万博跡地のさらに南に位置
2010年、万博で上海・浦東という土地を世界の人々に知らしめてから10年強が経過。万博跡地のさらに南、スポーツセンター「東方体育中心」を除いてほぼ荒地だった名もなき土地に今、上海のニューホットスポットが誕生しようとしている。その名は「前灘」。
この前灘は、西は黄浦江、北は川楊河、東は済陽路(南北高架路)、南は華夏中路(中環高架路)の約2・83ヘクタール(2万8300平米)一帯を指す。上海万博跡地・中華芸術宮よりさらに南に位置する同エリアは、世界的金融エリアに成長した陸家嘴を手掛けた陸家嘴集団が開発を主に担当。〝第二の陸家嘴〟にしようと商業施設やオフィスビルなどを誘致し、建設ラッシュを迎えている。そんな前灘には、日系企業の上海オフィスが移転を計画。すでに一部機能を移したり、日系スーパーや飲食店が開店したりと、日本人にとっては〝浦東の古北〟となる可能性を秘めているのだ。
市主要地へのアクセス良好
同エリアの〝古北化〟については次ページ以降で紹介するが、まずは前灘の立地について詳しく見てみよう。最寄り駅は6・8・11号線「東方体育中心」駅で、同エリアのほぼ中心に位置。8号線で人民広場まで22分、11号線で徐家匯まで14分、「上海ディズニーランド」まで27分、浦東国際空港までタクシーで30分という、市主要エリアへのアクセスは良好だ。また、南北高架路と中環路がすぐ近くを走っていることから、自動車での移動も非常に便利だ。
まだ建設中の建物が多いものの、いくつかの建物はすでに開業、もしくは開業間近という状況。それでは、どんな施設がこの地に集結しているのか、次ページ以降で見ていこう。
上海初の太古里が開業へ
建設中建物の中で、注目すべきは「前灘太古里」。これは四川省成都市、北京市に続く中国3カ所目の「太古里」で、テナントが1つの建物に入居する一般的な商業施設とは異なり、エリア内に複数の建物が存在し、まるで1つの〝街〟のような空間で買い物を楽しめるのが特徴だ。
「前灘太古里」は、国慶節前日の9月30日(木)にオープンする予定で、その全貌は未だベールに包まれている。総敷地面積は12万平米で、建物は地下1階から4階(一部は6階)まで、「東方体育中心」駅直結となる。日本人にとってうれしいのが、上海2号店となる「蔦屋書店」がオープン予定であることだろう。広さは、上海1号店の面積2000平米を上回る3000平米で、品揃えやサービスがより充実したものになることが想像できる。またスポーツブランド「ASICS」のコンセプトショップ「ASICS RUNNING SHOP」も入居するといい、黄浦江沿いのランニングコースと合わせて、ランナーのメッカとなりそう。ほか日本発のコーヒーショップ「%Arabica」や各種日本料理店も構え、日本人にとって外せないスポットになるはずだ。
日系企業事務所が次々移転
また隣には「上海前灘シャングリラホテル」がオープンする予定で、中日間の移動が自由になった暁には、日本からの出張者・旅行者の宿泊場所として重宝されるだろう。その隣のオフィスビル「前灘中心」や「前灘時代広場」などにはいくつかの日系企業が移転してくるほか、「三菱UFJ銀行」をはじめとする名立たる企業の上海オフィスがすでにこの地に拠点を移動。日本人を含め、グローバルに活躍するビジネスマンが行き交う第二の陸家嘴、また日本人が買い物や飲食を楽しめる第二の古北エリアとして日の目を見る日も遠くないはずだ。
APITA系列店舗も登場
次に、すでにオープンしている店舗を見てみよう。古北の中心的存在ともいえる日本発のスーパー「APITA」。日本の食材や調味料、菓子、アルコール・ソフトドリンク、日用品、キッチン用品などなど、日本製品を買いたいならとりあえずアピタ、というほど、品揃えがほかの外資系スーパーより豊富なのが特徴。その姉妹店である「Apio艾比悠」がこの夏、オープンした。
場所は「東方体育中心」駅直結となる商業施設「晶燿前灘」の地下1階。清潔感があり、キレイに陳列された商品、そして日本製品の数々…まさしく日本のスーパーだ。店舗の形はやや横に長く、面積も「APITA」よりやや狭い印象だが、日本の調味料や具材、総菜、日用品と、必要なものは一通り揃っているため、思わず大量買いしてしまいそう。また8月には、「APITA」にも併設している日系パン屋「ドンク」も開店しており、焼き立てのパンを食卓に並べられるのはうれしい。
第二の日本人街となるか
地域一体がまだ開発真っただ中ということもあり、日本料理屋を含めレストランはまだ少なめ。一方で、再開発後の日本人オフィスワーカー需要をいち早く見込んでか、日本のカフェチェーン「Komeda‘s Coffee口美達珈琲」が同エリアにオープンしている。
今後は、芸術センター「前灘31文化演芸中心」や「前灘21号区域」(建物名は未定)なども登場予定。主だった建物が完成し、まずはオフィスワーカーが移動してきた時こそ同エリアの本領発揮、その魅力は数倍にも増しているはずだ。
緑地豊かでスポーツに最適
最後に、すでにオープン済の主なスポットを紹介しよう。
まずは、駅名にもなっているスポーツセンター「東方体育中心」。ここは、2019年にバスケットボールのワールドカップが開かれるなど、国際大会の会場として利用されるだけでなく、平時は一般市民も水泳やバドミントンといったスポーツを行うことができる、市民憩いの場だ。建物外も広々としており、天気がいい日は子どもやペットと遊べるほか、散歩コースとしても打ってつけだ。
また黄浦江に面したエリアには「前灘友城公園」と「前灘休閑公園」が連なって構えている。特に「前灘休閑公園」は、川沿いの距離が約2・5㌔と、軽めのランニングをするのにピッタリの距離。再開発できらびやかに輝くネオンライトを見ながら走るのは、一味違ったランニングになるに違いない。
中古物件1平米20万元超
また前ページで紹介した商業施設「晶燿前灘」には、イタリアンコーヒーチェーン「LAVAZZA」やアメリカンレストラン「Boxing Cat Brewary」をはじめとする飲食店が入居しており、市中心部とそん色のないラインナップだ。わざわざ市中心地まで移動して、買い物や食事をする必要はなさそう。
なお、再開発途中だから家の値段は安いはず…と思ったら大間違い。2018年時点では1平米当たり8万5000元と、現在の長寧区の相場だったのが、3年たった今、138%増となる1平米20万1500元を記録。これは、上海の一等地である陸家嘴や新天地をも上回る金額で、しかも中古物件で、である。この土地が、どれほど注目されているのかを如実に物語っている。
~上海ジャピオン2021年8月27日号