豊作、無病息災を祈願
上海市を含む中国各地では、毎年旧暦12月の8日目(臘月初八)に「臘八節(la4ba1jie2)」という節句があり、今年は1月24日(水)がそれに当たる。
臘八節とは、「臘八粥」と呼ばれる粥を食べ、家族の無病息災を願う日で、1000年以上の歴史を持つ。日本でも毎年1月7日に「七草粥」を食し、家族の平安無事を祈る「人日の節句」があるが、それとよく似たものだ。
中国古来の伝承によると、かつて臘月(12月)には「臘祭」という祭事が行われていたと言う。中国語の「臘」には「願い求める」という意味があり、先祖に感謝の意を表したうえ、1年の収穫を祝うため、穀物や野菜が豊富に入った粥を食べたことが「臘八粥」の起源になったと言われている。
穀物たっぷりの臘八粥
臘八粥とは一般的に、中国各地で親しまれている「八宝粥(五目あま粥)」を指す。地域によって材料は異なるのだが、主にコメやアワ、ナツメのほか、ピーナッツやアズキ、リュウガン、ハトムギなどを入れて炊く。砂糖や蜜を使っているため全体的に甘い味付けとなっており、夏には食欲を増進させる健康食品としても知られている。
そのほか1月のこの時期、春節に備えて酢漬けニンニク「臘八ニンニク」を作り始めるのも習慣の1つ。酢がニンニクの甘辛さを加えてくれ、春節前夜に水餃子とともに食べるのが一般的なんだとか。
臘八節では毎年、地元の寺院などで臘八粥が振舞われ、上海市の普陀区にある玉仏寺と周郁の龍華寺では午前9時から、臘八粥の炊き出しを行う。無料なので、興味のある人は地元の祭事の雰囲気を味わいに行ってみては?
中身や作り方に地域性
日本でもすっかり馴染みの深い料理となっている粥だが、中国粥とはどういったものなのだろうか?まずは歴史から追ってみることにしよう。粥の誕生は2000年以上前にも遡る。636年に編纂された歴史書『周書』には、中国五帝の1人、黄帝が穀物を煮て、これを粥と称したという記録が残っている。また、同じく歴史書の『史記』に、医者が粥で王の病を治したとの記述があり、古代から食用として、また薬用として、宮廷内から庶民まで親しまれていた料理と言えるだろう。
さてこの中国粥だが、一般家庭でよく食べられるのは、前述の八宝粥やヘルシーな緑豆粥、小豆粥などだ。また、その地域独自のものもあり、北京市など河北エリアでは「小米粥」と呼ばれるアワ粥が、一般家庭や街の屋台で、饅頭と一緒に食されることが多い。一方南の広州市では、鶏肉や干し貝柱をダシに、肉や魚、野菜などを入れ、土鍋で炊く「潮汕砂鍋」が主流だ。
さあ、次ページからいよいよ中国粥を紹介していく。この冬は、あったかい中華粥で、寒さを乗り切ろう!
ヘルシーな鶏肉を使用
まずは、脂身が少なくヘルシーな鶏肉を使った「鶏粥」から。この粥を作るのにトリ1羽を丸ごと使っており、コメにもスープにも染みた鶏ガラ100%の濃厚な味とコクが堪らない。お玉で少しかき混ぜると、底の方から鶏肉がゴロリと現れる。これにパクチーやおろしショウガ、煮詰めた醤油などを入れると旨味が倍増!
上海市内の料理店では、2~3人前70元前後で食べられる。
中国で一般的なカエル肉
「田鶏」とはカエルのこと。日本ではあまり馴染みがないが、カエルは中国でポピュラーな食材なのだ。味がササミに似ているため〝田畑の鶏肉〟と呼ばれ、田鶏の名が付いた。恐る恐る食べてみると、その味はまさしく鶏肉!臭みはほとんどなく、サッパリとした味わいが口いっぱいに広がる。トッピングの卵や野菜、海苔などを足して、また違った風味を楽しんでみて。
それでもカエルはちょっと…という人は長寧区の定西路沿いにある粥専門店に足を運んでみよう。中でも「潮汕砂鍋粥館」がオススメで、「皮蛋粥(ピータン粥)」や「海鮮粥」など、ノーマルの粥も提供している。
ピータンと豚肉であっさり
3つ目に「皮蛋痩肉粥」をご紹介。「痩肉」とは、脂身の少ない豚肉の赤身を指す。具材はこの痩肉とピータンのみで、塩味の淡泊なダシにマッチしている。低脂肪であっさりとした粥なので、ヘルシー志向の人にピッタリだ。この粥には中国の国民的小吃「油条」がよく合うため、一口サイズに切って入れてみては?
24時間営業の「三宝粥鋪」は、「皮蛋痩肉粥」のほか、おひとり様向けの粥を20種類以上揃えている。低価格で味もよし、という評判からリピーターが多いようだ。
カニミソ入りの広東系粥
新鮮な海水域のカニであるノコギリガザミ1杯を使った広東系土鍋「膏蟹砂鍋粥」を店で注文する場合、料理の提供までに30分ほど待たなければならない。その甲斐あってか、カニの旨味がダシに行き渡り、最後のコメ1粒までペロッと平らげてしまうほど。まるで超濃厚なカニ雑炊を食べているようだ。
お楽しみはこれだけではない。料理名の「膏蟹」の通り、カニミソをたっぷり蓄えた雌蟹が入っている。そのためコメとダシ、カニミソの甘味を一度に楽しめ、まさに至福のひと時を過ごせる。
栄養満点な淡泊魚で免疫増
「生滾魚片粥」の「生滾」とは、「煮立て、炊き立て」を意味する。その名の通り、活きのいいソウギョの切り身が加わり、程よい刺激と魚の淡白な味わいが印象的だ。さらに、ショウガと塩コショウで味付けされたダシに身体が温まる。また脾臓にやさしく、免疫機能を高めてくれるので、体調を崩しやすい今の季節に打って付け。ただし、この粥は碗1杯当たりコレステロール200㌘が含まれているとの結果が出ており、世界保健機関が提唱する1日におけるコレステロール摂取量の上限300㌘に達するため、食べ過ぎには注意しよう。
広州発、海の幸満載の粥
海鮮系粥の最後に「艇仔粥」をご紹介。料理名だけでは、どういうものなのか、全く想像が付かない。この粥は元々、広州市の海を訪れた旅行客に、小船の上で海鮮粥を提供したのが始まりなんだとか。
なるほど、船の上で出されたと言うだけあって、魚の切り身に浮き袋、干しエビにホタテ貝柱と、海の幸が満載。上海市内の中華料理店で頼むと1皿40元ほどで割高感は否めないが、シンプルな塩ベースのスープに、具材が海のごとく広がる滋味豊かな一品だ。
3分加熱で手軽に八宝粥
浙江省杭州市の食品メーカー「娃哈哈」が販売している「八宝粥」。缶の中に入った粥を鍋に入れ、3分ほど加熱すれば完成だ。気になる味は甘めで、ナツメやピーナッツなど具沢山であるものの、全体的に柔らかい…食欲がない時に食べるといいかもしれない。
子ども向けの栄養満点粥
「親親児童栄養粥」は名前に〝児童〟が付いていることから、子ども向けだとわかる。コメよりもコーンやナツメなど、ほかの具材の味が際立つ。具沢山で、鉄分やビタミンA・Dなどが含まれており、栄養価が高い。具材は柔らかいため小さな子どもでも簡単に食べられるだけでなく、栄養補給にもなり、寒い冬に食べるのがベター。
おしるこ系のスイーツ粥
黒米の素朴でやさしい甘さが印象的で、味は日本のおしるこやぜんざいに似ている「銀鷺黒米粥」。皿に出して温める際に白玉を入れるとおいしいよと、スーパーの店員さんが教えてくれたので、ぜひお試しあれ。
また黒米粥には黒米や黒豆、ナツメなど栄養満点の食材が多く入り、胎児の発育にいいとされているため、妊娠中の人は積極的に食べよう。
空腹時や残業時の味方
「好粥道蓮子玉米」は、食べてみるとそれほどコーンの味がするわけでもなく…またほのかな甘味が特長の「蓮子(ハスの実)」も入っており、さらに砂糖も加わって、主食というよりスイーツに近い。小腹が空いた時やオフィスで残業する時用にストックしておくのがいいかもしれない。ただし、1缶当たり814㌔カロリーと高めなので、体重を気にする人は食べ過ぎに注意しよう。
~上海ジャピオン2018年1月5日発行号