今日は勤労感謝の日!
11月23日は「勤労感謝の日」。でもそもそも働くってどういうこと? そこでジャピオンでは、親子3組に協力依頼し、子どもたちの職場訪問を実施! 普段見ることのないお父さんやお母さんの働く姿を見学してもらった。
ありがとうの気持ち
心いっぱいに広がる
「休みの日は、いつも一緒にインラインスケートで遊んでくれる。私より上手いよ!」
小学5年生になる明石沙弥ちゃん(10)に、普段のお父さんについて聞いたらこんな答えが返ってきた。
そんなお父さんの廣司さんは、空気圧縮機などを製造する「神鋼圧縮機製造(上海)有限公司」で、設計・品質・部品調達と、3部門も管理している凄腕パパだ。
明石沙弥ちゃんと、お父さんの廣司さん
兵庫県出身で普段は関西弁が飛び出す
「空気圧縮機って何?」と沙弥ちゃんが聞くと、廣司さんは「空気に力を加えて圧縮して…」と言いかけて「あ、えっとね、空気をギュギューっと小さくして、ポッと出す。そんな機械だよ」と言い直した。それでもキョトンとしている沙弥ちゃん。「じゃ工場に行ってみようか!」見た方が早い! というわけですぐさま工場へ移動した。
歩いて3分。着いたのは、高ーい天井に大きな機械がズラリと並んだ製造工場。目を丸くして天井を仰ぐ沙弥ちゃんを横目に、お父さんは早くも「これがね…」と解説をスタート。沙弥ちゃんも、「へーっ」と声を上げながら、お父さんの言葉に興味深々。ふたりは夢中でぐんぐん先を急ぐ。終始お父さんの横にぴたりとついて必死にメモを取る沙弥ちゃんは、さながら記者さんといったところだ。
実は、以前から娘に自分の仕事のことを知ってもらいたいと思っていたという廣司さん。しかし、実際にこうして見学に来るとなると「やっぱりちょっと照れますね」と取材スタッフに照れた笑顔を見せた。
今回、初めてお父さんの会社を訪問したという沙弥ちゃん。1日の最後に書いてもらった感想文には、こう書いてあった。
「〝働いてくれてありがとう〟という気持ちは前からあったけど、でもこうして見学して、改めて〝働いてくれてありがとう〟という気持ちがいっぱいに広がりました」
そして文末には、「お礼を言う代わりに、何かお父さんの役に立ちたい」と、しっかり者の彼女らしいひと言で締め括られていた。
(移動中もメモを取るのを忘れない)
お父さんはピアノ調律師!
音がシャキっとしない?
続いては、インターネットの仕組み解明に全力を注いでいるという、小学4年生の亀田都和(とわ)くん(10)が主人公。
お父さんの勇人さんは、ピアノ販売や音楽教室の経営などを手掛ける「増田貿易・楽器有限会社」の社長さんで、ピアノ調律師の中でも熟練の技術者だけに与えられる〝コンサートチューナー〟でもある。今回都和くんが体験するのは、そんな調律の仕事だ。
まずは、良い音と悪い音の違いからレクチャー。「ほら、この音聴いてごらん。ポワ~ンって聴こえるだろ? 調律でこの音をシャキっとさせるんだよ。ポーンってな」と勇人さん。
とは言え、音を説明するのはなかなか難しい。少しでも都和くんがわかりやすようにと、「ほら、この音はニィア~って猫が鳴いているみたいに聴こえるね。そしてこれは、パンツのゴムが伸びたみたいな音だろ?」と、ユニークな例え話が続く。それを聞いた都和くんは「パンツのゴム~!?」と大爆笑。
しかし、いざ調律体験がスタートすると空気は一変。
「まずこのチューニングハンマーをしっかり持って。そしたら、音を聴きながら少しずつハンマーを回す」
見よう見まねでやってみる都和くんだが、なかなか上手くいかない。それを見て「ハンマーを動かすときは必ず鍵盤を叩いて! 叩いて回す、叩いて回す、この手順。ね? わかる?」と、勇人さんも必死だ。
しかし都和くんも負けてはいない。幼い頃から音楽に親しんできただけに、音にはすこぶる敏感なのだ。鍵盤をポーンと叩いては「う~ん、この音じゃない」、また叩いては「まだふにゃ~ってしてるんだよなぁ…」と、プロ顔負けのこだわりぶり。
しばらくして「お、今の音いいねぇ」とお父さんのOKが!たったひとつの音を合わせるまでに要した時間は、実に20分あまり。ちなみに、ピアノの鍵盤は全部で88本。気が遠くなりそうなので、今回の体験はとりあえずここまでと相成った。
模型で仕組みをお勉強!
続いては、音が出る仕組みのお勉強。家庭で良く見かけるタイプのアップライトピアノと、音楽室にあるような大きなグランドピアノの鍵盤の構造模型を持ってきた。
それを見せながら「ひとつの鍵盤に全部で40もの部品が使われているんだよ」と勇人さん。複雑な模型を前に、とにかく〝仕組み〟が知りたい都和くんは目を輝かせた。
「グランドピアノだと、1秒間に14回連打ができるけど、アップライトだと7回しかできないんだよ」との勇人さんの説明にも、「初めて知った!」と目を丸くする都和くん。途中、お父さんが接客のために席を外したのだが、その間も都和くんはひとり黙々と仕組みの研究を続けるのであった。
最後に書いてもらった感想文には、以前から調律を間近で見てきた都和くんらしいこんな感想が。
「ちょうりつって、ハンマーでちょうせつするだけだと思っていたけど、音色とかちょうせつのし組みとか、わかんないことばっかでした。お父さんいつも大へんだ!」
そしてお父さんを見つめながら、「調律ができるようになったらパパを手伝う!」と、たくましく言い切った。
(亀田勇人さんと都和くん 都和くんは5歳からピアノを習っている)
お母さんの仕事も体験!
ネイルアートってなぁに?
最後にお邪魔したのは、自宅の一室を開放してネイルサロンを開いている後藤さん宅。映画撮影が趣味のお兄ちゃん淳くん(9歳)は、脚本からセリフまでをこなす、ご近所でもちょっと話題の小学3年生。弟の脩くん(5歳)は、甘え盛りの幼稚園年中さんだ。
仕事場が自宅とは言え、主な営業時間はふたりが学校に行っている間。そのため、兄弟が仕事の様子をじっくり見る機会は少ない。「どんなお仕事かわかる?」と聞くと淳くんは「う~ん。よくわかんない」とコメント。脩くんも小首を傾げてはにかんだ。
それを見たお母さん。「じゃあ、まずはチップに絵を描いてみようか」とテキパキと準備を開始。細い筆で花のイラストを描く様子を見せた。「こんな小さいところに描いてるの?」とびっくり仰天の淳くん。「僕は一番大きい爪にして!」と戸惑いを隠せない。
しかしさすがはお絵かきが得意という淳くん。初めてとは思えぬ出来栄え! その頃脩くんはと言えば、横でテクスチャを絵の具のようにニュルっと出して気ままにペインティング中。それに気付くやいなや「出しすぎ! 出しすぎ!」とお母さんは大慌て。
描き方がわかったら、アイさんをお客さん役にして、爪の形を整えるヤスリかけから体験。スポンジのように細かなヤスリで爪の表面をこすると、あっという間にピカピカに。「えっ~!? なんで光るの? ちょっと僕の爪にもやってみて!」と淳くんは好奇心満々。それを見ていた脩くんも「ねぇねぇ、何やってんの?」と覗き込む。
ひと通りネイルアートの流れを体験したおふたり。「どうだった?」と聞くと、「結構難しい! 大変だなーと思った」と、お母さんに尊敬の眼差しを向けるのであった。
家事は任せて!
働くお母さんだけでなく、普段のお母さんの仕事も体験しよう! ということで、まずは淳くんにとってこれが初挑戦となる食器洗いからスタート。洗剤の感触に「ヌルヌルしてて気持ち悪い~」としかめっ面。そんな淳くんだが、実は普段から良くお手伝いをする。ご飯の支度が始まると、料理をテーブルまで運んで並べるのはお手の物。さらに、お水をみんなの分入れるのも淳くんの係りだ。
こうしてお母さんの仕事に触れて少し経った頃、今度は淳くんの方から「じゃミミ(猫)にもお水あげる!」と積極的にお手伝いを言い出した。その一方で、ミミはいつもと違う空気を素早く察し、なんだかちょっと緊張気味…。
お次は脩くんが「じゃ僕は洗濯物たたむ!」と乾いたばかりの洗濯物を手にやってきた。脩くん、淳くんともに洗濯物たたみは得意分野。「どっちが早くできるか競争!」と、ゲーム感覚で楽しみながら、小さな手で次々と服をたたんでいった。
今回、最年少となった淳くん脩くん兄弟。〝働く〟ことを理解するのはもう少し大きくなってからかな? とのスタッフの心配をよそに、頼もしい姿を見せてくれた。
淳くんは初めての食器洗いについて「さいしょはむずかしいと思っていたけれど、やってみるとできました」とコメント。今後の活躍にも期待したい。
(左から、後藤淳くん、千恵さん、脩くん 自宅にはいつも明るい笑い声が響く)
~上海ジャピオン11月23日発行号より