中国台湾まるかじりスポット

えみさんに連れられ、取材班が向かったのは、田子坊向かいの「日月光広場」。この巨大モールの地下２階に、中国台湾グルメゾーンがある。ここで食べられるのは、中国台湾夜市の主役とも言える小吃たち。早速、えみさんにオススメを聞いてみる。

「蚵仔煎に、甜不辣もマスト！　あっ、クレープ!!」と、多くの小吃を前に、すでに興奮が抑えられない彼女。しばし落ち着くのを待って、料理について説明してもらった。

「蚵仔煎①」とは、小ぶりのカキが入った玉子焼き。「現地では〝おーあーじぇん〟と、台湾語で言うのがツウよ」とえみさんは得意顔だ。次に彼女が飛びついた「甜不辣②」は、中国台湾での魚のすり身の総称。おでんスタイルが一般的だが、揚げる場合は「天婦羅」と呼ぶこともある。

「もうお腹いっぱい…」と呟きながらも、えみさんはデザートに「可麗餅（クレープ）③」をご所望。日本とは異なり、生地がクッキーのようにサクッと硬めだ。最後に、彼女がこのゾーンイチオシの小吃「胡椒餅④」を、こっそり教えてくれた。肉の入ったパンのようだが、ビリビリ刺激的な黒コショウがクセになるおいしさ。

また同広場１階には、中国台湾物産店も入居し、特産品やご当地ブランド菓子が売られている⑥⑧⑨。「買い忘れた土産の補充にいいでしょ？　定番は〝鳳梨酥（パイナップルケーキ）〟だけど、私はいつもこっち」とえみさんが指さすのは変わりダネの「核棗糕⑤」。１箱手にし、ご当地ドリンク「黒松⑦」もゲットする。

 

老舗小籠包レストラン

小籠包は上海が発祥だが、名店と呼ばれるレストランはやはり押さえておきたいもの。「有名だけど、実は行ったことない人も多いのよね。ここのは、ひと味もふた味も違うの」とえみさんが豪語するのは、老舗レストラン「鼎泰豊」。「蒸籠の蓋を取る瞬間が幸せ～。見て、この薄い皮。レンゲに乗せて、針生姜と黒酢を少し…何写真撮ってんの！　早く食べて！」。猫舌の取材班にはツラい要求だが、おいしく頂くためアツアツにチャレンジする。恐る恐る皮を破ると、濃厚な肉汁がジュワ～。何でも、スープにゼラチンを混ぜて固めたものを、餡と一緒に包み、蒸すとそれが融け出るのだとか。

「小籠包①を堪能したら、スープとマンゴーかき氷」。えみさんの言いなり状態だが、〝鶏湯②〟と、〆には〝芒果牛奶刨氷③〟「」を注文。「台北の本店で小籠包を食べたら、裏のかき氷屋さんでコレ、っていうのがお決まりのコースなの」。その店では、さらにマンゴーアイスが乗っているそうだ。小柄な彼女だが、胃袋のサイズはどうなっているのだろう。

各地に展開する庶民派食堂

次に訪れた「千秋膳房」は、市内に６店を有し、中国台湾小吃から本格料理まで幅広く提供する。

「このお店には、九層塔煎蛋④があるの！」。九層塔とは〝台湾バジル〟のことで、西洋のものに比べ味が濃く、香りも甘い。「パクチーが苦手な人は、これもダメかな？　でも、こうして卵や葱餅に入れて焼くと、おいしい～」とえみさんはニコニコ。

次に運ばれてきた〝客家小炒⑤〟はその名の通り、客家料理を代表する１品で、スルメに豚肉、セロリを炒めたサッパリメニュー。えみさんはひと口頬張ったところで、ちょうどテーブルに置かれた牛肉のクレープ巻き〝大巻餅牛肉⑥〟に箸をスライドする。またも、食欲と興奮に火が付いてしまったようだ。「現地では〝蛋餅〟って言うの。牛肉もいいけど、私はベーコンと玉子入りがいつもの朝ごはんだった」と、口の中のものを無理やり飲み下し、話し続ける彼女。

「麺線⑦はまだかな、あっ来た！これも〝おーあーみーそ〟って台湾語で言わなきゃね。西門町で、行列に並んで食べたなぁ」。いつの間にやら、興奮からホームシックに…。

台南料理もお披露目

えみさんお気に入りの台湾料理店を、一挙大放出！　ということで３店目は「豊品小館」。「ここは台湾人の友達とよく来るの。ちょっと遠いし、秘密にしておきたかったんだけど（笑）」。イヤイヤ、そんなこと言わず、オススメをちゃんと教えてよ～。「じゃあ定番中の定番、〝菜圃蛋⑧〟からね！」。

オーダーしてまもなく運ばれて来たのは、切干大根の入った玉子焼き「菜圃蛋」。「切干大根は、日本から来たんだって。マントウに入れたり、みんな大好きよ♪」。

続いて、青菜のニンニク炒め「蒜炒Ａ菜」、ひき肉を半透明の皮で包んだ「彰化肉圓」、そして主食はやはり中国台湾名物の焼きビーフン「台式炒米粉」が登場。「Ａ菜は、レタスの１種なんだけど、こっちのはちょっと違うのよね」。食べてみると、少し苦味のある、シャキシャキとした青菜で、ニンニクがよく合う。

そして「彰化肉圓」。円盤型の半透明の皮の正体は…？　「米粉とかサツマイモ、トウモロコシの粉で作るの。台南の彰化県の料理」。皮はモチモチ、餡はしっとり、Ａ菜と味のメリハリも良い。〆のビーフンについては「これよ、これ！　これ！　台北の屋台の味～！」。えみさんの幸せそうな満腹顔に、心和む取材班だった。

 

行列で人気ぶりを知る

中国台湾の若者は、１つの店でゆっくり食事をするより、小吃をつまみながら歩くスタイルを好む。「台北一大きい夜市〝士林夜市〟の人気店が、たくさん上海に進出してるの」と言うことで、えみさんがピックアップ。

「とりわけ行列が長い」と言うのは、10号線「四川北路」駅地下の「正豪大大鶏排」。「鶏排」＝「チキンカツ」は、夜市小吃の定番だとか。「わあ、やっぱりすごい行列！」。ゆうに50人は超えている①。待つこと数十分後、ようやく手にした鶏排は…でかっ!!　これだけですでに満腹になりそう②。

「鶏排の店はたくさんあるけど、オススメはココか〝超級鶏車〟ね」。「超級鶏車」の鶏排は「正豪大～」に比べるとやや小ぶり③だが、店舗数が多いので、よく利用するのだそう。

カラフルな芋圓ぜんざい

日本のアニメ『千と千尋の神隠し』のモデルとなった、中国台湾北部の町・九份。この町発祥と言われる小吃が、芋団子ぜんざい「芋圓④」だ。

「サツマイモにタロイモ、紫芋の白玉がＱＱ（弾力がある）なの～♪」。と、ゴキゲンなえみさんとともに向かったのは、「台湾一品茶」。黒糖ベースの汁に小豆、緑豆、ハトムギ、タピオカなど、トッピングもできる⑤。

「あとは〝鮮芋仙〟の〝芋圓かき氷〟も、暑い夏にはピッタリよね」と、２店目（２杯目）を要求するえみさんの食欲にタジタジの取材班一行だった。

～上海ジャピオン2016年07月08日号