移動の芸術 Parkour(パルクール)に挑戦!

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フランス生まれの鍛錬法

パルクールとは、走る、跳ぶ、登るの移動動作を基礎とした、スポーツの1種。ビルの壁や柱など、周囲の環境を利用し、どんな地形でも自由に動ける肉体と、困難を乗り越えられる強い精神の獲得を目指す。橋の欄干から欄干へと跳んだり、壁を駆け上がって後方宙返りをしたり、といった連続した動きが特徴となっている。

アクション映画を彷彿とさせるアクロバティックなこの運動は、1910年代のフランスで発祥した。同国の元海軍将校であったジョルジュ・エベルは、世界中を旅する途中、アフリカに滞在した際、現地の民族の身体能力に感銘を受ける。その後フランスに戻り、大学の体育教官の職に就くと、かつて目にしたアフリカ住民の俊敏性や運動能力などの要素を取り入れ、独自のトレーニングシステム「メトッド・ナチュレル」を創り出した。この中には、後にパルクールのもととなる、走る、跳ぶ、登るなどのトレーニングも盛り込まれ、やがて同国のトレーニングのスタンダードとなった。

そしておよそ50年後、同じくフランス人のダヴィッド・ベルという人物が、父から障害物コーストレーニングや「メトッド・ナチュレ」を教わる。これを実生活に取り入れたトレーニングがパルクールとして発展していったのだ。

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身体を鍛えるトレーニング

映画作品で一躍有名に

歴史が古い割りに、まだあまり知られていなかったパルクールだが、その認知度をぐっと上げたのが2001年に公開された、リュック・ベッソン原案・脚本のフランス映画『YAMAKASHI』によってその認知度が急上昇する。これはフランスに実在するパルクール集団「ヤマカシ」を題材としたアクション作品で、スピード感あるリアルなパルクールシーンを、迫力満点に再現している。劇中、身体ひとつでビルからビルへ跳び回るヤマカシの7人。〝カッコイイ〟と若者の支持を受けるも、彼らをマネした少年がケガを負ったことで責任を感じ、少年の手術費を稼ぐため金をくすね、警察の包囲網を抜けて街を駆け巡る。その後パルクールは同じくフランスの『TAXI2』や『アルティメット2』、日本の『K―20 怪人二十面相・伝』など、世界各国の映画に多々登場する。

パルクールは「トレーサー(パルクール実践者)」による豪快なジャンプや宙返りなど、パフォーマンス的な要素が強い。しかしながら、前述の通り、本来は危険を回避したり、自身の体力を向上させたりするトレーニングなのだ。

それでは、次ページから、いよいよ体験を通して、パルクールの魅力に迫っていこう!

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高い所から臆することなくジャンプ

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取材班に『YAMAKASHI』を観せられ、単純にもパルクールに憧れてしまったタクマ。本格的なパルクール集団が上海に存在することを知り、ホンモノを体験するため、勇んでやってきた。

今回お邪魔したのは浦東新区の北蔡鎮にある「上海呼踏跑酷」。未経験のタクマの指導に当たるのは、2年ほど前、鄭州市のパルクール大会でファイナリストに残ったというJACKコーチだ。

小・中・高とバスケットボール部に所属しており、久しぶりに身体を動かすことを喜び、意気込んでいたタクマ。しかし一度教室のドアを開け、忍者のように跳び回る練習生たちを目にして顔色を変える。「マ…マジでこれやるんすか?」大丈夫大丈夫、ケガとかしないから、と取材班は彼をなだめ、コーチのもとへ送り出す。そして早速、指導が開始!

STEP1 バランスウォーク

この動作の目的は、その名の通り平衡感覚を養うもの。左右の足を交互に上げまっすぐ歩くだけだが、パルクールは足場の悪い場所や手すりの上を歩くことが多いため、これを欠かすことはできない。タクマは身体もブレず、問題なくクリアする。

STEP2 ランディング

 続いての動きはコーチ曰く、ジャンプの着地時に骨折やケガを免れるための大事なメニュー。ジャンプの後、ヒザが前に出て倒れてしまわないよう、ヒザ下を垂直に保つのがポイントだ。しかし何度やっても前屈みになってしまい、垂直になるまで何十回とトライさせられるタクマ。疲労困憊で「ぼ…僕、やっぱバテやすくなってます…」と取材班に助けを求めるも、そんなことない、と全否定のうえ再びトレーニングへ追いやられるのだった。

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STEP3 ロール

休む暇も与えず、コーチは受身を指導。一見するとただの前転だが、ランディング時に回転することで、ヒザだけでは吸収しきれない衝撃を逃がす。タクマは、床では難なくこなせたが、台上からとなると高さゆえ恐怖心が芽生えた様子。「首折っちゃいますよぅ…」。大丈夫、そんなに簡単には折れない、とか何とかコーチが言いながらサポートし、成功。再び笑顔が戻る。

STEP4 ジャンプ

お次はジャンプ。「これ、部活でもよくやってました♪」。さっきの蒼白な顔はどこへやら、余裕しゃくしゃくのタクマ。高さには難ありだが、教室内を2往復し、元バスケ部の意地を見せた。コーチも彼の身体能力を認め、いよいよ連続技に挑戦することに。

応用編 ヴォルト

これまでの練習を応用した合わせ技。まずはランとジャンプを組み合わせ、障害物を跳び越える「ヴォルト」から。台の上を飛ぶということで怖気づくタクマをよそに、練習生たちは手も使わずスイスイと箱を越えて行く。

と、そこへコーチがタクマにゴーサインを出す。タクマは勢い良く駆け出すも、ギリギリで減速。ジャンプも中途半端になり、台の上で止まる情けない姿に。

「まずは思いっきり跳べ。恐怖心に勝つんだ!」と渇を入れるコーチ。それで吹っ切れたのか、タクマの目つきが変わった。いきなり走り出し、迷いなくジャンプ! 身体は台を越え、そのままマットに着地。勇ましいプレーに練習生が惜しみない拍手を贈った。

一度の成功でハイになり、続けて挑むタクマ。しかしすでにヒザがガクガク、ジャンプも低い。なかなかキマらず、しまいには台にぶつかって転ぶ始末。それでも「ヴォルト」を成功させたことで、初心者にしては上出来、とコーチからお褒めの言葉をもらい、後ろ髪引かれるタクマを引きずって、取材班は練習所を後にした。

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それでは、ここからは上海呼踏跑酷練習生たちの、華麗なる技をご覧いただこう。

「ダイブロール」&「フリップ」

まずはJACKコーチが模範演技を披露。頭から突っ込み、両手を目一杯広げて障害物を飛び越えていく様は、まるで羽ばたく鳥のよう。動き自体は単純だが、マットがあっても頭から飛び込むのにはなかなか度胸がいる。コーチ曰く、ジャンプとロールができていれば、あとは高さをクリアするだけ。早ければ1カ月ほどでできるようになるとのこと。続いて、練習生が台上からの宙返り「フリップ」を鮮やかにキメた。クルクルッと2回転したうえ、グラつくことなく床にランディングする一連の動作に、思わず見蕩れてしまう。

「ウォールラン」

本来、パルクールは屋外で楽しむスポーツ。上海呼踏跑酷の練習生も上海市内で日夜トレーニングに励んでいる。頑丈な壁があり、柵があれば、彼らにとっては立派な屋外ジムだ。そして屋外に行われるショーによく登場するのが「ウォールラン」。軽々と垂直の壁を駆け上り、壁を蹴った反動でフリップする。こんなの、アクション映画かTVゲームでしか見たことない…と息を呑む取材班。このほかにも一定のリズムで橋の欄干を歩いたり、高い所から飛び降りたり、と見ている方がヒヤヒヤするばかり。だが、スピード感を失わず、豪快かつ繊細に動いていくところがパルクールの醍醐味であろう。

形だけ真似しない

パフォーマンス的要素が強いがパルクールだが、前述の通りもとは危険回避のためのトレーニング。彼らが宙返りを軽々とやってのけるのは、日々の訓練があってのこと。くれぐれもカタチだけ真似して、大ケガを負うことのないようご注意を。

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~上海ジャピオン2014年2月7日号

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