食道をゆく 第44回 鍋巴

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グオバ
鍋巴
~江蘇省南京市~

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海鮮餡と相性ばっちりの鍋巴

居眠り小坊主、大失敗
けがの功名で生まれた美食

 「鍋巴」は、いわゆる「中華おこげ」のこと。
油で揚げ、海鮮餡や五目餡などをかけて食べる。
餡をかけた時の「ジュワ~!」という音が、何とも食欲をそそる一品だ。
炊いたご飯を一度乾かして揚げるという手の込んだ作り方だが、
その誕生由来には、何とも間の抜けたエピソードが隠されていた――。

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小坊主が露天を出したと言われる夫子廟(ふうしびょう)。夜にはライトアップされ、観光名所としても有名

 今から1000年ほど遡ると、中国は宋の時代。
この頃、南京の城外にはある寺院があった。
寺では毎日、和尚が小坊主たちと精進料理を作っていたのだが、
当時の和尚たちの生活は質素を極めており、食事は毎食お粥だった。
 ある春の日、昼飯用の粥を煮る担当だった小坊主は、
薪に火をつけたあと、かまどにもたれてうたた寝してしまった。
そこへ畑仕事や読経をしていた和尚たちが戻ってきて、
いざ鍋のふたを開けると、そこにあったのは水分の抜け切ったご飯。
碗によそっても1人分にも満たないほど少ない上、鍋底にはお焦げがびっしりついていた。
それを見た和尚はひどく怒り、小坊主の昼飯を抜きにした。
 腹を空かせた小坊主が、みんなが食べ終わってから鍋を覗くと、残っているのはお焦げだけ。
しかし小坊主は、空腹に負けて一口食べてみた。
すると予想に反して大層美味しく、小坊主は夢中でむさぼり食った。
 その後、小坊主は僧籍を離れ、南京夫子廟の前でお焦げの露天を出すと、瞬く間に人気を呼んだ。
明清時代には、全国各地の寺院でも、精進料理として食べられるようになったという。
 うっかりではなく意図的に作られたお焦げの味を、一度本場で味わってみよう。

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【アクセス】
①上海浦東空港から空路にて南京禄口空港まで、約40分。1日1便
②上海駅から南京駅まで、新幹線(動車組)で約2時間半、硬座93元~

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~上海ジャピオン10月29日号より

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