秘密の老洋房

大富豪の〝秘密の花園〟

かつて「上海第一私人花園(上海一の個人庭園)」と称された「宝慶路3号花園住宅」。1925年にドイツ人によって建てられたこの〝花園〟を、1930年「染料大王」と呼ばれた大富豪・周宗良が購入。当初は2棟のドイツ式建物しかなかったが、その後、周氏が7年の時間と巨額の資金を投じて拡張工事を行い、5棟の独立した洋館を建てた。建材はすべてフランスから輸入したという。5棟は建造時期が異なるため、風格もそれぞれで、壁材も違う。

4000平米に及ぶこの〝秘密の花園〟はその後、様々な持ち主の手に渡ったが、2013年から修繕工事が行われ、17年、国内初の「交響音楽博物館」として、一般公開されるようになった。

館内には、中国の交響楽に関する300点余りの展示物が所蔵されている。

イギリス式庭園住宅

1932年に建てられた、レンガと木の結合型の3階建てイギリス式庭園住宅。イギリス式建築様式の中にも、スペインの風格も見られる建造物である。2011年、「徐匯区文物保護単位」に認定され、14年に「上海市文物保護単位」に昇格した。

文化運動の先駆者であり、著名な作家もである夏衍(1900~95年)が、1949年から56年まで住んでいた。この旧居では、夏衍の上海での生活、仕事、創作活動の重要な軌跡を見ることができる。1階では、「夏衍と上海」をテーマに、新聞、翻訳、創作話劇、映画等、〝海派文化〟で知られる夏衍の数々の著作が展示されている。2階には、書斎や寝室など、夏衍の居住空間を再現。激動の時代に生きながらも、モダンな暮らしを忘れなかった彼の生き様が垣間見られる。

宮廷で優雅に読書を

総投資額1億7000万元、3年余りの修繕・拡張工事を終え、2018年10月にリニューアルオープンした「楊浦区図書館」。総面積は1万5000平米、1万冊以上を所蔵する巨大図書館だ。

前身は、1936年に建てられた「旧上海図書館」。その後、2度の修繕工事が行われて、現在に至る。

見どころは、北京の故宮を彷彿とさせる、鮮やかな黄色の瓦で作られた「重檐歇山式」と呼ばれる形の屋根。そして、西安の鼓楼を思わせる門。また、館内の天井の精巧な彩色画も見逃せない。今回の修繕にあたり、100人以上の工匠が改修に関わったという。

開館直後から、館内には静かに本を読んだり、勉強をしたりする市民が後を絶たない。芸術的な空間であるのはもちろん、市民の日常生活に欠かせない場所でもある。

濃密な生活空間が広がる

イギリス人が設計したとされる、1930年に建てられた、全250部屋の巨大アパート。元は警察のオフィスや宿舎として使われており、留置所として使用されていた部屋は、今でも鉄格子の跡が残る。アパートはロの形をしていて、全ての住居の入口を内向きに設置。各階層が長い廊下で一続きになっており、廊下や階段には生活用品が溢れかえる。このような建築様式は、中国で「筒子楼」などと呼ばれ、濃厚な近所付き合いのある、古き良き建築様式として多くのファンを持つ。

2004年に上海市の優秀歴史建築に指定され、近年は、チャウ・シンチー(周星馳)監督の映画『功夫(邦題:カンフーハッスル)』に出てくるアパート「猪篭城寨」にそっくりだと、人気を集めている。

 

~上海ジャピオン2019年6月28日発行号

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