1=2だからと言って、好きなもの+好きなものが、大好きなものになるとは限らない。
 しかしある日「小城故事」で、まさにその方程式になぞらえたデザートを発見した。それが、カキ氷+プリンの「布丁氷」だ。
 メニューを目にしたときは「まさかぁ…」と思わず不敵な笑みがこぼれた。しかし、このメニューはアリなのか? との想いが拭えず、好奇心に駆られて注文することに。
 そして出てきたのがこれ。予想通りに摩訶不思議なビジュアルに、方程式はやはり通用しないのか? との思いが高まった。
どう食すのかわからないまま、とりあえず小皿にカキ氷とプリンを少しずつ取り分け、セットで付いてきた練乳とカラメルソースを適当に掛ける。スプーンでシャクシャクと混ぜ合わせ、まずひと口。
「お。方程式してやったり!」
私の思い描く味覚と、現実との間には、気持ちのいい裏切りがあった。これから先、プリンをプリンだけで食べることに満足できないかも知れない。

【小城故事 淮海店】
TEL 6431-8027
住所 淮海中路1414号1階(×衡山路)
営業 11時~翌4時


【香樟花園時尚厨房】

そびえ立つ金の山が
みるみる体温を奪っていく

女性とは言え、山盛りに無性に惹かれるときがある。「香樟花園時尚厨房」には、そんな欲求を余すことなく満たしてくれるカキ氷が存在する。それが、この「芒果冰沙」だ。
 写真からも充分伝わるこの高さ。「まんが日本昔ばなし」で度々出てくる、目を見張るような高さに盛られたごはんを覚えているだろうか? そのくらいのインパクトを放っている。さらにポイントは、大ぶりにカットされたゴロゴロのマンゴーが、びっしり敷き詰められたお得感。
 あまりの大きさに、最初は誰もが戸惑うだろう。しかし、溶けることに焦りを感じる必要はない。というのも、カキ氷を支えているのは、まさに氷そのもの。いつまでも冷たい状態を保ってくれる頼もしい脇役がいるのだ。
マンゴーは、たっぷり甘みを凝縮した完熟のもの。のってりとしたその甘さは、さらさらの氷が爽やかに緩和。
迫力のカキ氷だけに、食べ終わるころにはすっかり体が冷える。日中の暑い時間に頂くことをオススメする。

【香樟花園時尚厨房】
TEL 6433-4385
住所 徐匯区衡山路2号(×桃江路)
営業 10時~翌1時

意外性に富む中華



【満記甜品】

するりと交わされ
掴めない歯がゆさを

中華スイーツには、日本では見ることのできない意外性があるので私は大好きだ。
 ある日、香港スイーツのチェーン店「満記甜品」で見た「白雪黒珍珠」。メニュー表の写真からも伝わるそのインパクトに、私は釘付けになった。半透明のゼリー状の物体に包まれた黒い粒粒がたっぷり…。これはまさか、蛙の卵!?
 涼しげなガラスの器の上は、蛙の卵(もどき)が半分も占領し、とびきりの存在感を放っていた。一抹の不安を感じながらも、そろりとスプーンを差し入れ、いざ口内へ。
 蛙の卵だと思っていたものは、実際には周囲を果肉に包まれた果物の種で、ちょうど黒ゴマほどの大きさ。どんな味がするのかと、噛もうとしても歯の間をするりするりと交わすばかりでなかなか捕まえられない! そんなジレンマに身もだえしながらついに捕らえたその瞬間、「プチッ」。弾けたぁ~! 
内側からこみ上げる快感に、病み付きになったのは言うまでもない。

【満記甜品 星遊城店】
TEL 6161-9731
住所 天鑰橋路580号1階
(×斜土路)
営業 10時~22時(平日)
10時~23時(土日・祝日)


【九龍氷室】

会えないほどに
恋しく思ふ

日本で何度か目にした「豆腐花」。結局1度も口にすることなく上海に来ることになった。あれから数カ月、方々を探してみたが思うように出会えない。探す気も薄れかけていたとき、ようやく巡り合えたのが、この目にも鮮やかな「鮮雜果豆腐花」。
小さなスプーンを深めに入れ、豆腐とフルーツとシロップを一気にすくいそっと口に運ぶ。杏仁豆腐のような豆腐を想像していたが、実際には味も食感もまさに絹ごし豆腐そのもの。つるりとした豆腐ののど越しと、口を満たす甘いシロップ、そしてフルーツの様々な味と食感が同時に五感を刺激する。
今度友人を案内しよう。心なしか得意になりながら、あっという間に完食と相成った。

【九龍氷室 総店】
TEL 6218-3301
住所 奉賢路48号(×石門二路)営業 10時~24時(日~木)


【海老亀】

サディスティック
強烈な苦味に悶える

亀の甲羅を煮出し、漢方薬で配合した亀ゼリー(妍??苓膏)。デザートにあるまじき黒さと苦味だが、ぷるんとした食感に心惹かれる一品である。
 それにしても、「海老亀」の亀ゼリーは他に類を見ないほど苦い。
 デザートを食べるのに、美容や健康の効果を期待するのは邪道だと考える私にとって、このゼリーを食べる理由はただひとつ。「限界にチャレンジ」である。
 初めて食べたあの日から、何度か足を運んでみるものの、未だに完食には至っていない。シロップを掛けるも、舌にしつこく絡む苦味を克服できずにいるのだ。
 「挑戦」のために、また食すつもりである。

【海老亀】
TEL 5383-9997
住所 雁蕩路41号‐2(×淮海中路)
営業 10時半~23時

~上海ジャピオン7月27日発行号より

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