上海の結婚式の流れ
中国では、56の民族が生活を営み、
それぞれ独自の結婚風習を持つ。
全体的に、伝統を重んじる傾向が強いが、
上海などの都市部では、
海外文化の流入により、
西洋式ウエディングが流行。
現在はこれに、中国ならではの形式を
合わせたプランが主流のようだ。
ではまず、それらを含む、
一般的な式の流れを紹介していこう。
式当日の朝、新郎は新婦の実家へ、
彼女を迎えに行く。
これは「迎親ying2qin1」と呼ばれ、
地方では輿や楽隊を引き連れる、
にぎやかなイベントである。
しかしこれに比べ、都市部では、
ウエディングカーに乗って向かうのが一般的。
そう聞くと、西洋文化の影響を強く感じるが、
到着時には爆竹を盛大に鳴らし、
中国独特の演出も忘れない。
新郎が新婦の部屋へ入ろうとすると、
介添人や親戚が邪魔する。
「愛の言葉を聞かせろ」、
「唐辛子を食べろ」などと、
半ば無茶な試練を乗り越えてやっと、
新婦との対面がかなう。
ワイワイと盛り上がるイベントで、
「風船割りゲーム」など、
娯楽性の高いものも。
無事にクリアすると、次は、
新郎が一同の前で正式にプロポーズし、
両親に挨拶をする。
そして、そのおめでたいムードのなか、
縁起物のハスの実やナツメなどを食べてシメる。
全行程は2時間ほどで終わり、
その後は披露宴会場へ。
開場時間になると、
新郎新婦が入り口に立ち、
飴やタバコなどを持って参列者を迎える。
全員入場を終えたところで、
いよいよプログラムが開始。
順番は多少入れ替わるが、
写真撮影やスピーチ、余興、
そしてケーキカットやシャンパンタワーなど、
日本とそう変わらないイベントが繰り広げられる。
しかし後半には、伝統的な習わしが、
式のメインとして控えている。
新郎新婦が、腕を交差してワインを飲み合う
「交杯酒jiao1bei1jiu3」に、
互いに、両親に、客席に各3回ずつお辞儀をする
「三鞠躬san1ju1gong1」。
新郎新婦は壇上で乾杯したあと、
引き続き各テーブルを回って、
ひとりずつ杯を交わし、
そこかしこで乾杯の嵐が吹き荒れる。
このあとお色直しがあったりなかったりするが、
ここまできたら、式はほぼ終わりと言ってもいい。
中国では、終了時間を明確に設定していないため、
みんな好きな時に帰り始める。
もしタイミングがわからなかったら、
新郎新婦の親戚が帰るころに席を立つとよいだろう。
では次ページからは、
シチュエーション別中国式マナーを紹介していく。
招待状への返事
「恭喜恭喜」でお祝いを
祝い事には必ずと言っていいほど
紅色を使う中国。
招待状にもやはり紅色メインのものが多い。
返信用ハガキは同封されないため、
参加の可否は、
電話か手紙を自分で用意する。
参加不参加に関わらず、
できるだけ速やかに返事をすること。
電話の場合、
「恭喜恭喜gong1xi3gong1xi3」など、
まずはお祝いの気持ちを伝えよう。
その際に参加の意思を伝えれば、
別途手紙を送る必要はない。
また、招待状の到着以前に口頭で
同様のやり取りがあった場合、
招待状に「備忘bei4wang4」と、
書かれることがある。
この場合も、取り立てて返事をしなくてもいい。
もし、どうしても都合がつかず参加できない時は、
理由を述べてお詫びを。
また、招待状には名前のない家族を
同伴したい場合、
主催者への確認が必ず必要だ。
日本式フォーマルNG
避ける色は白・黒・赤
日本の結婚式では、
スーツやアンサンブルなど、
最低限の正装が礼儀だが、
中国においてはTシャツにジーンズなど、
普段着で参列しても全く問題ない。
これは、着飾って主役より目立つと、
逆に失礼だという考えによるもの。
とは言え、都市部では最近、
ラフすぎるのも好まれない。
高級レストランで食事、
という想定で服を選ぶとちょうどよいかもしれない。
男性の注意点として、
日本の正装である、
黒いスーツ+白のネクタイの組み合わせがある。
これは、中国では葬儀用の色に当たるため、
お祝い時には厳禁。
女性が気をつけるべきは、
白か黒、赤一色のドレスはできるだけ避けること。
黒は葬式を連想し、
白はウエディングドレス、
赤はチャイナドレスと被るため、
どんな組み合わせにしろ、
主役を立てることを念頭に服を選びたい。
赤地に「囍」のご祝儀袋
「八」と「六」で縁起をかつぐ
中国版のご祝儀袋「紅包hong2bao1」。
スーパーや文具店で購入できるので、
表に「結婚」や「囍」とあるものを選ぶこと。
中封筒には、2人の永遠の愛を願い、
「祝zhu4(新郎の名前)和he2
(新婦の名前)永結同心相親相愛
yong3jie2tong2xin1
xiang1qin1xiang1ai4」と
「(自分の名前)恭賀gong1he4」と記せば完璧だ。
包む額は、主催者との関係や本人の収入で変わる。
伝統的に偶数が吉祥とされ、
中でも、繁盛を意味する
「発財fa1cai2」の「発」と
発音が似た「八」や、
物事が順調に進むという意味の
「順溜shun4liu1」の「溜」と
同音の「六」が好まれる。
現在、上海では600~1000元が相場というが、
経済的に苦しい人は333元、
学生なら188元、168元でもよい。
入場時間や乾杯マナー
不参加でも紅包を渡す
そのほかの注意点として、
式当日は、遅刻厳禁。
招待状に記されるのは、
入場開始を指すことが多いため、
その30分前には会場入りしたい。
入口で本人や家族に迎えられたら、
まずはお祝いの言葉と、
招待してくれたことへのお礼を伝えよう。
式の間、乾杯やタバコを勧められたら…
吸えない人は、
「我不吸煙wo3bu4xi1yan1」と言えば、
問題なく避けられる。
お酒に弱い人も、「随意sui2yi4」と言えば
一気に飲まずに済む。
しかし、新郎新婦がテーブルを回る時くらいは、
礼儀として乾杯した方がよい。
この時は、紅包を本人に直接手渡す、
絶好のチャンスでもある。
周りの様子から、タイミングを計ろう。
最後に、挙式に不参加の場合でも、
招待された以上、紅包を送るのが礼儀。
式当日までに、手渡しか郵送で。
数々の試練にたちむかう
伴郎の仕事とは?
伴郎とは、花婿の介添人のこと。
伴郎の仕事は、
新郎が新婦の家へ迎えに行く前の、
ウエディングカーの飾りつけから始まる。
飾りつけができたら、
そのまま新郎と一緒に新婦の家まで行くのだが、
この先に待ち受ける試練でも、
もちろん新郎の手助けをする。
ここで、「腕立て伏せ50回」や
「アイスの一気食い」といった、
様々な試練を新郎の代わりにこなしつつ、
「開門!」と叫んで、
なんとかドアを開けさせるのだ。
そしてもうひとつ、
伴郎の最大の仕事は、
式の本番中に行われる。
中国の結婚式では、
新郎新婦は客の1人1人と
それぞれ乾杯をしなければならない。
しかし、当然限界はやって来る。
それを手伝うのが、伴郎というわけだ。
伴郎を務めると、
大抵の人はベロンベロンに
酔っぱらうまで飲まされるので、
覚悟しておこう。
中国版ブライズメイド
気づかい必要な伴娘の仕事
伴娘は、伴郎と同じく
花嫁の介添人を務める。
式当日は、1日新婦に付き添い、
新婦が歩きやすいように、
ドレスの裾を持つなど、
要所要所でアシストをする。
新婦に常に注意を向け、
飲み物を差し入れたり、
彼女が涙を浮かべればハンカチでぬぐうなど、
細かい気づかいが望まれる。
また、新郎が新婦の部屋に入るに当たっての
試練の内容は、伴娘が考えるものがほとんど。
2人の愛を盛り上げるものや、
面白おかしい内容など、
場を盛り上げるゲームを数種類用意する。
そのほか、「紅包」の保管や、
リングの受け渡しをしたりと、
重要な役目も。
また宴会中、伴郎が酔い潰れたら、
高確率で伴娘に乾杯の仕事が回ってくる。
女性ということで、
飲まずに許される場合もあるので、
お酒が弱い人は、
事前に新郎新婦に伝えておこう。
~上海ジャピオン2012年11月30日号