上海絶品炒飯

これぞシンプル炒飯の極み

卵とネギのあっさり塩味

最初に紹介するのは「蛋炒飯」。具は卵とネギのみで、どの店でも必ずメニューに載っているほど、定番中の定番メニューだ。

来店客の約8割が注文するというこちらの炒飯。卵の黄色とネギの緑の彩りも豊かに、食欲をそそる。味付けは鶏ガラスープと塩、コショウのみのシンプルなスタイル。あっさりしたうす味で、ギトギトした感じがなく、脂っこいものはちょっと…という人でも安心だ。全体的に薄味なので、「酸辣湯」(38元)など、味のハッキリした料理と一緒に食べるのが◎。

「鼎泰豊」は、中国台湾が発祥で、日本にも店舗をもつ有名中華料理店。炒飯はこのほか、エビと豚肉をふんだんに使用した「虾仁肉絲炒飯」(65元)も人気。王道炒飯をとくと味わおう。

低価格で納得のボリューム

醤油の香ばしさが決め手

続いては、これまた定番中の定番「醤油炒飯」。上海を始め、蘇州や杭州など、長江以南の地域で親しまれている炒飯。

こちらは、炒飯の基本調味料とされる鶏ガラスープを使わず、主に醤油で味付けをしている。コメのひと粒ひと粒に、濃厚な醤油の旨味とコクがしっかりと染み渡り、ひと口ほおばれば、奥深い味わいがじわ~んと広がるのを感じる。しばらくはその余韻から抜けられないこと必至。日本の炊き込みご飯をさらに炒めたような食感で、日本人にも受け入れやすい一品と言えよう。

「兜約・下飯菜」では、江南地方を中心とした家庭料理がリーズナブルに味わえる。市内に20店舗を構え、アクセスも便利。看板メニューの「兜約酸菜魚」(68元)とともにお試しあれ!

パラッとした米の食感と

キャベツなどの豊富な具

炒飯と言えども、地域性や民俗によってその味も異なってくる。次に紹介するのは上海市に13店舗を構える料理店「港麗餐庁」の「香港炒飯」(50元)だ。

同店では、長粒米(インディカ米)を使用する。パラッとした質感の炒飯を作るには、やはり長粒米が一番だ。さらに、ネギにキャベツ、干しエビ、ハムが入り、これらの食材の旨味が、炒めたご飯と絶妙にマッチ! 時折感じるハムの塩気とほのかな甘味も、炒飯に奥行きのある味を感じさせ、最後のひと粒までおいしくいただける。

店員さん曰く、多い時は1日に50食以上出ることもあるとか。週末ともなると行列になる人気店の、香港式炒飯をとくと味わおう。ディナー時は混雑するので、事前予約をしよう。

食欲をそそる羊肉の香り

一度ハマれば好きになる

特徴のある炒飯を求め、次に辿り着いた先は、スタイリッシュな新疆料理店「耶里夏麗」。新疆と言えば、真っ先に思い浮かべるのが羊肉。スパイシーな「羊肉串」(3・5元/本)が有名な同店だが、隠れた名物メニューとして人気なのが「羊肉手抓飯」(28元)だ。

鶏ガラスープベースの炒飯とは打って変わり、羊肉独特のクセのある風味が全体を覆い、もっちりとした米粒とのハーモニーが味わえる。しっかりとした羊肉の歯応えに加え、スパイスに使われているクミンやレーズンが風味を豊かにし、添え付けの野菜も刺激をプラス。

「手抓飯」とは、炒飯と言うより洋風ピラフに近い存在だが、いずれにせよ羊肉が苦手な人でも、これならご飯と一緒に、たっぷり抵抗なく食べられそうだ。

福建には福建炒飯がない!?

海鮮餡と炒飯の華麗な融合

福建と名が付くのに福建省には存在せず、特に香港で人気を集めている「福建炒飯」。炒めたご飯の上に、ニンジンなどの野菜、キノコ、エビ、貝類などが入った海鮮餡を掛けたものだ。福建料理では餡掛け料理が多いことから、餡掛け炒飯を福建炒飯と呼ぶようになったと言われている。

レシピは、まず具材をサイコロ状に揃え、炒めて、スープ、醤油、オイスターソース、塩などで味付けした後、水溶き片栗粉でとろみを付け、海鮮餡を作る。 この海鮮餡を炒飯に掛けて出来上がりだ。

パラパラとしたご飯をそのまま食べたり、餡を絡めて食べたりと様々な食感を楽しもう。炒飯と中華丼を一度に味わえるようで、ちょっと得した気分になれる。

フルーツ炒飯で南国気分

パイナップルの器が魅力

炒飯は今や中国だけに留まらず、風味や形を変えて世界中で食される料理だ。

南京東路のタイ料理店「泰妃殿」では、半分にカットされたパイナップルをそのまま器にした「菠蘿炒飯(パイナップル炒飯)」(58元)が人気。プリップリのエビにパイナップル、鶏肉、カシューナッツ、錦糸卵、コーンなど、バリエーション豊かな具材がふんだんに盛り込まれている。タイ料理独特のスパイスの旨味と甘味が素材の味を引き立て、多くの具材が入っているにも関わらず、それぞれが主張し合うことなく、バランスが取れている。一口目で思わず「アロイ! (タイ語でおいしいの意)」と叫んでしまうかも! 見た目も味もトロピカルな南国の炒飯を味わってみよう。

旨味がぎっしりの梅干菜

高菜炒飯のような食感が◎

梅干菜とは保存食の一種で、カラシ菜などの青菜を塩漬けにして乾燥させたもの。地方によって使われる青菜や加工法が異なり、発酵させたり、塩漬けにしたものをそのまま調理に使ったりすることも。

梅干菜と言っても梅干しが入っているわけではなく、少し甘い梅のような、爽やかな香りがするからこの名が付いたとか。日本で言うと高菜漬けのようなもので、一度乾燥させることにより、旨味が凝縮されて、独特の風味が出る。

「楽里餐庁」の「香煲干菜炒飯」(39元)は、ピーマン、ネギ、卵などの具材と梅干菜がバランスよく混ぜられ、絶妙な風味を醸し出している。土鍋で炊く調理法のため適度に蒸されており、もっちりとしたコメと、XO醤の香ばしい香りが堪能できる。

卵の黄色が鮮やかな炒飯

シンプルながら奥深い味

揚州炒飯とは、蛋炒飯をベースにし、各種具材を入れた五目炒飯のこと。中国で初めて炒飯に卵を絡めたのが、揚州の調理人だと言われ、これを揚州炒飯と呼ぶようになったそうだ。レシピは卵に肉、海鮮、野菜などの具を刻んで入れ、ご飯と一緒に炒める。様々な具が入った日本の五目炒飯と似ており、具の定義が曖昧なところも、各所でオリジナルが味わえる所以だろう。

同店の「揚州炒飯」(25元)は、味の決め手となるスープでコクと風味を付け、ご飯は最後に入れて炒める点に特徴がある。コメと具を混ぜながらしっかりと炒め、香りを出すことがポイントだと言う。

~上海ジャピオン2019年4月19日発行号

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