今や、ビール生産量世界一となった中国。ビールの種類も百花繚乱だ。
そのビールを紹介する前に、まずは、中国のビールの歴史や事情などについて、日本との違いを中心に見ていこう。
1世紀前ビール製造開始
魯迅の弟はビール好き?
「中国で一番古いビール会社は、現在のどこのメーカー?」とクイズを出されたら、「青島ビール社」と答える人が多数だろうが、実際は1900年にロシア人が設立した、現在の「ハルピンビール社」が正解だ。
乳製品や酒など、農産物加工品に関するサイト『中国農産品加工網』を見ると、青島ビールの製造開始は1903年とあり、ハルピンビールより3年遅れる。
では、上海でのビールの歴史はどうだろうか?
同サイトを見ていくと、上海のビールの歴史は、1912年にノルウェー人が設立した、スカンジナビア・ビール社によって幕が開いたことがわかる。
この会社は、当時、上海を含む華東地区で唯一のビール会社で、ビール好きだった文学者・周作人(魯迅の弟)も同社のビールを楽しんだと言われている。
同社は、後に上海ビール有限公司と名前を変え、現在は、青島ビールの傘下に入っているので、租界時代に想いを馳せつつ、青島ビールを味わうのも良いだろう。
ビールは常温で?
中国は熱処理ビールが主
???日本と中国では、ビールの種類や飲み方などの習慣に、違いはあるのだろうか?
中国のレストランでビールを注文すると、「冰的這是常温的?(冷たいの、それとも常温の?)」とウエイトレスから必ず聞かれる。
なぜなら、冬はもとより、夏でも常温で飲む人が少なくないからだ。
中国では、「冷たいものは身体を冷やして、身体を壊す」という、医食同源的思想があり、常温が好まれるのだ。
冷たいビールが欲しければ、「冰的」と即答しよう。
また近年、中国でも、無菌設備などの導入促進や科学技術の向上により、〝純生〟などと書かれた生ビールが増えているが、中国で生産されるビールは、依然として、熱処理されたものが多い。
国家統計局の調べでは、2007年の中国のビール生産量は3931万㌧で、そのうち生ビールは約150万㌧と、全体の4%にも満たない。
一方、日本では、ビール全体に占める生ビールの比率は、1996年に99%を超えている。
では、続いて上海で販売されているビールを、具体的に見てみよう!
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日系のビールたち
???? ビールを飲むなら、慣れ親しんだ日系に限るという人も多いだろう。
上海では、日本でおなじみとなっているビールの中国版のほか、中国限定のプレミアムビールなど、販売されている日系ビールも様々。
??? それでは、編集部がセレクトした日系ビールを紹介しよう。
① 沁 麒麟(ちん きりん)
2007年4月より上海エリアで販売されている、キリンのプレミアムビール。
飲み始めは苦味を感じるが、飲み終えると、スッと後味が消え、フルーティーな香りが口の中に広がる。
ビール特有のホップの苦味と、果物を食べたときのような甘みを同時に楽しめるビールだ。
飲み始めと飲み終わりのギャップを楽しもう!
② 麒麟 一番搾?酒
ビール製造の際に、原料のもろみの自重だけで自然に流れ出してくる麦汁(一番搾り)のみを使用して作られたビール。
日本では1990年より、中国では1999年より販売されている。
苦味が強くなく、クセのない味わいは、万人受けするはず。
飲み飽きない、澄み切った喉越しを楽しみたい。
③ 朝日?酒 超爽
中国では1998年に生産を開始した、アサヒの辛口ビールの代表的存在。
日本のスーパードライとは少々異なり、さっぱりした味わいより、ホップの鋭い苦味を強調している感がある。
ただ、その分コクも深く、重い後味が楽しめる。
日本版と中国版を飲み比べ、その違いを感じてみよう。
④ 朝日?酒 清爽
〝清爽〟というビール名に相応しく、炭酸強めで、泡が口全体を刺激するアサヒのビール。
一気に飲み干すと、シュワシュワ感が口の中に広がり、夏っぽさが味わえる。
また、同社の〝超爽〟(スーパードライ)と比べるとさっぱりしているので、脂っこい、濃い味付けの中華料理のお供に最適かも。
⑤ 三得利?酒 超爽 欧洲香型酒花精製
グラスに注ぐと、きめ細かく、柔らかな泡が立ち、アロマホップの優しいフレーバーが漂うサントリーのビール。
ミルクのようにクリーミーな味わいで、舌や喉に刺さるような刺激がないため、ついつい飲みすぎてしまうかも!?
チーズなどとともに、ヨーロッパに想いを馳せつつ、ゆったりとした気分で飲んでみてはいかが?
⑥ 三得利?酒 漢方暖?
? サントリーが、昨年秋より販売を開始したビール。
生姜、クコの実、桂圓(竜眼)といった、漢方薬で使われる定番の材料を含むビール。色は通常のものと異なり、茶色掛かっている。
一口含むと、甘いクコの実の味が口に広がり、ビールであることを一瞬忘れてしまうことだろう。
苦味・キレのあるビールが好きな男性には物足りなく感じるかもしれないが、苦味が苦手な女性と一緒にビールを飲むのであれば、オススメだ。
世界の変り種ビール
??? 国際都市・上海では、地元のビール以外に、世界各国のビールも輸入され、外資系スーパーなどで販売されている。
中には、日本ではあまり見受けられないビールもちらほら。そんな、中国と世界各国の変り種ビールを中心にご紹介!
① 力波南極ビール「ANTARKTIK」
上海でシェア2位を誇るビール会社・力波と中国局地研究センターが、共同で開発した〝南極〟ビール。
きめ細かい泡が爽快感を呼ぶ。味はあっさり目で、後味スッキリ。
ギンギンに冷やして味わいたい。想像力を働かせ、南極の息吹を感じよう。
② 麦氏ビール1758
ペットボトル入りという珍しいビール。
1758年に設立された、ベルギーの醸造所「MARTENS(マルテンス)」の製造法で作られ、昨年10月に上海で販売が開始された。
中国産だが、欧州独特の重厚な香りが漂う。
喉越しのよさを味わうというよりは、ワインのように舌で転がす感覚で、ポップの苦みや香りを味わいたい。
③ 燕京ビール
北京五輪にも協賛し、北京でシェア8割を占めるとされる「燕京ビール」だが、上海ではなかなかお目にかかれない。
麦汁濃度は低いが、ちょっと甘い味がする。
欧州の濃いめの味に慣れた人には、多少物足りないかもしれない。
アルコール度数も低めで、喉越し重視なので、量が必要な人にはうってつけ。
④ シャポー・バナナ・ランビック
培養された酵母を使用せず、野生酵母を利用して自然発酵させるベルギーの伝統ビール・ランビック。
フルーツを加えて甘くすることも多く、このビールではバナナを使用。
蓋を開けた瞬間に、バナナの強烈な甘い匂いが漂う。
ランビックらしく酸味が強いため、酢を飲んでいるような感じを受けるかも。
さっぱりしたビールに、清涼感を得られること請け合いだ。
⑤ 藍宝菠蘿?ビール
アルコール度数が0・8%とかなり低いこともあり、パイナップルビールというよりは、パイナップルジュースに近い。
匂いは良く、子どもの頃飲んだような、昔懐かしさを感じることだろう。
ただ、アルコールは入っており、一気に飲むと胃が急激に熱くなるので、ジュース感覚で飲むのは控えた方がベター。
⑥ セントルイス・プレミアム・フランボワーズ・ランビック
④と同じく、世界で唯一、自然発酵させて作られるベルギーの古式製法ビール。
色はフランボワーズ(ラズベリー)の紫で、ランビックの酸味とフランボワーズの味がマリアージュ。
鮮やかな色とほんのり甘い味わいは、ビールというよりは、カクテルのような感覚だ。
食前酒としても楽しめる。
⑦ ?児茶爽
蒸留水でおなじみの、杭州の飲料メーカー・娃哈哈が販売するビール風味のお茶。
ラベルに超爽快な味と書かれ、一口飲んでその意味を体感。
ビールのような炭酸がノドを駆け抜けた後、ジャスミンの香りと味が訪れる。
ジェットコースターに乗っているときのような、ビールからお茶への、味の急激な変化を感じよう。
世界の変り種ビールの④と⑥は、輸入食品などを販売する「CITY SHOP(城市超市)」で購入可能。
そのほかのビールは、市内の各スーパーやコンビニで販売している。
~上海ジャピオン6月26日号より