おばさんインタビュー
1年を通して、上海の街のそこここで見かける、おばさんやおじさんたちのダンス。興味津々で近寄ると、笑顔で招き入れてくれるフレンドリーなもの、こちらには目もくれず、プロフェッショナルなものなど、様々なグループが日々集まっている。
さて、そんなおばさんたちの1人に話を聞いてみた。
健康と美のため、日々踊る
身体が自然と動き出す
今回話を聞かせてくれたのは、淮海中路付近に住む、楊明沢さん(年齢不詳)。息子はすでに独立し、孫も1人いる。歌も踊りも大好きという楊さん、夫が仕事に出かけている間、食材を買いに出かけた時や、近所の人との散歩時など、ダンス集団を見かければ、すぐに参加する。「身体を動かすことは、やっぱり健康にいいから。毎日じゃないけど、見かけると身体がムズムズしてくるのよ」。重慶南路沿いの復興公園や、復興中路にある文化広場の西側外庭が、楊さん行きつけのダンスホールだ。
飛び入り、素人大歓迎
楊さんが参加しているのは、素人の集まりの、カルチャーサークル的グループ。早朝8時頃や、夕食を終えた20時~22時頃、1人がラジカセを持参し、広場に集まる。ラジカセの電池代はみんなで割り勘、月に5元程度だ。そしてみんなで曲を決め、振り付けを決め、踊り始める。また、メンバーが他グループで覚えてきた曲をみんなに伝授することも。
基本的に、飛び入り参加も大歓迎。振り付けがなかなか覚えられない人には、ひと通り踊り終えた後で、じっくりと教えてあげるのだそうだ。「時々、すごくたくさん集まっちゃうこともあるけど、一時的。引っ越したりなんだかんだで、大体20人くらいをキープしてるわ」。
楊さんの美しいボディライン
プロ集団の本格ダンス
楊さんも若い頃、と言っても今もピチピチのお身体だが、熱い上昇志向でもってセミプロ的集団へ乗り込んだことがあった。そこは〝老師〟が指導する、という形式で、メンバーは月謝を支払う。その額も月に30~50元程度と大きくないので、割かし気軽に参加できるようだ。
しかしそのうち「習い事」としてのダンスよりも、生活に根ざした日常的な気楽さを好むように。「好きな曲で、気の置けない仲間たちと踊るの。服を自慢し合ったり、変な動きをして笑ったり、踊りだけが目的じゃないのよ」。とはいえもちろん、適度に身体を動かすことが、健康の秘訣でもある。
では早速、おばさんたちに交じって踊ってみよう!
取材班を代表してダンスに参加するのは、若さ溢れるデザイナーのモリティ。小さな身体を目一杯に使ってかわいらしく踊り、新たな公園アイドルを目指す!
市民ダンスの中心地
グループごとのレベル
今回取材班がお邪魔したのは、軌道交通3・8号線の「虹口足球場」駅近くにある「魯迅公園」。ここは公園面積もさることながら、太極拳や歌を始め、ダンスグループの数も群を抜いている。京劇風の歌に舞踊を加えたものがあったり、タンゴやルンバ、チャチャチャなどペアで踊る社交ダンスには夫婦で参加したりと、それぞれが週末のレッスンを楽しんでいる。この公園はもはや、上海市民ダンスの中心地となっているのだ。
モリティは早速公園内を練り歩き、目に留まったグループに参加するも、レベルの高さについていけず、あえなく退散…。いくつものグループへ積極的なトライを繰り返した後、ついにこれなら、というダンサーズを発見した!
やさしく見守る視線
ターゲットを絞って
早速おばさんたちの輪に入り、見よう見まねで身体を動かし始めるモリティ。そんな彼女に、おばさんたちは微笑ましい視線を投げてくれる。しかし、何とかひと通りの振り付けを覚えられたかな? と思ったところで、あっという間に曲が変わり、次の曲ではまた一から振りを覚えなければならないという状況に。これは困った…と頭を抱えかけた取材班を横目に、モリティは粛々とステップを踏む。どうやら「この人!」と1人のおばさんにターゲットを絞り、その振りに倣うことにしたようだ。これが功を奏し、動作のテンポが格段に良くなった。
おばさんのしなやかさ
輝ける笑顔の連鎖
お手本になってくれたおばさんが、モリティの動きを目で確認しながら、見えやすいように身体の向きを変えてくれた。それでも、足元ばかりが気になるモリティは、身体全体の動きが今ひとつ鈍い。周囲を見渡すと、おばさんたちは身体の筋という筋を伸ばし、実にのびのびと、柔らかな動作を繰り出していく。まさに健康に良さそう、という動きだ。
そんなおばさんたちのダンスを見ているモリティも、自然と顔がほころんでいく。ニコニコ顔で踊り続けるモリティを見て、さらに取材班の表情にも笑みが。笑顔の連鎖…何とも幸せなひと時である。
最後の曲が終わり、モリティのダンス初体験もここまで。タオルで汗を拭き拭き振り返ると、おばさんたちの姿はもうそこにはなく、別のグループのダンスが始まろうとしていた。
~上海ジャピオン2013年8月9日号