江湾エリア建築めぐり

中国らしいデザインが見もの

10号線の北側「江湾体育場」と8号線「嫩江路」駅の間にある「江湾歴史文化保護エリア」。同じ保護エリアである外灘や愚園路エリアと比べると、あまり観光地化が進んでおらず、今もローカルな雰囲気溢れる街並みが広がる。

大都市計画があったこの場所は、歴史的建築物が数多く残る。そして、そのほとんどが中国の建築士・董大酉によって建てられたもので、政府の施設に相応しく、荘厳で中国らしい建築物が見応えたっぷりだ。また彼も設計に加わった街並みや道路名にも、大都市計画の名残が見て取れる。

今回はこのエリアを3つに分けて紹介。じっくり見て回るとほぼ1日掛かる広さで、かなり歩くので、レンタサイクルなどを上手く利用したい。また病院や住宅地では、利用者に迷惑を掛けないよう注意しよう。

 

2つの中国宮殿風建物

長海路沿いには、都市計画の中心的存在であった重要な建物が残っており、ほとんどが董大酉による設計だ。

70年余りの歴史を持つ「長海医院」は、優秀な設備と医師を抱える総合病院。その病院棟の1つ、10号棟は鮮やかな黄色の瓦と、内部の朱塗りの柱、天井の彩色画がまるで北京市の故宮や西安市の鼓楼を思わせる美しさだ。これは「旧上海市博物館」として設計された建築物で、西側にある「旧上海図書館」こと、「楊浦区図書館」と向かい合うようにして建てられており、デザインもそっくり。吹き抜けの天井の下には、検査を待つ病院患者が座っており、一種独特の雰囲気だ。

隣の楊浦区図書館は巨額を投じてリニューアルされた分規模が大きく、こちらも圧巻。同館は入場にパスポートが必要で、利用者が多い時には入場制限あり。

 

現役のスポーツ施設

10号線「江湾体育場」駅すぐにある「江湾体育中心」。ここにも董大酉によって建てられ、後に修繕された3つの歴史的建築物が残る。

「江湾サッカー場」は高さ20㍍、石造りの荘厳な門が印象的で、2度にわたる修繕を経て、現在もサッカー場として使われている。国和路の方に入口があり、入場すると、広々とした芝生コートで球を蹴ったり、トラックを歩いたりする人々がいて、何とものんびりとした雰囲気。石造りの観客席にも上ることができ、4万人を収容するという広さや、細やかな彫刻を堪能できる。

その奥にある体育館は、赤レンガの壁と曲線的な屋根を持つ体育館に、白い石のカチッとした門が付いたユニークなデザインだ。2時間50元で泳げる市民プールは、プールらしからぬ厳めしい外観で、内部にもアーチ型の扉がいくつも並んでいる。

 

生活感たっぷりの老洋房

最後は董大酉設計ではないけれど、歴史を感じる建築やスポットを歩いてみよう。

民府路と市光路の交差点あたりに広がる住宅群はかつて、政府要人や富裕層が住むために作られた別荘風の建物で、計三十六棟あることから「三十六宅」と呼ばれていた。洋風な一戸建て建築は、よく復興中路などで見るようなオシャレで立派な造りだが、長く一般市民が暮らしており、彼らの手によって増築されるなど生活感溢れる雰囲気に。〝上半身は洋風、下半身はローカル風〟といわれるアンバランスさが、独特の景観を生み出している。

②と③は、元は楊樹浦路エリアにあった歴史ある教会・寺が、最近再建されたもの。ご近所同士、二つの宗教施設の美しいデザインを眺めてみよう。

 

~上海ジャピオン2022年3月11日号

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