2007年 引っ越し特集
二胡の持ち出し、ペットの帰国、家具の意外な落とし穴
意外と知らない引っ越しの疑問に2回に渡ってお答えします
今回は引っ越し特集の前編「日本への帰国」です
知らなかったじゃダメ!
持ち込み規制あれこれ
「お土産に上海蟹を買ったんだけど、空港で没収されちゃったよ」昨年、日本の空港でこうした目に遭った人は大勢いたとか。それもそのはず。上海蟹は、昨年2月に持ち込みが禁止になったばかりで、まだあまり知られていないのだから。
このように、日本への持ち込みが禁止されているものは、なにも海賊版のDVDや偽ブランド商品など、明らかに違法なものだけではない。
冒頭の状況に陥らないためにも、規制の有無を事前に把握しておく必要がある。特に注意したいのが、「こんなものまで?」といった、予想外な物が結構多いということ。それに加え、情報の更新にも注意を払いたい。何しろ、上海蟹のように、「日本に生息する生物の生態系に影響を及ぼす恐れがある」という思わぬ理由から規制されているものもあるのだ。
日本に帰る際は、お土産を買うときも、荷物を詰めるときも、持ち込みに問題がないかをきちんと確認し、慎重に選別しよう。
太太に聞く引っ越しの成功談・失敗談
いくら規制があると言っても、やはりこのチャンスにいろいろと中国の物を日本に持ち帰りたいもの。太太の間では、帰国時に何を持って帰るかが時々話題に上るという。
「家具とか絨毯って、周りの評判いいらしいわよ。シノワズリって上海帰りっぽいし」「でも、日本の家はここより狭くなるから、家に入りきらなくて捨てちゃったって話も聞くわよ」と、こんな具合だ。
失敗するケースで最も多いのは、荷物が多すぎて自宅に入りきらない例。しかも、日本だと捨てるにもお金がかかるから厄介だ。
賢い引っ越しのためには、先人に聞くのが一番。すでに帰国した太太に聞く、オススメのアイテムも紹介しよう。
帰国を共にする相棒たち
一緒に帰国するものと言えば、中国ならではの二胡や中国家具、そして愛するペット。
そこで専門家に、それぞれの帰国事情を聞いてみよう。
二胡とニシキヘビの深~い関係とは?
「北の三千里と南の三千里」って、何のことかご存知? 実はこれ、北方の馬の毛から弦を作り、南方で捕れるニシキヘビから皮を取る楽器、つまり二胡のこと。このニシキヘビがワシントン条約の規制を受けているため、二胡は簡単に国外に持ち出せないのだ。
ではそもそも、どうして二胡にはニシキヘビの皮を使うのだろう? 二胡の販売や日本持ち込みの代理申請を手がける「みゅーじっく・すぺーす」のスタッフに問い合わせてみた。
「耐久性と音の響きを追求した結果、一番良いのがニシキヘビだと言われています。そのため、京胡やウイグルの民族楽器など、中国では伝統的にこの皮を使う楽器が多いんですよ」
なるほど。長い歴史の中で、色々な動物の皮を試した結論なのかも。ちなみに産地は?
「昔は、海南島など中国南部で捕ったニシキヘビを使っていましたが、数の減少で今は捕獲が禁じられています。最近はベトナムやタイで捕獲したニシキヘビが主ですね」
〝南の三千里〟は今も変わらないようだ。ところで、ニシキヘビ1匹で長さ10メートル以上の皮が取れることもあるが、「高級な二胡に使える部分は、1匹でひとつかふたつ分くらい」(みゅーじっく・すぺーすスタッフ)とのこと。そりゃヘビの数も減っちゃうかも……。じゃあいっそ、ニシキヘビ以外の材料にすればいいのでは?
「確かに最近は、簡単に国外へ持ち出せるよう、猫や犬など他の動物や、人工皮を使った二胡も出回っています。音はかなり違いますけどね」
むむむ、音の良さは、持ち出し手続きの面倒さと裏表ってことらしい。何と言ってもこの手続き、個人では手におえないほどややこしいもので、現状ではMSのような代行業者を利用するのが一般的なのだ(費用は手続き費300元+手数料)。ただ、みゅーじっく・すぺーすスタッフによれば、その手続きも数年前に比べて随分楽になっているとのこと。
「以前は半年ごとに変わっていた国内の手続き方法もようやく落ち着き、この1年は変わっていせん。成田空港も二胡の扱いに慣れてきたようで、最近は通過もスムーズ」
ほほう、さほど大変でもなさそう。きちんと手続きを済ませ、日本でも〝南の三千里〟の音を響かせてみては?
みゅーじっく・すぺーす
TEL:6208-5050
住所:延安西路2635号
美麗華商務中心B-103
営業:10時~20時(月~土)
10時~18時(日)
中国家具選びの意外なポイントって?
「シノワズリ」なんて言葉もすっかり一般化したこの頃、中国雑貨だけでなく、中国アンティーク家具を日本に持ち帰ろうという人も少なくない。ところが、そこには見落としがちなポイントがある。
「よくあるのが、買った家具が大き過ぎた、という話。なにせほとんどの人は、日本に帰れば上海より狭い部屋に住む訳ですから」
そう話すのは、「ジェニーズ・アンティークショップ」で中国家具の日本販売窓口を担当する廣瀬久美子さん。大きくて使いづらいだけでなく、極端なケースでは、日本の住宅のドアを通らなかった、エレベーターに入らなかった、などの例もある。コツは、「ショールームで見たものより、ひと回り小さいものを購入すること」(廣瀬さん)とのこと。
ちなみに、実際にアンティーク家具を購入するのは、欧米人、特にアメリカ人が多い。廣瀬さんの感覚では、日本人が買う家具の8~9割はリプロダクト(複製)した〝アンティーク調〟家具だそうだ。
「日本の住宅には、和風の家具や洋風の家具もあるでしょうし、そこに古いものがあっても馴染みにくいんです。また、新しく作った家具の方が長持ちする、というメリットもありますよ」
日本の住宅で、実際に使うことをしっかりイメージすること。家具選びのポイントは、そこにあるようだ。
Jenny’s Antique Shop
TEL:137-6429-4282(廣瀬)
住所:?青平公路1号
営業:10時~17時半
マイクロチップはどこで役立つの?
ペットを日本へ連れて帰るには、マイクロチップの装着が必須。これは、ペットを飼っていない人でもなんとなく知っているのでは? でも、そもそもこのチップ、一体何のために必要なのだろう。
「主な役割は、空港でのペットの取違えを防ぐことです」と話すのは、申普寵物医院の柴敏先生。
「空港には他にも多くのペットがいますからね。色や大きさの特徴くらいでは、飼い主じゃないととても区別できないんですよ」
う~ん。確かに、茶色くて小さい犬、と言われても同じような犬はたくさんいそうだ。では、ペットを見分けるために、マイクロチップに搭載されている機能とは一体どんなものなのだろう。
「15桁の数字が記録されています。それをスキャナーで表示させることで、搭乗したペットと同一であるかを確認することができるんです」
なるほど。確実に飼い主に送り届ける。それが、マイクロチップの任務ということか。
さらにその番号から、飼い主の名前や住所まで調べることができると先生は言う。要するにこれは、決して紛失することのない迷子札なのだ。
こうしたマイクロチップの装着義務は、諸外国でも取り入れられている。ただし、手続きの複雑さにかけては、日本はダントツだ。
「中国から日本へのペット渡航手続きには、血液検査や健康診断などたくさんあります。一連の手続きは、過去の受診経過によっても細かく異なるので注意が必要です」
先生によれば、検査日をたった1日間違えただけで、半年分の検査を始めからやり直すことになった人もいたとか。ただでさえややこしい上に、時間がかかるから大変だ。
とは言っても、日本での再会を果たすために、確実にマイクロチップを装着したい。
←マイクロチップを装着する注射器。チップはすでに針の中に仕込まれている。
海出入境検験検疫局服務中心
申普寵物医院第3門市部
TEL:6418-9236
住所:肇嘉浜路361号
営業:8時半~21時
早速行動を開始しよう!
スムーズな引っ越しをお手伝い
引っ越しはなにも、荷物の整理や梱包など、家財道具の移動だけではない。住居の解約申請に始まり、各種証明書類が必要な子供の転校・転入手続きなど、思っている以上に手間も時間もかかるもの。
だからこそ、面倒な運送関係はプロの業者にお任せしたい。中には、中国語で書かれた各種申請書類など、面倒な手続きを丁寧にアドバイスしてくれる業者もあり、一連の作業をスムーズにこなせる。
引っ越しシーズンの2月から3月にかけては、業者にとっても多忙な時期なので、お願いするなら早めに予約しよう。
~上海ジャピオン1月19日発行号より