夏上海!夏カレー

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編み出した秘密のレシピ

今年2月、新天地から1本西へ入ったところに、「スモール・スパイス」はオープンした。

オーナーシェフによると、もともと「カレー店」にするつもりではなかったが、唯一のご飯メニューであるカレーが、思いのほか好評を博したのだとか。今では10席ほどの店内に、多様な国籍の常連客が集う、〝カレーの名店〟となっている。

同店のカレーをひと口頬張ると、まず爽やかな甘みと酸味を舌に感じる。タマネギにニンジン、セロリなど、カレーに欠かせない食材のほか、「秘密のレシピ」として、野菜2種と数種のフルーツを入れているのだという。そしてもちろん、ガラムマサラに秘伝のスパイス。これも独自に編み出したレシピ通りにプラスし、3日かけて熟成され、毎日カレーファンを唸らせる味を作り出す。

カレーとの相性抜群

カレーメニューは、ポークにビーフ、夏にぴったりの野菜、そしてふわとろの卵を乗せた、カレーオムライスの4種。どれもリピーターがこぞって食べにくる人気のメニューだが、今回は女性を中心に好んでオーダーされる「カレーオムライス」を紹介しよう。

これは、名前から想像できる通り、カレー味のチキンライスを1人前丸ごと卵で包み、さらに上からカレーをかけたものだが、この卵が侮れない。見た目薄く焼かれているようなのに、その表面はしっとりと、ご飯に触れる裏側は半熟の状態なのだ。スプーンで掬う度、ほんのり滲み出る卵のとろみが、カレーのスパイシーさを和らげてくれる。

また、カレーと一緒にオススメなのが、これもオリジナルレシピの「ラッシー」(35元)や「チャイ」(38元)。脂肪分が刺激から粘膜を守ってくれそうだ。そのほか、こだわりの単品メニューや、今後展開予定の「フレッシュジュース」など、同店はまだまだ目が離せない。

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始まりはまかない飯から

昨年10月にオープンした上海高島屋の地下1階にある、「シロクマカレー」。同店は北海道発、現在は日本全国に店舗展開するラーメン店「むつみ屋」のまかない飯から生まれた。むつみ屋に足繁く通う常連客の1人が、ある日、このまかない飯であるカレーをリクエスト。口コミで評判は広がり、形の上ではなじみ客だけの隠れメニューだったが、竹氏の心にカレー店を開く夢が芽生えた。そして2010年、その夢が花開き、今や関東地方に5店、中国香港に3店、そして上海1号店が、この高島屋にある。

母のアレンジを思い出す

同店のベースカレーは、ビーフ、ポーク、チキン、激辛ポークに野菜の5種(23~25元)。これに好みで「トッピング」(8~20元)をプラス、或いはオススメメニューから、同店オリジナルの一品を選ぶ。

現在、同店スタッフのイチオシという「ポークパテチーズオムカレー」(55元)は、半熟の卵の上に中華風ミートボール「獅子頭」がトッピングされ、トロトロのチーズをかけたもの。まずはカレーとご飯だけ、それから卵も一緒に、さらに獅子頭をスプーンで割って…と楽しみ方は幾通りもあり、最後のひと口まで飽きさせない。またご飯そのものにビーフカレーを絡め、チーズを乗せオーブンで焼き上げた「ビーフカレードリア」(65元)は、濃厚ながらも素朴な味わいだ。遠い昔、カレーの残りを翌日アレンジしてくれた、母親の記憶が蘇る。

カレーを食べに来た客を出迎える、コックコートを着たシロクマたちも、何とも愛らしい。今後、淮海中路に開業を控える「上海環貿広場」に、上海2号店をオープンする予定とのこと。忘れてしまいかけたカレーの記憶を、取り戻しに出かけよう。

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香ばしい燻製の香り

日本は東京・神楽坂にある江戸前炉端焼「kemuri」が、昨年末、上海1号店を開いた。同店のウリは自家製の燻製メニューだが、これをカレーで楽しめるという、珍しいメニューがある。その名も、「燻製カレーライス定食」。

同メニューはランチタイムと土日のみの提供で、「燻製トッピングなし」(38、48元)と「トッピング付き」(53、63元)が選べる。カレー自体も燻製してあるが、やはりここは「トッピング付き」を選択したい。トッピングは豚バラと卵、チキンにチーズ。チョイチョイとつまんで、その香ばしさを楽しみながら食べるもよし、またチーズをルーに混ぜ込み、溶かして食べるもよし、自分だけのオリジナルの食べ方を創造しよう。

手間ひまかけてご提供

さてこのカレーだが、オーナーの岡田氏に尋ねたところ、ルーを作る段階ではこれといって特別なことをしているわけではないそうだ。ただしルーができてから丸1日寝かせ、その後70分燻製する。そしてバターで炒めておいたタマネギ、ニンジン、ピーマン、トマトなどを圧力鍋にかけ、くたくたになったところでルーにイン。さらにもう一度70分燻製してやっと完成、というわけだ。毎日の手間ひまかけた作業を経て、私たちの口へ運ばれる。

同店はこのカレー定食目当ての常連客も多いが、夜メニューで人気なのが「キノコ麻薬鍋」(288元/2~3人)だ。これはマツタケにトリュフ、ポルチーニ茸を含む10種のキノコが入っている。ベースは鶏ガラだが、高級食材を一気に味わえる、まさに〝麻薬〟級のヤミツキ度を見せているらしい。ほかにも黒毛和牛にフォアグラなど、良質の食材を使用した贅沢メニューがそろっている。

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家族経営の温かい店

上海では数少ない、個人経営のカレー専門店「バンサンカン」。劉さんという女性が切り盛りする同店は、オープンして早13年半になるという。

日本人が作ってくれたカレーを食べてすっかり魅せられてしまった劉さんは、自分でも作れるようになりたい、と研究を重ねた。そのうち、劉さんのお父さんも〝日本のカレー〟に関心を持ち、いつのまにか2人で店を始めることに。今でもお父さんがキッチンに立ち、従妹がホールを務めるという、仲のよい家族経営を続けている。

人気の夏メニュー

同店のカレーメニューは、実に多彩。定番のポークやビーフ、チキン、カツカレーにハンバーグカレーはもちろん、カレー屋に置いてありそうと思われるものはすべて取りそろえている。

日本では、夏のカレーといえば野菜を使ったものだが、同店も例外ではない。素揚げしたナスにカボチャ、エンドウマメをちりばめた「野菜カレー」(45元)のポイントは、夏野菜を代表するゴーヤ。ほんのり感じる苦味が、暑さで麻痺しかけた味覚に働きかける。さらに「トマトとアスパラのカレー」、「豚肉とキムチのカレー」(各45元)など、夏+日本人=を計算し尽くしたかのよう。

また、1年を通して最も出るメニューは? と尋ねたところ、「一番手がかかるメニューが、一番好まれている」と劉さんが苦笑いするのは、「焼きカレー」(55元)。ご飯にカレーをかけ、バーナーで炙る。それから、全体にまんべんなくチーズを乗せてまた炙り、最後に卵を落として3度目のバーナー登場である。焦げ目はつけるが、黒くなってしまわないよう気を配りつつの作業なので、このオーダーが入ると、キッチンはかかりきりに。しかしひとつひとつ、手をかけるからこそ、お客さんはやって来るのだ。

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ローカル街に佇むカフェ

淮海中路から1本裏へ入った、活力あふれるストリート、興安路。どローカルなムードがあふれるこの通りだが、果物屋や食堂と並び佇んでいるのは、紛れもなく1軒のカフェだ。

「デモカフェ」はカフェにしては珍しく、深夜まで営業するブックカフェだ。日本人の料理人監修というメニューの中には、「バターライス」や「ねこまんま」(各30元)など、テレビドラマ『深夜食堂』を彷彿とさせるものも。さらに、『BRUTUS』や『ku:nel』など日本語雑誌を棚にそろえ、テーブルや椅子は温かみのある木製、とくれば、日本人の心は鷲づかみ状態に。

甘みから辛さへと

同店では、パスタにピザ、チャーハンのほか、サラダや一品料理も用意する。その数、全50と、とてもカフェとは思えないラインナップだ。そして一番人気はもちろん「ソーセージカレー」(45元)。

ベースのカレーは、一見したところ、ごく普通の色をしており、そこへ別途火を通したジャガイモとニンジンを加えている。ひと口舐めてみた感想は、甘い。が、その直後、じわ~っと辛みが広がってゆく。ご飯とルーの境目を埋めるように乗せられたソーセージにぱくっとかぶりつき、ご飯にルーを絡めて一緒に口へ放り込む。ソーセージから滲み出る肉汁の旨味、カレーの刺激、そしてまたソーセージに練り込んだハーブの香り…様々な味わいが、次々とリフレインのように訪れる。

日本では〝カフェのカレー〟も一通りの評価を得ているが、上海のカフェもどうやら侮れないようだ。同店は前述のように、ランチから夜食まで利用できる。平日はさくっとご飯に、休日には本を持参してのんびりと過ごしてみたい。

 

~上海ジャピオン2013年7月12日号

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