CHINA ROCK!!!!!!

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まずは前知識として

「ロック」と聞いてイメージする音楽というものは、人によってバラけているところがあるのではないだろうか。一般的には、エレキギター、エレキベース、ドラムスの3つの楽器で編成された4分の4拍子の音楽とされる。だがしかし! ロックが誕生してからというもの、クラシックやジャズなど、ありとあらゆる音楽を取り込み、次々と新しいスタイルが生み出されてきた。ポップでキュートな甘酸っぱい恋の歌もロック、ギターをギュイィ~ンとかき鳴らし、シャウトしまくる怒りの歌もロック…と、そのカバー範囲は驚くほど幅広い。

そして今回取り上げた、ハードロックやヘヴィメタル(以下メタル)といった、ハードコアな音楽もまた、ロックの1種である。さらに言うと、メタルひとつとっても、デスメタル、スラッシュメタル、バイキングメタルなどなど、もう区別不能! という程に細分化され、今や専門家でもないと何が何やらわからない状態…とは言え、ノレれば良し! ということで、今回はヘドバン(ヘッドバンギング=リズムに合わせて頭を上下に激しく振る動作のこと)必至の中国バンドを集めた。

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ヘドバン。みんなでやると楽しいが、やり過ぎは禁物

中国初のメタルバンド

では早速バンドを紹介…と行きたいところだが、ここでもう1ステップ、中国メタルの発展について軽く触れておこう。欧米を中心に世界的大流行を巻き起こした1970~80年代のクラシックメタル黄金期、中国では、海外の音楽なんて聴かない、という人がほとんどだった。それが80年代半ば頃から帰国子女や外国人が持ち込んだ音源によって一部で広まり、じわじわと盛り上がってくる。そして1988年、中国初のメタルバンドと名高い「唐朝楽隊」が誕生した!

アメリカ籍を持つ華僑カイザー・クオとアメリカ人SARPOが、ボーカリストに丁武、ベーシストに張炬を迎え、バンドを結成。アメリカ文化の中育った2人の影響で、バンドの音楽性はぐんぐん最先端メタルへ…がしかし、その翌年にはメンバーは各地へ散り散りとなり、バンドは休止状態に。しかし丁武と張炬が新たなメンバーを見つけ、活動を再開する。中国の伝統的な楽器や発声法を取り入れたオリエンタルなサウンドで、〝中華メタル〟とも言える独自のスタイルを生み出し、国内外で大成功を収めた。初期の名曲『太陽』、『九拍子』から、昨年リリースした『斑馬線』など、現在に至るまで、メンバーの入れ替わりを繰り返しながらも、大御所として活躍を続けている。では、次ページからはほかのバンドをガンガン紹介していく。Let‘s ROCK!!

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「唐朝楽隊」。京劇を思わせるハイボイスが印象的feature-v4

AK―47

旧ソ連で開発された自動小銃「AK―47」。頑丈で威力大のアサルトライフルと名を同じくするこのバンドは、中国において、疾走するリズムに電子楽器を駆使した硬質なサウンドを合わせた「インダストリアル・メタル」の先駆け的存在だ。ベース兼ボーカルの老猫を中心に、ギターを小猪、ベースを豆腐、ドラムを沙発が担当し、メンバー全員が軍服を着用し、音の弾丸を打ち出しまくる。

高速のドラム・ビートと脳ミソに突き刺さる電子音、そして地の底から響くようなダミ声デスヴォイス! おまけにエモーショナルなコーラスも入った、お腹いっぱいな楽曲をそろえる。曲の初めから、まるでクライマックスのようにダダダダダ…と高速ビートが響く『再踏征途』や、ゴシックなコーラスから始まり、ドラマチックな展開を見せる『墜毀』など、脳天&心臓を打ち抜かれる者続出のバンドだ!!

EGO FALL

2004年、グランジ・バンド「SUBCONSCIOUS」を前身に、全員が内モンゴル自治区出身のメンバーで構成された〝モンゴル〟デス・メタルバンド「EGO FALL」が誕生。彼らは、転調を繰り返す高速ビート&エモーショナルなメロディ、デスヴォイスという現代的デスメタルに、民族の伝統的な歌唱法「ホーミー」と楽器「馬頭琴」の優雅な音色を融合させ、新しいサウンドを作り続けている。

彼らの曲を聴けば、のどを詰め、低高音を同時に響かせるホーミーが、意外なほどデスメタルとマッチすることに驚くはずだ。お経のように響くホーミーを1分近く聴かせてから、ドラマチックなメロディが始まる『蒙古精神』、そして中盤のギターリフに合わせたホーミーが、ファンに言わせると「たまらなく超クール」な『長生天鉄騎』など、聴かないと損をすること間違いな死!

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戦斧

「戦斧楽隊」は1992年、北京にて結成。当初はデス・メタル色の濃いバンドとして活動していたが、次第に、哀愁漂うバラードナンバーを発表するなど、音楽性の幅を広げてきた。
少し高めの特徴的な声を持つボーカリスト・牛子は、幼い頃クラリネットを学んでいた経験もあってか、音楽センスの良さと表現力に定評あり。メランコリックなバラード『下沈』では、哀愁漂う声で「下沈…(落ちていく…)」とつぶやくように繰り返し、聴く者に、「どこか頽廃的だけど何か気持ち良い…」という気分にさせてくれる。そのほか、もちろんハードな楽曲も多数。「別惹我(オレを怒らせんなよ)」のフレーズが印象的な『対話』のように、やるせない怒りや悲しみなど、負の感情を情感たっぷりに表現する。

扭曲机器

ラップやパンク、ジャズを取り込んだミクスチャー・ロックの大御所バンド「Rage Against the Machine」の大ファンの4人で結成された「扭曲機器楽隊」。重低音を響かせながらも、キャッチーなメロディにラップやパンクの軽快さも加えた、ニューメタルバンドだ。今回紹介したバンドの中では、比較的ポップで明るい印象の楽曲が多く、普段メタルを聴かない人でも、すんなり入っていけることだろう。

オススメは「POGOPOGO」のかけ声に合わせてぴょんぴょん飛び跳ねたくなる『緊随節奏POGOPOGO』や、低音ラップが心地良い『我們来自地下』など。アップテンポでアゲアゲな曲が多いので、ライブに参加すれば楽しめること間違いなしのバンドだ!

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過失楽隊

「過失楽隊」は、中国のハードコア/ストリートパンクを代表するバンドだ。メタルや、アメリカンストリートパンクの影響が感じられる、パワフルで攻撃性の高い演奏で、パンクキッズの支持を集めている。

彼らの楽曲には、メッセージ性の強いものが多い。『Fight your apathy』では、「テレビを燃やし、どうしようもない混乱から自らを救い出せ!」と叫び、無自覚に生き無感動な人間になる危険性を呼びかける。また、全英語詞の『Beijing‘s not my home』では、攻撃性を抑えた、切なくもやさしいメロディに合わせ、北京の夜道を歩く異郷の男が「ああ母さん、今夜はどこで眠ったらいいのか教えてくれ」と独り語る情景を歌う。鬱憤の溜まる日々を忘れ、彼らと一緒にパンクしよう!

SUBS楽隊

2002年、パンク大好きな4人が始めた「SUBS楽隊」。パンクをベースに、ハードコアやグランジロックの要素を取り入れた、オリジナリティの高い楽曲が特徴だ。ボーカルは、紅一点の抗猫が務めるが、女性だからと言って、可愛らしいガールズパンクを想像すると、裏切られるだろう。少しハスキーな歌声に、エキセントリックなシャウトでパンク魂を体現する。

13年公開の中国映画『制服』で主題歌として使われた『Yours』、アメリカ発の音楽雑誌『Rolling Stone』中国版で、06年度の最優秀曲に選ばれた『DOWN』など、実力・人気ともにトップレベル。海外へツアーを組むなど、世界的な知名度も高し。メンバーの入れ替わりで現在は3人構成となっているが、パワフルなサウンドは以前に負けずとも劣らない。

~上海ジャピオン2014年2月28日号

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