突撃! その1
全員パジャマでリラックス
食後は娯楽部屋で麻雀
まずは、普陀区の大規模な新興マンションの6階に居を構える張さん宅を突撃!
ドアを開けると、パジャマ姿のお母さんと愛犬たちがお出迎え。
この日は、遊びに来ていた伯父さん夫婦も同じくパジャマ姿で顔を揃えていた。
「子どもが大きくなって家を空けることも多いから、
お互い訪ねあって大人同士で楽しんでるのよ!」
と豪快に笑うお母さん。日本ではあまり見られない光景だ。
今日の食卓は、皆から「大師」(シェフ)と呼ばれる伯父さんが腕を振るったもの。
全8品で所要時間はわずか30分!
下ごしらえは予め済ませてあるとは言え、驚きの速さだ。
娘が大学から帰宅するのを待って、19時頃に食事開始。
この日はまとめ買いした上海蟹の残り物やエビ・スズキなどの海鮮に、
肉と野菜をバランス良く配置した献立。
大根と小エビのスープは「冬吃蘿蔔夏吃姜、勝過医生開薬方」
(冬は大根、夏は生姜を食べれば医者知らず)という中国のことわざに基づいたものだ。
足元にじゃれつく愛犬をからかいつつ、和やかな雰囲気で食事は進む。
食後は麻雀テーブルの置かれた2階の娯楽部屋で大人たちが麻雀に興じる。
また夏は、リビング2部屋ほどもある屋上の庭で涼むという。
「今度はもっとごちそうを作るよ」という伯父さんの温かい言葉を胸に、
次のお宅へと向かった――。
本日の献立
・茄汁鱸魚(スズキのケチャップ煮)
・糟蝦(エビのかす漬け)
・魚香肉絲(細切り肉の炒め物)
・酒香草頭(クローバーの白酒炒め)
・草菇毛豆(キノコと枝豆の炒め物)
・大閘蟹(上海蟹)
・豆腐皮包肉(肉の湯葉巻き煮)
・蘿蔔蝦皮湯(大根と小エビのスープ)
突撃! その2
未来の嫁と和気藹々
1汁3菜ならぬ4菜1湯
続いて2号線婁山関路駅から徒歩10分の集合住宅1階にて、耿さん宅の扉を叩く。
中ではお父さんと息子、そして息子と来年10月に結婚予定の婚約者が、
和気藹々と晩ごはんの準備中だった。
お母さんは今日は清掃の仕事が22時までとのことで、18時に3人で食事開始。
耿さん宅の晩ごはんは、「4菜1湯」(おかず4品スープ1品)が鉄則。
日本でいうところの1汁3菜だ。
日本より1品多いところが食の国・中国らしい。
晩ごはんの支度はいつも夫婦で手分けして行う。
この日のようにお母さんが遅番の日は、お母さんが煮込み系を予め昼に作っておき、
夕方にお父さんが炒め系を作るとのこと。
今日の主食はお母さんが餃子包み器(P5参照)を駆使して作った水餃子。
足りない人はさらに白ご飯を各自よそい、
常備食の煮肉丁(豚肉のコマ煮)をのせて食べるのだという。
調味料は極力少なく、基本の「開門七件事」(7つの生活必需品)
=「柴(まき)・米・油・塩・醤・酢・茶」を駆使して作った素朴な晩ごはん。
さしずめ日本で言うところの「さしすせそ」(砂糖・塩・酢・醤油・味噌)だろうか。
愛犬・??のデザートは、好物のヨーグルトだ。
食後は息子が婚約者を家まで送っていき、
お父さんはテレビを見ながらお母さんの帰りを待つ。
新旧カップルの愛情がひしひしと感じられた。
本日の献立
・炒菠菜(ホウレン草炒め)
・煮肉丁(豚肉のコマ煮)
・西蘭花蝦仁(ブロッコリーとエビの炒め物)
・水餃(水餃子)
・獅子頭(肉団子)
・黒木耳蘿蔔湯(大根とキクラゲのスープ)
突撃! その3
孫娘のために主食はお粥
3食作って食べきる
次に訪ねたのは、古北カルフールの目と鼻の先にある高級マンション3階の胡さん宅。
定年退職した老夫婦が孫娘と一緒に暮らしている。
2人とも同じ会社で働く息子夫婦は、
毎日仕事が終わると実家に来て一緒にご飯を食べるのだという。
「中国では共働きが当たり前だから、
子どもの面倒は親にみてもらうことが多いのよ」とお嫁さん。
おじいちゃんは主に孫の面倒と買い物担当、おばあちゃんが食事担当だ。
買物は主に菜市場で。
「安いし新鮮で、種類も豊富だからね。
ほぼ毎日買いに行くけど、天気の悪い日は家を出なかったりするから、
常に1週間は困らないくらいの食材をストックしてあるよ」と、買い物担当のおじいちゃん。
胡さんの家では、一度に大量に作る中華料理の常識とは裏腹に、
「不隔夜」(次の日に残さない)がモットー。
常に食べきれる程度の量を3食きっちり作る。
まだ離乳食の孫娘のために、最近の主食はいつも麺かお粥だ。
飽きないように芋を入れたりと、工夫を施している。
お粥のあてには、食感がコリコリと楽しいマコモの漬物を頂く。
食後はおじいちゃんが孫娘を連れて隣の部屋でテレビを観る。
その間にお父さんとお母さんはこっそり家へと帰るのだ。
日本の習慣と比べると何だか少し切ない気もするが、
お互いが楽になるための合理的な方法なのかもしれない。
本日の献立
・蓬蒿菜豆腐乾(春菊と豆腐の炒め物)
・紅焼肉(豚の角煮)
・炒海帯絲(ワカメのピリ辛炒め)
・炒?筍(茎チシャ炒め)
・南京塩水鴨(鴨の塩漬け)
・咸菜?白(マコモの漬物)
・山芋粥(芋粥)
・崇明?&饅頭(崇明もち&マントウ)
突撃! その4
その日暇な人が食事担当
日本の実家を彷彿
最後は浦東新区の郊外にある閑静な住宅街で、徐さん宅を訪問!
ひっそりと佇む建物のドアを開けると、温かい光が室内からこぼれた。
社会人として働く息子さんに案内してもらうと、
テーブルの上には既に素朴な家庭料理が並んでいた。
「うちは共働きなので、その日暇な人が作るんです。
忙しい時は冷凍モノなんかで済ませてしまうこともありますけど」とお父さん。
この日はお父さん、お母さんとも仕事が休みで、夫婦で一緒に17時半頃から作り始め、
息子が帰ってくる19時頃までに作り終えたという。
作ったのは全部で7品。いつも必ず5~6品は用意するという。
豚足の煮込みなどはずいぶん時間がかかりそうだが、
「煮込むのは40分ぐらい。どれもぱぱっと作っちゃいます」とのこと。
ごはんは白米に小豆や黒米などを混ぜた五穀米という健康志向。
枝豆とピーマンの炒め物なども、薄味であっさりとしたやさしい味だ。
日本の食に近いものも感じるが、鶏足などはやはり中国ならでは。
今の季節になると週に1回は食卓に上るという上海蟹にかぶりつきながら、
「今日は仕事でいきなり新しいことやらされちゃって」
などとそれぞれが1日を振り返りながら雑談。
食後はみかんをむきながら居間のテレビを眺め、食休み。
最後の1軒は、何だか日本の実家を彷彿とさせる晩餐だった。
本日の献立
・紅焼猪手(豚足の煮込み)
・炒青菜(チンゲン菜の炒め物)
・白沽鳳爪(鶏足の酒ゆで)
・餃白毛豆青椒(枝豆とピーマンの炒め物)
・鹹菜毛豆肉絲(豚肉とからし菜枝豆炒め)
・?篤鮮湯(竹の子と骨付き肉のスープ)
・大閘蟹(上海蟹)
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~上海ジャピオン11月6日号より