寒さを満喫する春節旅行 ウィンタートラベル

坂の上の雲に登場する場所

司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」。明治維新後の日本で、西洋の知識を取り入れた明治日本の勃興期を描いた歴史小説で、小説名だけでも聞いたことがある人は多いはず。その中で登場する場面が、ここ遼寧省大連市だ。

大連市は、黒竜江省、吉林省と併せて東北三省に数えられる。日本の秋田県や岩手県とほぼ同じ緯度に位置し、北はロシア・シベリアやモンゴルがある。冬の平均気温は最高3度~最低マイナス5度で推移しており、上海市の真冬ぐらいの天気が続くイメージだろう。北方にしては寒すぎず、日本との関係が深いこともあり、中国国内旅行の経験があまりない人でも行きやすい場所と言える

スキー・温泉施設で満喫

大連市の中心部は遼寧半島の最南端に位置しており、渤海に面するリゾート地。温泉も、スキー場も、歴史的スポットもあり、見所に尽きることはない。

特にスキー・スノーボードに関しては、中国でここ近年スキーリゾート業界が賑わっていることもあり、スキーヤーが増加。中国国家体育総局が2018年に公表した「2017中国滑雪産業白皮書(中国スキー産業白書)」によると、スキーヤーは16年比15%増の1750万人となるなど、22年冬季北京オリンピックに向け同業界はますます活況を見せる。大連市では、市中心部にスキー場「歓楽雪世界滑雪場」を構え、子ども連れの家族で賑わう。より難易度の高いコースを滑りたい人は、市中心部から高速バスで2時間ほどの場所に位置する「安波温泉滑雪場」に行くのが◎。こちらには、初級ほか中級コースも備えるため、スキーヤーが十分満足できる。またここには、温泉リゾートを併設。冷え切った身体を、湯船でぬくぬくと温まろう。

中国でも珍しい樹氷を拝む

遼寧省と同じく東北三省に数えられる吉林省。ここの省都は、中国で唯一省名と同じ名前を冠する吉林市、ではなく長春市だ。しかし長春市では、広大な大地を持つ中国でも珍しく、「樹氷(霧凇)」が見られる条件を備えた場所なのだ。

樹氷は、日本では山形県・蔵王など数えるほどの地域でしか見られない。西高東低の強い冬型の気圧配置で、アオモリトドマツに氷と雪がくっ付くことでできる自然現象。例年12月~2月に掛けて吉林市内で見られると言う。

また省都である長春市には、東北では珍しく地下鉄が通るほどの大都市で、人口は福岡県にほぼ匹敵する。市内には、半世紀以上前に建てられた博物院がいくつか構えるほか、「長春万寿寺」という、清代の乾隆帝とゆかりの深い寺院もある。歴史好きの人には堪らない。

真っ青な湖水の長白山

また吉林省の南東ある白山市には、「長白山」という連峰がある。2700㍍級のため、特別高さのある場所ではなく、山頂付近までバスで移動でき、比較的気軽に行けるのがうれしいポイント。天気がよければ、下を見ると延々と続く高原が、見上げれば真っ青な空が見渡す限りに広がり、大自然を満喫できる。ちなみに、世界遺産ゆえ人の行列も目に留まるが、そこはご愛嬌を。

山頂には、カルデラ湖「長白天池」がある。その湖水の青さは、目が釘付けになるほどだとか。この連峰は朝鮮半島に続いており、山の向こうは他国。麓の長白朝鮮自治県は国内で唯一、中国少数民族である朝鮮族の自治県としても知られる。またここは休火山でもあるため、至るところでガスが噴出し、温泉も湧き出るほど。滝もあるので、見る場所が尽きることはない。

有名小説の言葉を冠する

〝理想郷〟を意味する「シャングリラ」。中国雲南省シャングリラ(香格里拉)市、中国に来た人であれば一度は行きたいと思う場所に挙がる場所だ。

しかしここシャングリラ市は、2001年まで存在しなかった都市。というのもここは「中甸県」という、まったく別の名前だった。ここはデチェン・チベット(迪慶藏)族が多く暮らす地域で、同族の自治州でもある。〝中甸(心の中の日と月)〟を意味するチベット語。ジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』で登場する言葉に県名を変更し、最初は香格里拉県になり、14年に行政区分が市として生まれ変わった。

登山に寺院巡り、マツタケ

主な観光エリアは、5000㍍級が数多くある山々。特に「哈巴雪山(ハバセツザン)」は、ヒマラヤ山脈の造山活動に強く影響され、高く険しい山で有名だ。ほかにも「梅里雪山」や、シャングリラ市にほど近い麗江市の「玉龍雪山」など、登山がオススメだ。ただ、高山病や極寒という問題があるため、実際に行く際は念入りのリサーチと準備をお忘れなく。

また、チベット系民族が多く暮らすこともあり、寺院が数多く点在。市内中心部でも僧侶をちらほら見掛けるほど。市内で最大級の広さを誇るのが「松賛林寺」で、ほかにも「冲古寺」などが有名だ。

なお、登山や寺院巡りはちょっと大変…という人は、麗江市にある「麗江古城」や大渓谷「虎跳峡」などに行ってみよう。

食べ物が旅の一番の目的という人が少なくないのでは? というぐらい旅に欠かせないのが、食事。シャングリラ市のある雲南省は、マツタケをはじめとするキノコの名産地。寒さでキンキンに冷えた身体を、キノコの旨味がスープに溶け込んだポカポカ鍋を食べれば、身も心も温まるはず。

冬の国内旅行で外せない

最後に、冬の中国旅行でほぼ間違いなく候補に挙げられる場所、黒竜江省ハルビン市を紹介。

同省は中国の中で最も東北、すなわちロシアとの国境沿いに位置する。ハルビン市の緯度は、日本・北海道の最北端稚内市とほぼ同じで、冬の最低気温がマイナス40度になることもある極寒地帯。しかし日本ではなかなか体験できないことが多いのが、多くの人を引き付けている魅力なのかもしれない。

世界三大氷祭りを巡る

ハルビン市に行って欠かせないのが、「氷祭り(氷雪大世界)」だろう。北海道雪祭り、カナダ・ケベックウィンターカーニバルと併せて〝世界三大氷祭り〟に数えられるが、展示規模で言えばおそらく世界一。今回で20回目となる「氷祭り(氷雪大世界)」は、約60万平米の広さに十数に及ぶオブジェやアトラクションスペース、舞台などが設置されている。ここで使われている氷がどこからきているかと言うと、すぐ近くを流れる河川「松花江」の水が凍ったものを使っている。特に夜はライトアップされ、幻想的な世界が広がり、ロマンチックなムード満点。しかし昼間に行けば、太陽の光の下、氷そのものの透明さを楽しむことができる。

また市内を歩き回れば、いろいろな場所にロシアの影響を色濃く受けたと思われる、教会がちらほら見掛ける。東北名物(?)の餃子を食べながら、極寒地を満喫しよう。しかし気を付けなければいけないのは、写真を撮るのにスマホを外気に長時間触れさせてしまうこと。スマホなどのバッテリーなどは寒さで消耗が激しくなるため、タオルに巻いたり、バッテリーを持ち歩いたりしよう。

 

~上海ジャピオン1月11日発行号

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