新婦のお迎え、喜糖、黄道吉日――。
上海の結婚式では、日本では見慣れない伝統的な風習がたくさん。
さらに、最近は給与水準の伸びも相まって、結婚写真など、伝統+個性を表現した式を望む人が増えているとか。
今週は、上海最新結婚事情をリポート!
ゼクシィ編集長が語る
上海の最新結婚事情
日本では、結婚を考える人の9割以上が参考にしているといわれる、結婚情報誌『ゼクシィ』(中国名・『大衆』)。
実は中国でも、上海、北京、広州の3都市にて出版している。
中でも、毎月約6万部を発行と、最大の発行部数を誇る上海は、ゼクシィがターゲットとする「自分らしい結婚式」をしたい人が最も多いとか。
そこで最新の結婚事情について、上海ゼクシィのAsa編集長に話を聞いた。
昨年は14万組が入籍!
「80後」の結婚ラッシュ
? 上海市民政局の統計によれば、2008年、市では前年比2万組増となる、14万組ものカップルが入籍を届け出た。
上海在住の日本人の中にも、中国人の同僚や友人の中に、結婚した人がいたこともあったのではないだろうか。
これは、中国でベビーブームとなった80年代生まれの人たちが結婚適齢期に差し掛かっているためだ。
昨年後半の金融危機から、09年初め頃には結婚数減少の見通しとの報道もあったが、蓋を開けてみれば、この上半期減少傾向は特に見られないという。
こうした状況について編集長は「結婚式の際の費用負担は両親が持つことが多いので、不景気の影響を直接的にはあまり受けなかったのでは」と指摘する。
両親の太っ腹っぶりには、頭が下がる。
たった1人の子どものために、家族・親戚が一丸となって盛大に送り出しているようだ。
挙式予算は増加傾向
平均予算は200万円!
また、編集長によると、ここ数年、上海の物価や給与の水準はインフレ傾向にあったので、これに合わせて結婚式での消費額も伸びているとか。
披露宴におけるテーブル平均単価では、04年に1524元だったのが、08年にはなんと2612元に跳ね上がっているのだ。
前述のゼクシィの調査によれば、08年の結婚にかける平均予算は約15万元。
日本円にして約200万円を消費している計算になる。
日本の平均費用でも、250~300万円ほどと言われるので、給与に対する割合を考えると決して安くはないだろう。
この予算に含まれるのは、表1の内容が主。
中でも大きな割合を占めるのは、もちろん披露宴だが、ジュエリーもまた大きな出費のひとつだ。
上海では、婚約指輪と結婚指輪の両方を贈るのが一般的。
同調査でも、8割以上の人が両方購入と回答している。
各予算は、婚約指輪が約1万6千元、結婚指輪が約8千元。
日本円にして計約36万円と大奮発なのだ。
「黄道吉日」を狙え
5、10月週末は争奪戦!
?? 伝統行事を重視する上海。日取りについても、また多くの人が気にかけている。
ゼクシィ編集長の話によると、最も人気の日取りは、5月または10月の休日で、何をするにも縁起が良いと言われる「黄道吉日」であれば、争奪戦となり、1年前にはほぼ予約で埋まってしまうという。
この「黄道吉日」とは、古代中国で天文学用語のひとつだったもの。
元々は、計算により算出された天災の起こりにくい日を指し、重要な催事の際に重んじられてきたことから、転じて吉日を指すようになったとされる。
ブライダル会社の中には、こうした良い日取りを記入したカレンダーを贈っているところもあるそうだ。
もちろん、末広がりの「八」のつく日も、やはり人気が高い。
披露宴ほぼ100%夜開催
新郎の行く手が阻まれる!?
「上海の披露宴は100%近く夜開催なんです」。
そう話すのは、ワタベウェディング副総経理の増谷氏。
同社は昨年約200組の挙式をプロデュースしており、その多くが夜挙式だというのだ。
この理由は、朝から始まる伝統行事にあった。
まずは「迎親」と呼ばれる新婦のお迎え。
新婦は朝8時頃からメイクやドレスアップなどの準備をし、自宅で待機。
この間に友人や親戚らは新婦の家に到着し、新婦を迎えにくる新郎の邪魔をするのだ。
新郎がウエディングカーに乗って到着すると、友人たちから「あなた誰?」「歌を歌え!」などと新婦宅への侵入を阻まれる。
新郎はここで、用意しておいた紅包(現金)で買収して通してもらったり、出される課題をやり遂げたりして、ようやく新婦のいる部屋にたどり着くことができる。
そして、一同の前でプロポーズし、両親に「娘さんもらっていきます!」と言って、ようやく出発となるのだ。
この後、新郎の家に向かい、新郎両親からジュエリーを贈られたり昼食をとったりした後に、披露宴会場へと向かう。
披露宴会場は豪華さ重視
人気は一戸建てレストラン
?会場で最も重視されるのは、周りの雰囲気や豪奢な内装などを含めた「環境」。
また披露宴での料理は90%以上が中華を選択するため高級中華レストランに自然と人気が集まる。
最近では、4ツ星、5ツ星の人気が上がっている。
さらに、こだわり派には、ガーデン付きのゲストハウスも人気だ。
また装飾は会場と別のプロデュース会社にお願いするのが普通なので、同じ会場でも全く違う顔になるようだ。
?
参列者の全員が
新郎新婦と写真撮影!?
?? ゲストが上海で披露宴会場に到着して、まずすること。
それは「新郎新婦との写真撮影」だ。
日本ではあまり見かけない習慣なので、初めて上海で披露宴に列席する場合は戸惑うことも多いだろう。
ゲストが1000人いたとして、1人ずつではないにしても基本的に1000人と撮影するというこの儀式、どういった由来があるのだろうか。
「結婚は喜ばしい出来事ですよね。中でも新婦はその日一番『喜気(幸運)』があるとされています。『喜気』を分けてもらうために新婦に近づく時間が設けられているんだと思いますよ。もちろん記念の意味もあります」と、ゼクシィ編集長は話す。
また、式や式後に配られる「喜糖」と呼ばれるチョコレートやキャンディなどのお菓子も「喜気」を分けるものとされる。
次回結婚式に招待された場合は、新婦から「喜気」をたくさん分けてもらおう。
欧米風も取り入れて
ブライズメイトが一般的
?? 伝統的な習慣に加え、海外の新たな習慣もどんどん取り入れられている。
その代表的なものが、ブライズメイト。
その日1日中、新郎新婦について様々なお手伝いをする役で、中国語では「伴郎・伴娘」と呼ばれる。友人が務めることが多いので、指名されたら快く引き受けよう!
新郎新婦は家族と同卓に
〝ガゼボ〟で誓う愛
?? 上海の結婚式場には、新郎新婦の鎮座する高砂がなく、家族と同じテーブル席についているのが一般的。
また、家族席は日本であれば会場の最後方に位置するが、上海では会場の最前列というのが普通だ。
また、結婚の誓いなど挙式に含まれる要素は、披露宴の一部であることが一般的。
これを行う場所として、バージンロードの真ん中に設けられるのが「ガゼボ」という台。
周囲360度に開放された造りなので、見られる立場は、少し恥ずかしい?
お色直しは平均3回
濃い色のドレスが人気
?? ゼクシィ編集長によれば、お色直しは平均3回と、少なくない。
基本はウエディングドレス・カラードレス・チャイナドレスの3タイプ。ウエディングドレスでは多くの人が白を選んでおり、かつては、お葬式を連想させるということで敬遠されていた色も、いまやウエディングドレスの主流だ。
形としてはスカート部分がふんわりとしたプリンセス型が人気でゼクシィ300組調査では、60%以上がこの形を選んだという。
このほか、スタイルの良く見えるAライン、マーメイド型も人気。
ドレスの色は、日本の淡い系と異なって、くっきりとした濃い色を選ぶ人が多いようだ。
なお、チャイナドレスでは赤や金が多いという。
なお、参列の際にチャイナドレスを着用すると、新婦より目立ってしまう可能性があるので、避けた方が無難。
演出にもコダワリを
バルーンの中から登場!
?? かつて上海の披露宴といえば、飲食とおしゃべりを楽しむ場という要素が強かった。
しかし最近では、演出を重視して、ゲストにより楽しんでもらおうという人も増え始めている。
一般的な演出として多いのは、シャンパンタワーやキャンドルサービス。
この2つは多くの人が取り入れているという。
また、海外とのつながりを持つ人が増えたこともあって海外の挙式の様子を知り、披露宴での演出にこり始める人も増加中だ。
ゼクシィ編集長は「特に人気なのは、氷を割って指輪を取り出す演出ですね。
これは希望者が多いです」とのこと。
さらに注目を集めているのが、バルーン演出。
新郎新婦が大きなバルーンに包まれて登場し、そのバルーンに小さい頃からの2人の写真のスライドショーを映し出す、2人が出会って大きくなって、そしてバルーンが割れて登場! というものだ。
経済の発展につれて、より多様化の様子を呈している上海の結婚シーン。
縁あって滞在した上海で結婚式に呼ばれたら、中国式を思う存分楽しもう!
~上海ジャピオン6月19日号より