China Modern ART ~入門編~

特集-P1-1

特集-P1-2

中国を代表する当代芸術家

作品の観念的側面を重視する「コンセプチュアルアート」の先駆者と言われる彫刻家・隋建国。幼い頃は科学者になりたかったというが、大学受験の前年に訪れた青島で、1人の彫刻作家と出会い、彫刻の基礎を学び始める。そしてそれまでの彫刻に対する概念を覆すべく、岩石や鉄筋、ゴムなど異質な素材を用いて創作を行い、中国における新たな現代彫刻を確立したことで名を広めた。代表作は1997年から制作を始めた「人民服」シリーズ。なお、2004年以降は同シリーズの製作を中断している。

2013年のオークションハウス「クリスティーズ中国」のセールでは、「衣文」シリーズが1198万元で落札。昨年はオランダに彫刻作品を設置、そして9月にロサンゼルス、10月にニューヨークで個展を開くなど精力的に1年を過ごした。

特集-P1-3

火薬をアートに持ち込んだ

現在NYを拠点に活動する国際的アーティストの一人・蔡國強。1999年には世界3大芸術祭の1つ「ヴェネツィア・ビエンナーレ」で金獅子賞を受賞した経歴を持つ。彼は火薬の爆発作用によってキャンバスや和紙に色を定着させる「火薬ドローイング」をアートの世界に持ちこんだことで有名だ。彼のことを知らない人も、2008年の北京オリンピックの開・閉会式の花火シーンは記憶に残っているだろう。その芸術監督を務めたのが彼なのだ。

意外なことに、彼の創作活動の原点は日本。1986年末から9年間日本に滞在、その間に「火薬ドローイング」を生み出した。地元の人を巻き込んで行われる壮大なプロジェクトが彼の持ち味。昨年は、彼にとってアートの故郷と言える日本・横浜で個展を開催した。

特集-P2-1

中国の家族写真を描く

2007年、NYのサザビーズオークションで最高値の211万2000㌦で落札され、一躍世界に知れ渡ることとなった中国人アーティスト・張暁剛。

代表作は中国人家族の肖像写真をもとに描かれた「大家族」、「血縁」シリーズだ。正面を向いた個性のない顔が画面いっぱいに迫る。一見不気味に見える油絵からは、急激な近代化に伴う家族関係の揺らぎが感じられる。この作品が生まれたのは1992年。欧州の美術館を巡り、海外の巨匠たちとのレベルの差を実感した。中国に戻って自分を見つめ直そうとした時、両親の若かりし頃の写真を手にし、皆が同じ表情であることに強いインスピレーションを受け制作した。

また両シリーズに共通して見られる、細く赤い糸。不条理な社会に憂いつつも決して切れない絆を望んでいるようだ。

特集-P2-3

エルメスのスカーフに

上海のコンテンポラリーアートを牽引する丁乙。美術学院でデザインを学び、玩具会社に入社し、パッケージデザインを担当していた。当時はパソコンもなくすべて手描きで作業していたが、その時の寸法補助として描き入れた十字が、後の作品に生かされることとなった。

十字をモチーフとした作品は、生活する都市=上海を映し出す。1988年頃の上海は埃っぽく灰色に染まっており、それが作品の色に現れた。98年には蛍光色を用いるなど、色彩が大きく変化し、それは2008年の作品でも見られる。

またエルメスのスカーフをデザインした初の中国人デザイナー、かつ唯一の画家として知られる。10年に開催した上海万博では、会場に十字形が組み合わさった彫刻を設置するなど、パブリックアート制作にも意欲的。

特集-P2-2

〝笑う男〟で一世風靡

中国現代アートの売れっ子、岳敏君。何が起きようとも悩まず笑顔で自然のまま、という「老荘思想」を受けて制作した自画像「笑う男」で名が売れた。北京の今日美術館前には「笑う男」のオブジェが飾られている。

1990年代から自画像を描き始め、その後、彫刻や版画へと領域を広げていった。彼の作品は早くから海外の愛好家の目に止まり、2008年末、仏オークションサイト「アートプライス」が発表した「世界で最も売れる現代美術家ランキング」で7位入りした。商業的に大きな成功を収め、中国アートを世界に広めた偉大なる芸術家である。

なお、昨年は上海で個展「文字花園」を開催。これまでの「笑う男」シリーズとは全く異なり、落ち着いた色調で描かれた伝統的な墨絵タッチの作品が並んだ。新たな活躍に期待が膨らむ。

特集-P2-4

魂の叫びをアートで表現

1990年代以降の中国アートの主流「シニカル・リアリズム」の旗手・方力鈞。自身をモデルにしたと言われるスキンヘッドの男を描いた作品で知られる。激動の時代を生きた彼の作品には、当時の経験が色濃く反映される。不気味な雰囲気とそれに相反したユーモアさの融合が、人々を魅了。

93年には『ニューヨーク・タイムズ』の表紙を飾り、その後もMOMAやポンピドゥーセンターといった、世界の名だたる美術館で作品が展示された。また、ベネツィア・ビエンナーレにも2度出品を果たしている。そんな彼を発掘したのは、〝中国アート界のゴッドファーザー〟の呼び名を持つ批評家・栗憲庭という。

なお2003年、ヴィッキー・チャオ(趙薇)とジャン・ウェン(姜文)主演の恋愛映画『緑茶』にカメオ出演している。

特集-P3-1

アジアのレコードを更新

2013年、中国香港で開かれたサザビーズのオークションで、曽梵志の「最後の晩餐」が出品され、1億8044万香港ドル(22億6000万円)で落札。アジア現代美術の過去最高額を記録した。

彼が美術に目覚めたのは17歳の時。美大を志すも勉強はあまり得意ではなかったようで、受験に4度失敗している。代表作「マスク」シリーズは、北京へ移住するために手続き上、赤の他人の大家のことを親戚と偽って暮らす自分が、仮面を被っているように感じた気持ちを表現したことから生まれた。マスクを被った絵からは、孤独や疎遠、冷淡さが透けて見えてくる。

2014年には、中国一の富豪として有名なジャック・マー(馬雲)との共作「桃源郷」が、翌年のサザビーズ香港オークションで4220万香港ドルの値を付け、話題を集めた。

特集-P3-3

マルチな才能の〝鬼才〟

中国芸術の〝鬼才〟、〝百科事典〟と称される芸術家・邱志傑。2012年の上海ヴィエンナーレでメインキュレーターを務め、マルチな才能を評価された。

彼が現代アートの世界へ足を踏み入れたのは1986年、アモイで開かれた現代芸術展で、中国現代芸術の〝四天王〟の1人であるホワン・ヨンピン(黄永砯)の作品に出会ってから。それからわずか半年後に独学で美術大学に合格した。頭脳明晰な彼が創造する

アートは、写真やビデオ、書、絵画、インスタレーション、パフォーマンスと、すべてが融合している。
なお昨年は、故郷・福建省で個展「大計画」を開催。この展示をもって2007年から始めた「南京長江大橋計画」を始め、3大プロジェクトの全貌が明らかにされた。社会的な側面から切り込んだ総合芸術作品が揃う。

特集-P3-2

中国らしさを求めない

上海のコンセプチュアル・アーティスト・周鉄海。彼の代表作は、擬人化したラクダをモチーフとした「偽薬」シリーズ。ジーンズ姿や貴婦人の服装など、実にバラエティに富んでいる。物事を概念的に考え、制作においてもアシスタントを雇い、既存のどの図像をどのように使うか指示し、作品を完成させる。

これまで、ヴェネチア・ヴィエンナーレやカッセル文献展など、国際的な芸術展に多数出品してきた。著名雑誌の表紙をパロディした「假封面」シリーズや、映画のポスターを彷彿とさせる「80年代明星」シリーズも人気。

1998年、スイス中国当代芸術協会が発布した当代芸術賞で金賞を獲得。彼の作品は〝中国らしさ〟からかけ離れているように見えるが、〝中国らしさ〟をアピールしない作風が欧米のキュレーターに響いたようだ。

特集-P3-4

想像の世界へスリップ

劇団員の母と京劇監督・馬科を父に持つ馬良。幼い頃から絵を描くことが好きだった彼は、中学から美術学校へ進んだ。大学を卒業後、企業用ムービーのディレクターを務め、めきめきと頭角を現していった。2004年には、専門誌『中国広告導報』で「中国で最も影響力のある監督」の一人に選ばれる。しかしこの時、自分が思い描く作品を創りたいと、アートの道へと方向を転換した。

後に友人と一緒に撮影したコンセプチュアル・フォト「私的写真館」が反響を呼び、後のプロジェクト「我的移動写真館」に繋がる。トラックの荷台を簡易スタジオに改装し、全国35都市を巡廻。旅の中で出会った一般人2000人強を被写体として、作品を創り上げていった。最近はインスタレーションにも取り組んでいる。

 

~上海ジャピオン2016年01月15日発行号

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