色、香、形、味で観賞する梅

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3万5000株以上

最初に紹介するのは、市内奉賢区にある上海海湾国家森林公園。ここでは、今年初めて「梅花節(梅フェスティバル)が開催されている。園内には約6万平方㍍の梅林を有し、3万5000株以上の梅が植えられている。梅林は、入場ゲートからは約3㌔離れた同園の西側に位置するので、無料の遊覧車を利用するのが便利。梅は2月中旬時点で、全体の60%が開花。ちょうど今、3月初旬辺りが見頃だろう。

紅白に咲き分ける洒金梅

梅を語るに当たり、欠かせない要素の1つが色。梅の品種は実に200種以上あり、色は白、薄紅、赤が主だ。同園ではそのうちの126種が鑑賞でき、それぞれ美しい色彩を放つ。中でも注目は、日本名を「輪ちがい」という「洒金梅」(写真①)。1つの株に白と薄紅の2色の花がなる珍種で、うち1つの花に白と薄紅の花弁が混じるのはごく僅か。同園では、洒金湾と呼ばれる洒金梅のエリアがあるので、ぜひここに行って探してみよう。

また、日本原産の「姫千鳥(ひめちどり)」(写真②)は長く伸びた雄しべと、濃厚な赤色に惹き付けられそうだ。「江梅」(写真③)は中国固有種。眩しい白がひときわ目立つ。唐の詩人、杜甫(とほ)もその美しさを詩に表している。ほかにも、紹介しきれないほどの梅がたくさんあるので、これらが創り出す色の美をゆっくり鑑賞しよう。

施設名:上海海湾国家森林公園
住所:奉賢区海湾鎮随塘河路1677号(×洪朱公路)
電:5830-0806
営:8時半~16時半
URL:www.shfpark.com
期間:~3/22(日)
料金:80元

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市中心最大規模の梅展

2002年より梅フェスティバルを開催している浦東新区の世紀公園。約5万平方㍍の敷地内に7000株の梅を有し、市中心最大規模の梅見スポットとして、毎年たくさんの見物客が訪れる。園内では、「盆栽梅」エリアや3月中旬になると満開になる「美人梅」エリアなど5つのエリアを設けて鑑賞できるようになっている。

香りに酔いしれる

日本で、平安時代の貴族・菅原道真がかつて「東風吹かば 匂ひ起こせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ(東風が吹いたら、香りを私のもとまで寄越してくれ、梅の花よ。主人がいないからといって、春であることを忘れるな)」と詠んだように、梅と言えばその独特の香りも魅力のひとつだ。梅は全般的に香りの強い植物で、「蝋梅(ロウバイ)」(写真①)は特に強く、アロマオイルや香水にも使われるほど。同園の蝋梅特別エリアでは、中国を代表する蝋梅の産地、四川省大巴山から輸送してきた50株を含む、計3000株の蝋梅を展示。一歩足を踏み入れると、たちまち甘い芳香が漂ってくる。なお、蝋梅は開花が1月中旬で、ほかの梅よりも早く散ってしまうので、3月初旬までに行っておきたいところだ。

このほか、園内の「宮粉梅」(写真②)や、白梅の「玉蝶梅」も、その甘く上品な香りで人を魅了してやまない。凛とした花から放たれる薫香に酔いしれよう。

施設名:世紀公園
住所:浦東新区錦綉路1001号(×花木路)
電:5833-7122
営:7時~17時
期間:~3/31(月)
料金:25元

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小規模な梅の楽園

季節の花や特別展示などで、毎月、来場者で賑わう上海植物園。同園の梅エリアはわずか1万5000㍍と小面積ではあるが、60種類の梅が咲き乱れ、あたかも梅の楽園にいるかのような気分にさえなる。早咲き、遅咲きの梅、遠地から取り寄せた梅など、あらゆる梅の美を間近で感じられる。梅エリアへは、同園3番ゲートから入ると便利だ。

花、枝、木で見せる美

中国では古来、「梅以形勢為第一(梅は佇まいが最も重要)」として、花の開き具合や枝の長さ、バランスなど、全体的な形が梅を観賞するうえで重要なポイントとされてきた。ひと口に梅と言っても、花の形や花びらの重なり、樹木の曲がりなどで種類が異なる。同園では有名な種ばかりではなく、希少なものも展示しており、枝垂れた枝に濃桃色の小花を咲かせる「錦紅垂枝梅」(写真①)や「単瓣垂枝梅」といったしだれ梅が、独特の存在感を放っている。満開になると、まるで花の傘のように広がった枝から花が垂れ下がり、その独特の姿から盆栽梅として庭に植える人も多い。

また、「龍遊梅」(写真②)も人気。読んで字の如く、木の茎や枝が天に昇る龍のようにうねっていることからそう呼ばれる。それとは対照的に、枝がまっすぐ上に伸び、八重の花を咲かせる「宮粉梅」(写真③)も形で楽しむ梅の1つだ。梅を花だけでなく、全体の佇まいを鑑賞するというのも粋な楽しみ方だろう。

施設名:上海植物園
住所:龍呉路1111号(×百色路)
電:5436-3369
営:8時~17時
期間:~3/31(月)
料金:15元

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ビタミンや鉄分など、栄養素が豊富なことから、健康食品として認識されている梅。日本では梅干や梅酒が有名だが、中国ではどういったものがあるのだろうか?

酸梅湯

「酸梅湯」は北京発祥のさっぱりとした味わいの飲料。これを飲むと体温を下げると言われ、気温が高くなる夏に盛んに飲用されている。

主原料は、未熟な梅の実を干して燻製にした烏梅(ウバイ)のほか、消化吸収を促す効果があるサンザシ、キンモクセイなどで、甘さよりも酸っぱさが強い。北京では「九龍齋」という名の酸梅湯が定番だ。

話梅

中国では、おやつとして庶民に親しまれている「話梅」。干した梅をさらに乾燥させた菓子で、しょっぱさがクセになる。

一度に噛み砕くのではなく、飴のように口の中でゆっくり舐めていただく。街中の乾物店でよく販売されているので、一度試してみよう。

梅醤

「梅醤」は清代からの使用が確認されている梅ジャム。ペースト状にした梅の果実にシソ、砂糖、塩を加えている。

パンに塗って食べるのも良いが、ソースとして使う人も多い。「梅醤排骨(梅ジャムのスペアリブ)」や「梅醤炒飯(梅ジャムチャーハン)」といった料理が有名だ。

梅花糕

長江周辺の地域が発祥とされる「梅花糕」。名前に梅を冠しているが、実は梅を使っているわけではない。正面から見ると五角形になっており、それが梅の花に似ていることから名付けられた。

サクサクとした生地に、餡やナッツ類を乗せて焼いている。上海市内では水郷の七宝で売られているようだ。

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~上海ジャピオン2014年3月7日号

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