上海人のお見合い事情

お見合い熱、上昇中
体験リポートに踏み込む前に、
まずは上海人のお見合いに関する全体の傾向を把握したい。
参考として、
マーケティング会社・インフォブリッジが、
この度、上海に住む20~40代の男女80人を対象に行った、
お見合いに関するアンケート調査の結果を見ていこう。
調査によると、
回答者の85%がお見合いに興味を持っており、
実際に72・5%が
1回以上のお見合い経験があるという。
2008年4月28日~5月16日にも
同調査を行ったが、
その時は「お見合いに興味がある」が47%、
「1回以上、お見合い経験がある」が48%と、
いずれも半数を下回っていた。
ここ数年で、
お見合いに関する熱が急速に高まっていることが伺える。
お見合いのキッカケについては、
「親のススメ」が63%、
「自分の意思」が35%という結果に。
また、お見合い以外の婚活をした事がある人は
全体のわずか22・5%だったが、
その中では昨今増えつつある「単身者パーティー」
という回答が多数を占めた。
また、「ネットのオフ会に参加した」(31歳男性)
という現代ならではの声も。


さらに「恋愛と結婚は別だと思うか」
という問いに対しては、
「別だと思う」が55%、
「別だと思わない」が45%で、
僅差ながらも、別だという意見が上回った。
理由としては、
「結婚を前提としない恋愛なんて偽物」(28歳女性)、
「結婚が目的でないなら、
恋愛しても体力と時間と金の無駄」(27歳男性)
といった声が上がる一方、
「恋愛は愛、結婚は情」(26歳女性)、
「一緒に生活を始めたら、恋愛ではなくなる」(30歳女性)
というシビアな意見が上げられた。
最後に、結婚相手に求める条件としては、
性格や共通の趣味といった項目が上位を占め、
車や貯蓄といった物質的条件は下位に。
親世代とは異なり、
条件面より精神面を重視する傾向にあるようだ。
それでは、次ページからは実際に、
若者のお見合い体験をリポートしていく。

いざ! 人民広場へ
取材班は2月の某週末、人民公園へと向かった。
同行してもらった、というより本日の主役は、
目下婚活中・上海生まれのデイビッド(31歳、写真①)。
身長182㌢で、
外資系IT会社にて主任を務めるイケメンだが、
彼女いない歴はすでに5年。
昨年末にはローンを組んで家も買い、
友達の紹介などを通して日々婚活を続けている。
今回は取材協力という口実で、
思い切って〝お見合い広場〟として名高い
人民広場へとやってきたのだ。

両親による相手探し
広場に着くと、そこは人だかりの山・山・山(写真②③)。
あまりの人の多さに圧倒される。
その顔ぶれを見てみると、
大半がおじさん・おばさんたち。
そう、本人ではなく、
適齢期を迎えた娘や息子を持つ両親が、
子どもたちの見合い相手を探しに来ているのだ。
彼らの周りを取り囲む草木や壁には、
所狭しと募集広告が貼られている(写真④)。
そこに書かれているのは、
本人の身長・年齢・職業などといった条件と、
見合い相手に求める条件、そして連絡先。
もちろん、電話番号は親のものだ。
中には写真付きの募集広告もあり、
登録者の写真を
アルバムにファイルしているところも(写真⑤)。
子どもに相応しそうな相手を
チェックした両親たちは、
連絡先のメモを取るのに忙しく(写真⑥)、
その場で直接電話をかけている人も見かけられる。
また、募集広告の前では、
各業者が机を出して登録を受け付けている(写真⑦)。
ここで掲載する内容を告げれば、
早くて翌日には貼りだしてもらえるという。
早速、デイビッドも登録してもらうことにした(写真⑧)。
気になる登録料は一体いくらかというと、
相場は30~50元程度。
全体的に男よりも女の方が多いらしく、
男は無料で登録を受け付ける、という業者もいた。

海外在住者も多数
登録を済ませたところで、
ほかの募集広告を仔細に眺めてみると、
なかなか良い条件のものも多い。
共通して言えるのは、
男は170㌢以上、女は155~165㌢と、
身長に対する条件が厳しいという点だ。
中には、60歳前後の応募者までいる。
また、「海外版」と銘打たれたコーナーもあり、
そこにはベルリン・シドニー・シカゴ・ニューヨークなど、
海外に定住している人たちの募集広告が並んでいる(写真⑨)。
子どもは海外にいても、親たちが上海にいれば、
広告は打てるというわけだ。
ただし、全てが仲介業者というわけではなく、
広場の中には自分で傘を広げ、
その上に手書きの紙を貼っている親の姿も少なくない。
そんなわけで、とにかく選択肢の数が多すぎる。
果たして本当に連絡など来るのか?
という疑問を残しつつ、その場を去る取材班だった。

1週間で8人連絡
が、そんな心配も杞憂に終わった。
翌日には、いささか興奮気味のデイビッドから
「もう連絡が来たよ!」との電話が入り、
結局、申し込みから1週間で
計8人の母親から連絡が来たという。
電話口では何を話したかというと、
相手が娘の仕事や身長などといった条件を一通り伝えた上で、
広告に記載していなかった、
デイビッドの家の場所などを尋ねてきたそうだ。
デイビッドからは主に娘の外見について尋ね、電
話で条件を聞いた時点で2人お断り。
理由を聞くと、
1人は自分と年が1つしか離れていないこと、
もう1人は髪型がショートカットで、
中国の女性ポップス歌手・李宇春に似ている、
と言われたからだという。
探している身のくせに贅沢な、
と思わず口から出かけたが、
それだけ真剣だということだろう。
結局、色んな面から2人にしぼり、
実際に顔を合わせてみることにした。

親と一緒の初対面
最初に会ったのは、
ホテルマネジメント業務をしている李さん(28歳)。
母親と一緒に来るというので、
取材班も友達として同行。
いきなり食事は敷居が高いということで、
手軽にファストフード店で落ち合った(写真⑩)。
取材班が隣で話を聞いていると、
とにかく条件面での具体的な話が多い。
デイビッドの家が
娘の職場から遠いことが分かると少し顔を曇らせ、
出勤時間の計算をし始めるお母さん。
さすがにデイビッドも
「その話はまだ早いんじゃ…」と苦笑い。
趣味などの話は最後まで出ず、
内気な李さんとはあまり話せないまま、
お母さんの迫力にすっかり気圧されてしまった。
一方、インテリアデザイナーのアンナさん(27歳)とは、
母親から娘のQQアドレスをゲットし、
事前にチャットを楽しんでいた。
お互い1人暮らしだったり、
NBA鑑賞という共通の趣味があったりと、
なかなか話も合い期待していたのだが、
実際に2人きりで会ってみると、
イマイチ会話が弾まない(写真⑪)。
1時間ほど話した後、仕事を口実に早々と切り上げた。

婚活はまだまだ続く
後日、李さんのお母さんから再び電話が。
デイビッドから音沙汰がなかったため、
「うちの娘だめだったのよねー?」と、やんわり確認。
デイビッドが曖昧な返事を返すと、
さほど気にする風でもなく、
「うちの娘に合いそうな友達がいたら紹介してね!」
と明るく電話を切ったという。
もうお見合いはダメかと思いきや、
デイビッドは取材班に黙って、
元同僚の彼氏の友達という
かなり遠い筋の女性を紹介してもらったとか。
人とのつながりが縁を呼ぶ――そう信じて、
ただ春の訪れを待つのではなく、
積極的に出会いをつかみに行くデイビッドだった。

~上海ジャピオン03月09日号

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