世界一のケンカレース WTCC(世界ツーリングカー選手権)観戦記

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世界で人気のケンカレース

カーレースと聞いて、日本人の多くがまず思い浮かべるのは、フォーミュラカーが時速200~300㌔で爆走する、迫力満点の「F1」ではないだろうか。それに比べツーリングカーレースは、日本ではいまいちマイナーかもしれない。しかし実は、イギリスの「BTCC」や中国の「CTCC」など、各国で選手権が開催される、世界的に人気の高いモータースポーツであり、その最高峰が今回紹介する、FIA(国際自動車連盟)管轄の世界選手権「WTCC」なのである。

そもそもツーリングカーとは、一般的に生産されている排気量2000cc程度の乗用車、いわゆる〝ハコ車〟を指す。WTCCでは、年間生産台数2500台以上で、4つ以上の座席を有する量産型乗用車を、厳格な規格(①)に基づいて整備し、レースを行う。このように厳しく締め付けることで、豊富な資金を持つ大手自動車会社が、金に飽かせて最新の部品を頻繁に投入し優勝! なんて退屈な結果にならないよう配慮されているのだ。

また特徴的なのが、時にクラッシュを起こすほど押し合い、前に出ようと、超接近戦を繰り広げる点。その様子は、〝クルマの格闘技〟と称されるように、攻撃的かつエキサイティングで、各国で多くの人が夢中になっているのも納得できる。

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スタートするなり、激しいポジション争いを展開

今年は12カ国で開催

大会は、約1年かけて各国のサーキット場を巡る。今年度は3月のイタリア戦を皮切りに、全12カ国でレースを開催。今回取材班が観戦した上海戦は11試合目となり、後は11月15日(金)~17日(日)の最終ラウンド・マカオ戦を残すのみ。試合は基本的に、それぞれ予選と決勝1日ずつで行い、予選では1周の最速タイムを競う。この上位12台が2次予選に進出し、その結果、上位5位がポイントを獲得し、決勝のグリッド(隊列順位)も決まる。

決勝では2レースが行われ、1位から10位まで順に、25、18、15点…と各ポイントが与えられる。ちなみに決勝第1レースでは、2次予選で早くゴールした順にグリッドが組まれるが、第2レースでは上位10台が逆に並んでスタートする「リバースグリッド」を採用。これにより、2レースの内容が変わり、エンターテイメント性の高い試合運びとなるのだ。

では基礎知識を頭に入れたところで、次ページからは上海戦をレポート! 読み終える頃にはきっと、WTCCの虜になっている…はずだ。

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企業と個人が同時に戦う

11月2日(土)午前、取材班は期待に胸を膨らませ、上海国際サーキット場の門をくぐった。本日予選が行われる「FIA世界ツーリングカー選手権(WTCC)」では、メーカーが運営する「ワークスチーム」と、個人参加の「プライベーター・チーム」に所属するレーサーたちが一斉に走り、「マニュファクチャラーズ・チャンピオンシップ(ワークスのランク)」と「ドライバーズ・チャンピオンシップ(個人ランク)」、そして「ヨコハマトロフィー(プライベーター所属の選手ランク)」を争う。予選は、第1試合20分の後、修理15分を挟み、第2試合10分を予定。普段、車に興味がない人でも、中だるみせず楽しめそうだ。

注目のホンダチーム

さて今季の注目は、今年初のフル参戦となる、我らが日本メーカー「HONDA」のワークスだ。このチームから出場するのは、元F1レーサー、タルクィーニとモンテイロ。さらに、ハンガリーの若手実力派、ミケリスもプライベーターとしてホンダ・シビックを駆る。このホンダ勢は今季、スロバキア戦でトップ3を独占するなど華々しい成果を残し、上海戦では40㌔のウェイトハンデが課せられた。

また今回は、ここ数年圧倒的な強さで3年間トップに君臨し続けた「シボレー」の元ワークスがプライベーターとして登場。所属選手のミュラーは、一昨年ドライバーズタイトルを獲得し、今季も抜群の成績を誇る。誰もが認めるハコ車レーサーの王者に、精鋭たちが挑む!

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予選を制したのはシボレー

予選第1試合は、14時10分に開始。全31台が1周の最速タイムを競い、上位12台が通過できる。1周目、まずはモンテイロが快調な滑り出しでトップへ。0・1秒を巡って熾烈な争いを繰り広げ、最終的にミュラーが1分54秒132でゴールイン、残りの11位も確定した。

そして2次予選。上海サーキットは路面が荒く、タイヤの消耗が激しい。ブワォン! というエンジン音を響かせながら、車同士がぶつかり合う。結果、WTCC新記録となる1分53秒486を刻み、「ポールポジション(最前列の最も有利な位置)」をゲットしたのは…さすがの〝王者〟ミュラー。ちなみにこのタイムは、なんと時速179・2㌔で走っていた計算となる。日本最速のジェットコースター、富士急ハイランドの「ドドンパ」の最高時速が約172㌔と言えば、その速さがおわかりいただけるだろうか。上位6位をシボレー勢、後続3位をホンダ勢が独占し、予選は終了した。

決勝試合直前に雨…!

3日(日)、決勝開催当日。会場周辺には企業各社がブース展示やゲームコーナーを設置し、賑やかな様相を帯びる。会場内でもまた、おそろいのチームTシャツを着たサポーター軍団に溢れ、決戦ムード満点だ。そしていよいよ、サーキットに各車が並び…とその時、急な雨が! これが、選手たちのその後の命運を分けるのであった…。

バトル開始後早速、各車のどつき合いが始まり、修理のためピットへ戻る選手も登場。一方先頭では、4輪ともにウェットタイヤを装着したスペイン出身のオリオラが、溝のないスリックタイヤを選んだミュラー選手を抜き、一躍トップに躍り出た! オリオラは、現在弱冠18歳、今季マケラシュ戦にて初優勝をつかんだ注目選手だ。今回もそのまま順調にトップを突き進むかに思われたが、不運なことに雨は数周で止み、5周目にてミュラーら、スリックタイヤ勢に抜き返されてしまう。最終コーナーでは、ミュラーが同チームのチルトンとほぼ横並びでゴール! …判定の結果、わずか0・01秒の差で、後輩格のチルトンが王者を打ち破った。

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ホンダ1―2―3態勢!?

決勝第2レース。会場に「加油、加油!」という声援が響き渡る。ここでは、予選10位の車がリバースグリッドでスタートする。よって、ポールポジションはモンテイロ、2番手にタルクィーニ、そして4番手にミケリスと、ホンダ勢にとって絶好のチャンスが訪れた。スタートと同時にミケリスが飛び出し、3位へ浮上! なんと1週目にして早々に、ホンダ1―2―3態勢を成し遂げた。

そしてスタート地点では、上海戦のみスポット出場となる「ボルボ」のマシンにトラブルが発生し、一歩も動けなくなるというハプニングが。運転席に座るのは、今季の「STCC(北欧)」で優勝を果たしたビョーク。実力のあるレーサーだが、何とも振るわない結果に終わった。

さて、前方はというと、トップ3は変わらずホンダ勢が独占。ミュラーらがプレッシャーをかけるも、ホンダ勢はポジションを死守して10周を走り切り、前回の日本戦から合わせて2連覇を果たした。上海戦では40㌔のハンディのため苦戦が予想されていたホンダチームであったが、リバースグリッドのおかげで、見事逆転大勝利! 試合の興奮冷めやらぬまま、帰途に就いた取材班であった。

運が勝敗を決めるマカオ戦

さて、上海レースから10日後の週末、今季最後のレースが、中国マカオにて開催される。ここでは期間中、フェリーターミナルから山側の公道を封鎖し、コースが作られる。昨年は、ミケリス選手がバリアに突っ込み後続車が渋滞したり、各所でクラッシュが続出し、セーフティーカーが出動したりと波乱の試合模様であった。何が起こるかわからないと噂される、世界でも有数の難コースを、今年は各選手、どのように攻略するのか。ぜひその目で確かめてほしい。

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~上海ジャピオン2013年11月15日号

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