日本にいる友人が、バックパッカーとして上海に来ることになり、滞在先を代わりに探すことになった。あるいは、週末を利用して国際交流をしたいという人にオススメなのが、ユースホステルの利用だ。
リュックを背負って旅行
バックパッカーとはバックパック(リュックサック)を背負って、低予算で個人旅行をする人のこと。公共交通機関で移動し、観光地を巡るのが好きな人もいれば、長期間滞在して地元の人たちとの交流を楽しむ人もいる。その時、その場所でしか得られない出会いや経験があるから、バックパック旅行をする人が絶えない。
1週間以上滞在することもザラのため、バックパックには色んなものを詰めよう。中でも欠かせないのが、全世界対応の「コンセント(写真①)」。各国々でプラグの形状が異なるから、電化製品を持参する人にはマストアイテムだ。「加熱器(②)」は温かいものを飲みたい時に、水に浸ければものの数分で湯が沸かせるし、「ヒモ(③)」は洗濯物を干す時に重宝する。「S字フック(④)」は、荷物掛けのないトイレで大活躍。あと、変圧器も忘れずに。日本の電圧は110Vで、中国は220Vだから、スマートフォンなど電化製品を充電する際には注意しよう。ただ、パソコンや一部スマホは240Vまで対応していることがあるため、変圧器は不要だ。なお、現地で変圧器を安く調達できることもあるから、リサーチをしたうえで荷造りをするべきだ。
宿選びのポイントは3点
話は戻って、低予算のバックパッカーの強い味方がユースホステル。何でもサービスしてくれるホテルとは違って部屋は基本的にベッドしかないのだが、宿泊料が安いのが何よりの魅力。数人でシェアするドミトリーだったら1泊100元も掛からず、ユース会員になれば、割引もあったりする。また安いだけじゃない、多くの人に出会えることもメリットの一つだ。情報交換ができたり、中には一生モノの出会いになったりすることもある。
今は世界中色んなホステルがあるが、宿泊の予約前に気を付けるべき点は、第一に安全かどうか。当然と言えば当然だが、見知らぬ人が自由に部屋に入れたり、相部屋のイビキがうるさかったり…心配でならない。先に部屋を見せてもらって、慎重に選べばいいだろう。その次は、交通アクセスの利便性。あちこち回りたいわけだから、地下鉄の駅から近いとか、有名な観光地まで徒歩圏内などは外せないポイントだろう。そのほかには、ラウンジといった色んなバックパッカーと交流できる公共スペースがあるか、寒い場所なら湯の出るシャワーの有無も重要。
しかし、あまり色々心配し過ぎても旅を楽しめない。人や場所との出会い、酸いも甘いも含めてエンジョイするのが、ユースホステルを利用した旅。それでは次ページから、宿探しに行く。
外灘・陸家嘴近くで好立地
上海に来れば、一度は立ち寄りたい観光スポット「外灘」。東を向けば高層ビル群が立ち並ぶ陸家嘴エリアを見渡せ、西を向けば昔ながらの風景〝老上海〟を望める。
外灘から徒歩数分の宿「上海老船長国際青年旅舎」は、観光客向けショッピングエリア南京東路へも歩いて10~15分ほどで行ける距離にある。また浦東新区の繁華街・陸家嘴へも、2・10号線「南京東路」駅から1駅の場所にあり、外灘・南京東路・陸家嘴という上海観光スポット3カ所を周るのにピッタリ。さらに、ホステルが組む独自のツアーもあるから、初めて来海する人には打ってつけだ。
ドミトリーで情報を共有
「上海老船長国際青年旅舎」は英国建築を改造したホステルで、その宿名通り、万国建築群の中に違和感なく佇む洋風の建物だ。1階部分はカフェ「船長的珈琲」になっており、宿泊客が提供した日本語や英語などの古本を1冊10元ほどで提供。ロビーは、カフェを上がった2階に設置している。操舵輪や船長の銅像が飾られているのは、ホステル名の〝船長〟に合わせてのこと。
色んな情報を得るなら、数人が1つの部屋に泊まるドミトリーにしよう。7~8人用の相部屋は、欧米系の旅行客が多く利用することが多い。同じ部屋に宿泊する人と話が弾めば、6階にあるバーのテラスで、夜一緒にアルコールを飲むのもいいだろう。全く知らない人と泊まるのが苦手…という人は、値段は張るがシングルルームも用意しているため安心してほしい。
上海ローカルの国際宿泊所
近現代的な外灘に近い豫園エリアは、歴史情緒に溢れる街並みで、上海の魅力の1つとなっている。そんな「豫園」から徒歩10分ほどに構える「上海老西門国際青年旅舎」は、こんな所にホステルなんてあるのか、と思わせるほどローカルなエリアだ。周りには民家が立ち並び、地元の人たちが談笑している。
中華様式のドアを開けると、フロアがこれまた中華様式の石畳。〝国際〟という割にはあまりに中華風の造りで、本当にここはユースホステルなのか? と疑問に思うが、バックパックを背負った客が何人かロビーに立っているのを見て、ホステルだとわかる。ドミトリーは客室が少なくすぐに満室になる宿らしいので、早めに予約をしよう。
テラスから見える日常感
カーテンを開けると、外には洒落たテラスが。出てみると、近隣の民家が真横に見え、上半身裸のおじさんが体操していた。いい景色とは言い難いが、大都会でローカルな雰囲気を味わえるホステルも少ないだろう。また1歩外に出ると、民家の間を縫うようにローカルフード店が立ち並び、多くの中国人で賑わっている。上海に来たのなら、こうした店で食事を取ってみよう。
ロビーに置かれたパッカーの旅ノートには、英語や日本語、アラビア語、ラテン語系と思われる言語で、旅人の上海での思い出が綴られている。壁にもビッシリとメッセージや写真で埋め尽くされ、この国際感と内装の中華感が見事にコラボしているユースホステルだ。
〝極道の倉庫〟を改装した宿
1号線「新閘路」駅を降りて、蘇州河沿いを北西に1㌔ほど進んだところに「上海蘇荷国際青年旅舎(旧・上海蘇州河畔国際青年旅舎)」はある。そのほか外灘や上海ディズニーランド周辺、七宝にも構える。
このホステルは、1933年に杜月笙(と・げつしょう)という上海暗黒界の人物が使っていた倉庫を、現代風にリノベーションしたホステル。ギャングスター…、男なら誰でも1度は憧れを持ったはずだ。ワイルドな極道と美しい蘇州河、このミスマッチさに惹かれ、宿を訪ねる男性がいるとかいないとか。
外観は極道の倉庫のような重々しい感じではなく、灰色を基調としたレンガ造りのシックな建物だった。伝説のギャングスターには似つかわしくない落ち着いた雰囲気に一目惚れしてしまった。宿泊客が残したものなのか、部屋までの廊下に描かれた、花や風景を見るのも楽しい。
バーで各国の人と夜を満喫
ドミトリー内の各ベッドは木製で、壁にはライトを設置。また棚が取り付けられているものもあり、物を置けるスペースがあるのはうれしいポイント。共有スペースにはビリヤードなど遊び場のほか、なんとバーもあり、各国の人と夜遅くまで語らい合える。
建物の外に出て、蘇州河を眺めながら今日という日を振り返る。伝説のギャングスターも同じ景色をここから見ていた、のかもしれない。
~上海ジャピオン2018年7月13日発行号