上海人と雨がっぱ

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中国式雨がっぱのイメージ

不便だけど憎めないヤツ?

? 雨の日に自転車のカゴをすっぽり覆い、上海の街を駆けめぐる中国式雨がっぱの大群。
その雨がっぱに対し、上海人はどんなイメージを持っているのだろう? 
マーケティング会社・インフォブリッジが20代~40代を対象に行った調査によると、
回答者の7割が中国式雨がっぱを所有。
「中国式雨がっぱのイメージ」に対しては約半数が、「中国らしい庶民文化」と回答した。
一見、多くの庶民に愛用されているようだが、実は必ずしも満足しているとは限らない。
 個々のコメントを見てみると、「顔に水滴が直撃し、目が開けられない」、「足が濡れる」、
 「暑い、ムレる、重い」、などなど、なかなか厳しい言われようなのだ。
中国式雨がっぱユーザーたちの中には、「ほかに着るものがないから、
ダサくて不便だけど仕方ないか」と思っている人も多い様子。
 ただ、中には好意的な声もある。
「雨がっぱガンバレ」、「中国式雨がっぱ大好き」、「伝統的で実用的」などだ。
ちょっと不便でも、やっぱりあのかっぱが街中に並ぶ景色はいかにも中国らしくて、
なんだかんだいっても愛すべき存在だ。 

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なぜ、あのような形に?

 それにしても不思議なのが、あのカタチ。
日中の文化に詳しい中国人研究家によると、「日中の雨がっぱのデザインに違いがあるのは、
自転車の形が違うからなんです」と、自転車の構造の違いを理由にあげる。
 「中国の自転車は日本のものに比べ、支柱が一本多いんです。
マウンテンバイクのように横から見ると支柱が三角形になっていますよね。
中国では通勤や通学などで長距離をこぐケースが多かったので、
こうして強度を高める必要があったのです」
 そしてこのため、「日本のようなボタン付きの細身の雨がっぱだと、
支柱に雨がっぱのすそがひっかかって自転車がうまくこげません。
中国式雨がっぱは、中国の自転車の形に合わせて、ああいう形になったわけです」と解説する。
 確かにあの自転車の形では、この形の雨がっぱを着るのが最も理にかなっているのだろう。
これなら長距離もこぎやすく、雨にも比較的濡れにくい。
 続いて、上海に住む3人に、雨がっぱに対する思いを語ってもらった。voice3484

雨がっぱ工場の社長

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主な生産地は上海市外

 上海市郊外にある雨がっぱ工場「上海新美雨衣廠」の陸尚模社長(54歳)は、
雨がっぱを作り続けてこの道20年。
 「最近は市内で雨がっぱを作っている業者は少ないね。
中国式雨がっぱは、ほとんど安徽省とか浙江省とか外地で作られているんだよ」
 実際、陸社長の工場でも中国式雨がっぱの生産は10年ほど前にやめており、
現在は欧米向けの輸出品に特化している。
毎日2~3000枚を生産しているという。

20年前の雨合羽を発見

 工場の応接室の壁には、レインコートや防水コートなどがズラリと並ぶ。
中でも陸社長自慢の1枚が、1980年頃作られたという中国式雨がっぱ。
20年という歳月を感じさせない新しさで、どうやら未使用のようだ。
白い薄手のビニール素材でできていて、大きさは現在のものに比べやや小ぶり。
シンプルな作りで、すっきりしたデザインだ。
 陸社長によると、雨がっぱの素材は1950年代はヤシ科の木「シュロ」の繊維が使われていたそうだが、
60年代にプラスチック、70年代にナイロンへと進化した。今でもナイロン製が主流だという。
 工場には世界各国から発注があり、手作業で一枚一枚生産している。
近年は車椅子用雨がっぱなども手掛けているそうだ。
 「最近、工場を新しく増やしたんだ。
うちの雨がっぱは愛知万博やイラク戦争の軍隊にも使われているぐらい品質が高いんだよ」
 雨がっぱ作りへのプライドを胸に、陸社長は工場の運営を続ける。

雨がっぱに魅せられた写真家

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カナダ帰りの写真家

 上海出身のカメラマン・王剛鋒さんは1989年にカナダに渡り、カナダ国籍を取得。
95年に上海に帰国した。
 帰国直後のある雨の日、街を走る雨がっぱの群集を見て、目が覚める思いがしたという。
 「当時の上海の町並みは、今と違ってもっともっと地味だったんです。
その中で、雨がっぱだけが色鮮やかに目に飛び込んできた。
5年ぶりにこの土地に立ったとき、それがとても新鮮に映ったんです」
 この風景をカメラに収めたいと考えた王さんは、上海の街を自転車を漕いで駆け回り、
一番の撮影場所を探し当てた。
それは、ある歩道橋の上だった。
 「7時半~8時ごろ、出勤時間を狙ってひたすら雨がっぱの群集が通り過ぎるのを待ちます。
カメラは濡れるし、空は厚い雨雲に覆われていて暗く、なかなか容易ではありません」

「雨がっぱは美しい」

 王さんの撮影する雨がっぱの写真は中国人にはまったく受けないが、
外国人には好評だという。
 「中国人にとっては何でもない景色なんでしょうが、
外国人にとっては中国らしい特別な景色なんです。
中国式雨がっぱは足が濡れたりして少し不便かもしれませんが、決して古くさいとは感じません」
 中国式雨がっぱを「美しい」とすら感じる王さんだが、
最近は地下鉄やマイカーの普及で以前よりその姿が減ったという。
 「群集でないと撮る意味がないんです。
雨がっぱの群集が消えてしまう前に、もっともっと良い写真を撮りに行きたい」
 王さんは今も、雨が降ると家を飛び出し撮影に向かう。

自転車屋のおばちゃん

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特に思い入れなどない

 上海で20年以上自転車を売り続けているという自転車店
「賽駿自行車行」(肇周路123号)のおばちゃん、張美娟さん。
日ごろから自転車に乗っていて、中国式雨がっぱは「自転車に乗るなら必需品。
自転車に乗るならあった方がいい」と断言する。
 日本だと傘を差しながら片手運転をする人も見かけるが、
上海では「そんなの危ない! 警察に注意されるわよ」と雨がっぱの着用を勧める。
 確かに傘がさせないとなると、雨がっぱをかぶるしかない。
さらに、「バスや地下鉄を使うのもお金がかかるし、バス停や駅から歩くのが面倒」
と言い、自転車の便利さを強調する。
 しかも週に何回かは、実家のある虹口区から新天地近くの同店まで、
片道1時間かけて自転車をこぐというから驚きだ。
なるほど、雨のなか1時間も自転車をこぐなら、雨がっぱは必須である。
 雨がっぱへの思いを尋ねたが、
「ただの雨がっぱに好きも嫌いもないわよ。濡れないために着ているだけじゃない。
安いし、見た目もまあ悪くないわよ」
と、先ほどの写真家とは対照的に、特別な思い入れはまったくない様子。
おばちゃんにとっては、生活に密着した「ただの雨がっぱ」に過ぎないようだ。

売れ行き伸び悩む

 店では中国式雨がっぱも売っている。
だが、売れ行きはイマイチ芳しくなく、
「スーパーなんかでも売っているから、1カ月に2~3枚しか売れないのよ」と少し寂しそうにする。
 それでもおばちゃんは、雨の日に安全かつ快適に自転車をこげるよう、
中国式雨がっぱを売り続ける。

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~上海ジャピオン6月18日号より

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